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ダイナミックストラテジー

2007年7月26日 by 創設者 河合 拓   

創設者 河合 拓

戦略とは「捨てること」であるとよく言われるが、その本質は、「絞り込みと集中」にある。


大企業など、官僚体制が蔓延している組織では、様々な既得権者の利害が衝突し、実行よりも社内調整に手間取って物事がなかなか進まないことが多い。戦略立案といっても、実際は、おぼろげながら見えている方向性を論理的に筋道を立て、証明するという手順を踏むことが多いのだが、そうしてできあがった「シナリオ」は、実は社内の既得権者の説得用に使われるというケースもある。

一方、身軽な組織は、トップダウンにせよ、ボトムアップにせよ、どんどん改革案が出てきて組織が活性化しており、改革のスピードが速いのが特徴だ。こういう組織は、綺麗なロジックを描くよりは、「まずはとにかくやってみよう」と実行を繰り返し、細かいサイクルで行動の修正を行っているという動き方をする。実は、変化の大きな経営環境では、実行前にスタティックな製図を数ヶ月に渡って描き続けるよりは、とりあえずやってみて微修正を繰り返しながら同時に大きなコンセプトを描いていく、というやり方の方が効果的なのだ。


このとき、頭を使わず、とにかく「場当たり的に」実行を繰り返しても、失敗を繰り返すだけで、組織学習はできないだろう。「走りながら考える」と言えば、聞こえはよいが、実際は「ただ走っているだけ」というケースが多い。反対に、官僚的な組織は何ヶ月も何ヶ月も精緻な分析を繰り返し、気がついたら「分析すること」が目的化され、当初ねらっていたことがなんだったのかよく分からなくなって、資料作りばかり繰り返しているということもある。ようは、バランスなのだ。ダイナミックに、戦略思考と検証サイクルを回していくことで、彫刻を彫るようにコンセプトができあがっていくわけである。


こうした、ダイナミックな戦略の立案プロセスに欠かせないのが、「絞り込み」であり、「捨てること」なのである。特に、日本人は、この「捨てること」ができない。ITを導入して、業務生産性向上を果たしたのだが、人を異動できず結局固定費は減らずに投資金額だけがかさんでくる。古い既得権者の意見を吸い上げなければ前に進まないので、組織全体の方向性が中庸なものになってしまうなど、「捨てること」ができないため、「あれも、これも」になってしまい、わけがわからなくなってプロジェクトが頓挫するというのが典型的な失敗のパターンなのである。


商社であれば、仕入れ先を絞り込む、取引先を絞り込む、得意先を絞り込むことで、バイイングパワーとスケールメリットを生かすことができる。リスクを分散してヘッジするというのは、昔の考えであり、今の商社はリスクを「コントロール」するために、徹底したアライアンス先の絞り込みと集中を行っていくことが戦略上、きわめて重要な課題となっていくのである。特に、商社のようにバリューチェーン全体にアメーバのように介在している媒体は、仕入れ先や得意先と「勝ち組連合」を作り上げ、強固なアライアンスをつくることで、はじめてITなどの情報連鎖が可能になるのだ。弱いもの同士がいくら協業しても、お互いが本気になれない関係が続いてしまうだろう。


余談だが、フィードバックという名の下に、自分のアイデア、自分の考えを複数の人間で叩き合うというカルチャーが日本の組織でよく見る光景だが、こういう合議形式の中から新しい発想が生まれるということにお目にかかったことはない。だいたい、叩き合っているうちに方向が変わるか、中庸なもので妥協するか、いずれにせよ中途半端な結果になるというのが典型的なパターンである。


 するどくオリジナリティーのあるアイデアというのもは、間違いなく「一人の人間」の強烈な思い、強烈なヴィジョンから生まれる。彼の思いは非常につよく、周りが何を言っても聞く耳を持たない。やれば必ず受ける、必ず成功するという絵図が頭に見えている。こんな状態が作れなければ、何度会議を繰り返していても良いものは生まれないだろう。なぜなら、ヴィジョンのない人間がどんなに揃っても、人のアイデアを叩くことは得意だが、代替案は決して出てこないからである。ゼロに何をかけてもゼロである。


仮説無き人間は去れ。これが戦略立案の鉄則である。


もっと読みたい方は→FRI Magazine: http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html


【著者】
河合 拓 (かわい たく)
経営コンサルタント 広く流通、小売業界に対して事業の立て直し、組織改革などを行っている。得意領域はマーケティング、事業戦略、生産性向上、営業改革、ナレッジマネジメント導入など。手がけた企業は国内外の大手上場企業。製造業、IT 企業、総合商社、流通企業など。赤字の上場企業を半年で黒字化させるなど、過去5社の立て直しを行いすべて成功裏に終わっている。
NPO法人FRIの設立者(現在はシニアアドバイザー) 自民党への政策提言、私立大学と大手商社と産学協同ブランド開発プロジェクト、大学生向け就職支援、中小企業向けコンサルティングなどを行っている。
ベンチャー事業会社経営顧問(社長付け経営戦略アドバイザー)グローバルに展開するアパレル企画会社の社長直属の戦略アドバイザーを務め、アジアに展開するブランド戦略に関する立案を支援している。また、公開企業のコンサルティング事業部、部長代行も勤める。


(講演、執筆)
繊研新聞 (全国紙)
「間違いらだけのQR」「ファッション業界は08年に起きる地殻変動に備えよ」連載
チェーンストアエイジ 「キャッシュフロー経営」
大手都銀向けビジネス雑誌寄稿
大手製造業向けビジネスマガジン寄稿
政策学校一新塾 (大前研一設立) 講師
「ロジカルシンキングと会議の設定」
「仮説構築と情報収集、分析の技術」
「プロジェクトマネジメント」
「モチベーションマネジメント」

 

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