商社マンからの手紙2~繊維業界への提言

華やかな世界と思って入ったアパレル・繊維業界。しかし、その実体は...繊維専門商社に勤める筆者は業界の様々な矛盾や問題点を感じ、我々へ提言を送ってくれた。

繊維の専門商社に勤めまる4年が経過しました。5年目に入り色々な矛盾点だとか疑問点は今まで以上に見えてきます。「この業界はそんなもんだから」と年配の方々は言うのですが、先を見た場合にどうしても納得できません。この文章でその理由が分かっていただければ幸いです。

社会人一年目はまさに下積みでした。サンプル作り、台帳管理、納期管理等々。クリエーティブな仕事がしたいと思っていたのでそれが全く当てが外れた感じがしましたがそんなことには不満は覚えませんでした。繊維業界に入って一番の驚きはその納期管理の難しさでした。当時、直接輸出ではなく、輸出業者に国内で荷物を引き渡す仕事をしていたのですが、その業者さんとは当然契約者を交わします。荷物を作って引き取ってもらえないと困るからです。そのとき4月末出荷で客と契約した場合、当然自分達は4月中旬くらいの契約を仕入先とやっているのですが、契約書を交わすことはごく稀で一般的には口約束の場合がほとんどです。その曖昧さにも最初戸惑いを覚えたのですが契約書の代わりにこちらから納期を指定した指図書を提出するのですが、これが曲者です。その納期がせまると大変なことになります。社会人になったばかりの僕はその荷物が当然のようにその納期通りに出てくると思っています。ところが上司や先輩からしきりに確認しとくように念を押されます。腑に落ちないまま仕入先に確認の電話を入れると一週間のズレなんて当たり前。ひどい場合は平気で一ヶ月遅れるということもありました。そんな馬鹿なという気持ちで「指図にちゃんとかいてあるじゃないですいか?」と問い詰めると「それはおたくが勝手に書いたことで内が決めたことではないですから」と開き直られます。はじめのうちはそれに対して頭に来てよく揉めていたのですが先輩や上司から「あまり揉めると仕入れしにくくなる」とたしなめられました。入社前に当時の支店長から「ファッションビジネスは魚屋と同じで新しいものは売れる。古くなると値下げして売らなければいけなくなる。最悪の場合捨てなければいけなくなる」という言葉を聞いていたので納期に対してのアプローチを人一倍努力したつもりだったのですが、遅れるのが当たり前というのがこの業界の通念であると理解するにはそれほど時間がかかりませんでした。ただし、納期に対して手を抜くことは最後までしませんでした。それは客に迷惑をかけたくないという一心からだけです。

2年目からは輸入業にも関わるようになりました。ニットブームで韓国や台湾から輸入するニットがどこに消えていくか分からないぐらい日本国内で売れました。日本の国内の品質に対する目は非常に厳しく、連日、輸入した商品が問題ないか化学繊維検査場に持ち込んでいました。国内での問題は引き取りの悪さでした。輸入したものは客のリスクで作ったもので我々の会社の在庫ではないはずなのですが、「協力してください」という言葉で売れる都度荷物を出荷し、売れ残ったものは値引きを要求してくるという連中も当たり前のようにいました。前述の支店長の言葉通り古いものは値引きしなければ売れないのですが、それは最初の取り決めのときに一言も相手側から出てこなかったことです。仮にそういうことがありますと言われていれば、こちらもそれ相応のマージンを取ってリスクを小さくする方法を考えることは可能だったのです。これはまだカワイイ方です。一番厄介なのは量販店です。量販店は数量が大きいので決まれば当然売上も利益も大きいのですが、何が厄介かというとクレームもモンスター級に大きいということです。しかも性質が悪い。後に知った量販店の服飾のやり方ですがこういう諺があるというのです。「売れないものは返せ」。小さな傷、タグの文字、しわなど客が手にとって見たからついたのではとも考えられる問題点を指摘し我々の売値で返してくるならまだしも予定利益まで載せて請求してくるというあくどさ。売れたら金を払という形で自分のところで処理をしようとする客は金払いが悪くて困るけど量販と比べると雲泥の差。恐るべし量販店。

最後に、これはもしかしたら繊維業界に限ったことではないのかもしれませんが、価格競争というのは悲劇しか生まないということです。ご存知の通り合成繊維の糸は二大Tというメーカーが作っているのですが、作った以上は売らなければいけないということでどんどん海外にも出荷しています。その時に数量を大量に出せるので価格が国内より安くなります。東南アジアでは人件費も安いので糸が生地に変わって出てくる頃には日本品の同品質のものの半値ぐらいででてきます。そんなところと価格競争をすれば敗戦は目に見えているのですが、売るものがなければお金にもならないので日本の産地の人も必死です。結果、品質を多少落として(糸の打ち込み本数を見た目では分からない程度減らしておく、あるいは染め工場が染料の質を弱冠劣化させるなど)値段を合わせ出荷します。そうするとそれまで日本の「売り」であった品質というのも疑われ始めます。最近、厳しい言葉を聞きます。「海外品はだんだん品質がよくなり値段も手ごろ。日本品は品質は悪くなり値段も高い」。一体どうやって競争すれば良いのでしょうか?メーカーが売るために品質にこだわって作り出したものは高価なため少量しか市場に出ません。その結果、糸を大量に吐くというメーカー側の思惑とははなれた方向に向いてしまいます。さらに加えて言えば、ある程度の数量を作ったにも関わらず少量しか市場に出ないということは在庫としてその商品が残るということです。それでは困るということで値下げして売るとリピートオーダーが来た場合に値下げした値段でその商品を作らなければいけなくなります。まあ、場合によっては客がどうしても欲しいというときに限って最初に設定した値段で再度作ることができますが、これは例外中の例外ですね。こうして新商品がどんどん死んでいきます。これでは困る訳です。メーカーは新商品を定番化させ、その定番品で出荷数量を稼ぎたいからです。既存の定番品は国際競争力が弱すぎるのです。

このように、繊維業界はメーカー、加工場、機屋、そして我々商社と問題点を含んでいます。アパレルなどについてはその関係にお勤めの方にお任せします。長文にお付き合いいただきありがとうございました。

*繊維・アパレル業界にお勤めの皆様
あなたも繊維・アパレル業界に対しての経験談を語り、あなたの経験とノウハウを次世代に伝えていきませんか?繊維業界を正しく著した書物は日本には存在しませんし、ちまたにあふれる情報は表面的なものばかりです。繊維・アパレルの実情を知りたがっている日本中の若い世代にあなたの事実の声を伝えていきましょう。

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