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お客さまの心をつかむとは

2007年8月19日 by スタッフ 木原 工   

スタッフ 木原 工

 個人的なことで恐縮であるが、営業の仕事の中で一番大切なことは「お客さまの心をつかむ」ことだということを、つくづく考えさせられている。

現在営業部の支援を仕事としているが、「お客さまのこころをつかむ企画書を作ってください。」との依頼を受けるケースが多い。それだけお客さまの気持ちを振り向かせると言うことが大変であるということの現れであろうが、本稿では「お客さまの心をつかむ」ということにについて、いくつかの側面から検討を重ねてみたい。また稿末では、インサイトの視点から「お客さまの心をつかむ」について考えてみたい。
  
  
(1)お客さまの心をつかむとは
 お客さまの心をつかむについて持論を立てるならば、「お客さまの立場に立って考える」ということである。これは簡単なようであるが意外に難しい。なぜ難しいのか考えると、①客観的な視点に立つことが難しい、②素直にお客さまの立場に立つことが難しい、③お客さまが何を望んでいるか想像することが難しい、等が挙げられる。
 ①の「客観的な視点に立つことが難しい」については、ゲーム理論による例が分りやすいであろう。簡単なゲーム理論の例を出すと、
  
 ここには、あなた、Aさん、Bさん、Cさんがいます。4人は、赤白帽を持っており、赤か白かでかぶることが出来ますが、あなたが何色をかぶっているかはわからないものとします。ルールとしては、
・全員が白、全員が赤ということはありません。
・自分の色がわかった場合は、手を挙げなければなりません。
というものがあります。
問い1
Aさん、Bさん、Cさんが赤でした。あなたは何色ですか
問い2
Aさん、Bさんが赤、Cさんが白です。ただし誰も手を挙げていません。あなたは何色ですか。
  
という古典的な問題がある。この場合、問い1は自分の立場から見て周りが全員赤で、自分も赤と言うことがないため、白と回答できる。しかし問い2は、客観的な視点にならなければならない。あなたがCさんの立場になって考え、もしあなたが赤であればCさんは手を挙げると想像する必要がある。再度自分の立場になって、Cさんが手を挙げていないことからして、あなたが赤であることはないと推測する。これによってあなたの帽子の色は白だと言うことがわかる。
 問い1は主観的に見てもわかるが、問い2は客観的に見なければ一生わからない。これはゲーム理論の単純例であるため簡単なようであるが、このような相手の立場になって考えなければ一生解決できない問題はたくさんある。レベルの差はあれども、客観的な視点に立つことが難しいことの一例といえる。
  
 ②の「素直にお客さまの立場に立つことが難しい」とは、客観的な立場に立つときに、自分の気持ちによってバイアスがかかってしまうことの問題といえる。たとえば営業する側は、営業する商品のことを熟知しており、かつその良さを誰よりも知っており、その商品に愛着がある。しかし営業される側は、営業される商品のことを全く知らず、その良さを理解しようという気持ちが薄く、その商品に愛着を持っていない。営業する側の気持ちと、営業される側の気持ちは大きな隔たりがあるが、営業する側は営業される側の気持ちを理解しなければならず、その場合は、愛着のある商品が余り認知されていないことの現状を受け取らなければならない。この点が非常に辛く苦しいところであるため、相手の気持ちになりきると言うことが非常に難しくなる。結果としてバイアスがかかってしまったり、素直になれなかったりなどで相手の立場に立つことが困難となる。
  
 ③の「お客さまが何を望んでいるか想像することが難しい」は、相手の立場に立って、何を求めているのか仮説を立てるところの難しさにある。自分の立場ならば直接的に何がほしいか知っているわけであるが、お客さまの立場に立つならば、お客さまが何を望んでいるのかは知ることが出来ない。そのためお客さまのこれまでの態度やお客さまの立場などを総合的に考えて推測するしかない。この推測は、素直に相手の立場になったとき、常識から考えればこのように行動するというのを丁寧に重ねて行ければほぼ当たるのだが、ちょっとした洞察力の欠如があると大きくずれてしまうので注意が必要である。
  
  
(2)論理的に意志決定の手順を考えると
 営業の目的は、商品の良さを知ってもらうことである。そのため営業職員は、お客さまの意識の誘導をすることになる。たとえば不動産の売買であれば、①値段の制約、②地理上の制約、③利用用途の制約等の分岐点(メルクマール)を明瞭化して、営業する側に有利になるようなセールストークを展開することになる。たとえば値段についてはお客さまにとっては安ければ安いほどよいが営業する側にとっては高ければ高いほどよい。②と③についても、お客さまにとってほしい場所やほしい用途の不動産があっても営業する側にとっては手持ちの商品の立地および用途に限られてしまい、手持ちの商品の中で意志決定してもらわなければならない。よって営業の基本は、このようなメルクマールをお客さまに提示し、どの程度歩み寄りしていただけるかを①~③を複合的に考えて、お互いの最大効用になることを目指すことになる。
  
  
(3)質の高い営業をするためには
 最後にインサイトの視点で営業を見ると、やはり「お客さまの立場に立って考える」を突き詰めることが、お客さまの心をつかみ、質の高い営業につながるといえる。(2)でまとめたようにお客さまの意志決定フローにおいて、メルクマールの洗い出しを行ったが、これはお客さまの視点に立って初めて気がつくものである。(2)では3つのメルクマールを洗い出したが、お客さまの立場に立てば、金額よりも立地を重視していたり、または立地よりも金額を重視していたり、重視するポイントの重み付けや営業する側が用意していなかった点で迷うっていると言うことも多数ある。そのためお客さまの意図を知らずして営業を行うと、お客さまの望んでいる方向とは違う方向へと誘導してしまい、結果的にはお客さまの満足を得ることが出来なくなり、場合によっては契約が成り立たなくなることもある。そのような事態を回避するためには、コミュニケーション量の増加や相手の立場に立った思考を持つことが必要となる。実際に立つことが出来ないお客さまの立場は、営業する側から近接点を探すように会話の数を増やし情報を入手し、その前提の元お客さまならどう動くかを想定し、仮説を立て、お客さまにフィードバックしてご意見を戴き、再度会話をするなどの回転を繰り返すことでお客さまの真意を深掘りしていくことになるのではないかと考える。

 

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この記事へのコメント (1件)

私は、ゆうちょ銀行の期間雇用社員です
15年勤めましたので、郵政省、郵政公社、そして民営化
郵政省時代は、やはり、お役所仕事で、お客を見下していました
公社時代は、苦情が有れば対処する時代でした。
民営化を前に、たくさんの研修をうけました。3星テストも有りましたが、1主婦の立場でパート勤務をしている私には、疑問だらけの内容でした。社員はお客様への、サービスを深くは考えていない
上司たる人も、銀行はサービス業では無いと言い切る
顔は何時も、本社に向いていて、お客様が、何を要求しているのか、分かろうとしていない。
貯蓄残高が世界1位のゆうちょ銀行から、どんどん他の金融関係へお金が流失している。このままだと、3年で危機状況に成ると社員に、営業に力を入れるようにと、毎日朝礼でノルマの話がでます
お客様の要求を分かろうとしないから、お客様から『こんな銀行に預けて置きたくない。全部引き出します』と言われる有様です
地元に住むパートの立場で、提案しても、そんな事は出来ないで終わり。主婦の目を意識していない
これでは、地域に密着した、皆に愛される銀行などに、成れる筈は有りません。専門知識は無くても、お客様の要求は、肌で感じます
矛盾だらけの、民営化でした
これから、どう成ると、思いますか?

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