学びと成長の本質 ~学習能力を高める方法~

最近、「成長」や「○○学」というものが付いたタイトルの本やTV番組が増えているようだ。これを読んでいる人の中にも、手に取った事がある人もいるのではないだろうか。
しかし、実際にそれを読んで力が付いている人は、それ程多くはないように感じる。
確かに読んだり観たりすると面白いし参考にはなるのだが、これをみても、成長しない人はしないだろうな、といつも思う。
【学びに必要なもの】
それは、なぜか。
そもそも、「学び」というのが機能するためには、学ぶ本人の行動や習慣が、それに合ったものになっていなければならないからだ。
つまり、その人の意識や考え方、それに支えられた行動によって、成長に繋がるのである。
日本の教育は、ほとんど全てが「正解」の「暗記」である。
大学で行われる研究まで、思考方法などを学ぶ機会は、ほとんど皆無と言って良い。
なので、「学び」と聞くと、つい正解を記憶する事と思ってしまいがちで、本を買って読んで満足してしまうのである。
しかし、実際には使いこなして初めて役立つし、仕事においては、一般解はあったとしても、個々においては最適解があるだけで、「正解はない」のが普通である。
なぜなら、相手が不確実性の高い人間だからであり、当たり前の話なのであるが、人はついつい「当たり前」の事を忘れてしまう生き物のようだ。
つまり、本を読んで暗記するだけでは、ハッキリ言って、全く使い物にならない。
但し、役立たないとは言わない。
きちんと「学び」を本質的に理解している人であれば、先人たちの知恵の集大成である書物は、強い味方になってくれるはずだ。
私も数百冊の本を読んできたが、実際に直ぐに使うもの程、生きた知恵として身に付いているが、何となく読み終えてしまい、大して役立っていないものもある。
要は、内容如何に関わらず、学び方次第、と言えるのである。
では、学びの本質とは一体何だろうか。
【学びの本質】
私が考える学びの本質は、
・優秀なものを徹底的に「真似る」
・企画よりも「振り返り」に重点を置いて行動する
・「深さ」にこだわってとことん追求する
の三つに集約されると考えている。
まず、「学ぶ」とは「真似ぶ」から来ているというが、まさしく本質を得ていると考える。
直ぐに「独自性」や「主体性」などを持ち出して、特定のコミュニティ内で行おうとする人がいるが、それは自分で壁を作っている事に気付くべきだろう。
それは単に、自分達がやりやすい人達で固まって、狭い世界で小さく満足しているに過ぎない。
オリジナリティとは、本来、基本がしっかりと出来てから発揮されるもので、最初から発揮しようと思うこと自体、考えがずれているとしか思えないし、実際、そのレベルでオリジナリティと表現して欲しくない事も多いのが事実である。
私なら、使えるものは徹底して使う。
成果に繋がるのであれば(費用対効果を当然考えるとしても)、わざわざ制限を設ける必要がどこにあるのだろうか。既に前例があるなら、それを「参考例」として聞き、出来る事なら直接質問し、良かったところや改善すべきところを学ぶのである。
そして、真似できるなら、とことん真似しても良い。良い物を真似て、何の問題があろう。
新しいものを一からつくるよりも、よっぽど効率的だし、創造性を発揮するところは、そんなところにあるべきではない。大切なのは、何を選択して、何をその上に積み上げるかだからだ。
創造性は、あくまで成果に一番効くところで発揮されるべきだし、既に誰かがやった事についてまで、わざわざ一からやって「創造的だ」と言うのも、少しもの悲しいと私は思う。
過去の叡智は、ありがたく使わせて貰った方が良いに決まっている。
そう考えると、周りにある物事や人は、ほとんど全てが学びの対象になることに気がつくだろう。
ほとんどの人が、自分にはない何かを持っているし、自分がやったことがない経験があったりする。
それを教えて貰うだけで、どれだけ自分の思考の幅が広がるかわからない。
しかし、知識だけを身に付けても意味は薄い。
それが発生した際の思考プロセスや周辺への影響まで知って、初めて自分の思考を豊かにしてくれるのだ。
うわべだけの暗記では、自分のものには決してならない。
その時に、「なぜ、そうなるのか」という部分についても、併せて理解できるようになれば、次に近いシーンになった時に、自分の判断・思考の糧となるのである。
もし、それがわからなければ、色々考えて言う前に、とにかく真似てみて、自分が実行してみて、どう感じるかを肌で理解してみる事も大切である。
文句を言うなら、まずはやってみてから、というのも強ち間違いではないのだ。
「真似ぶ」という言葉を胸に、そういう機会が周りにないのか、一度、見直してみてはどうだろうか。
きっとたくさんの「真似びの場」があなたの周りにある事に気がつくに違いない。
【始めよりも終わりを重視する】
次のポイントは、「振り返り」である。
よく新しい事をやったと自慢する人に会うが、「その後、どうしましたか?」と聞くと、結局、自分の糧になっていない、その場限りの行為に留まっているケースが多いように感じる。
これでは、企画力がある、というよりは、単なるイベント屋かばくち打ち、あるいは、お調子者である。少なくとも私なら、怖くて企画を任せる気にはなれない。
実は、何かを成す際に大切なのは、「再現性」だったりする。
つまり、この点ならば、少々のブレはあっても次も大丈夫、と思えるかどうかだ。
なぜ重要なのかと言えば、それが大丈夫だとわかる事で、他の未知のところに力を集中できるからだ。
橋を渡る時に、「あの人は渡れたけど、次回は崩れるかもしれません」と言われて、あなたは橋を渡ろうと思うだろうか。答えるまでもないだろう。
何かを成すには、様々なことをやらなければならないが、そのうちの多くが再現性がない状態だと、成功する確率は非常に低くなってしまう。それでは、オチオチ新しいことに力をかけられないし、効率化など以ての外である。実際には、新しい事をすると言っても、10のうち1新しければ良いほどだ。残り9は既存のものを活用するのである。つまり、全体の9割が不確定であれば、新しい事などなかなか出来はしない。
では、どうすれば良いかと言えば、何かに取り組む度に(新しい事は特に)、必ず「振り返り」をする事である。
振り返りのポイントは、
・良い事も悪い事も、正しく認識する
・良かった事は伸ばし、悪かった事は改善する
ことであろう。何が良くて、何が悪いのかを、正しく認識できなければ、決して次に繋がらないからだ。
自分の悪い面と向き合うのは辛い事だが、それを認識できなければ、次から気をつけることすらできず、また、失敗してしまう。
例えば、「結果が出たから良かった」とか「別に問題起こってないから」と言って済ませていないだろうか?
これでは、次に同じ結果は出せないし、もしかしたら次に問題が起きるかもしれない。
「良かった良かった」は、次の失敗への第一歩なのである。
人によって差はあれ、良かったところは伸ばし、悪かったところは改善していけば、必ず成長する。
これは、当たり前の話である。
しかし、なぜかこのような当たり前のことをやらない人が非常に多いのも事実だ。
ここで大切なのは、振り返って、喜んだり凹んでいるだけでは意味がない、という事だ。良い点はなぜ良かったのか、どうすれば次も出来るかを理解し、悪かった点はどうすれば良くできるかを考えることで、次に繋がっていくからである。振り返りは、次に繋げるためにするのだ。
本気で学び、成長し、成果を上げたいのであれば、企画よりも振り返りに力を入れるべきだろう。
そこで初めて、前回よりも良いものを出せるようになるのである。
そうして、土台をしっかりと形作ってから、企画力を高めていった方が、遠回りに見えても、より良いものを継続的に生み出せるようになれるのだ。
このFRIでも、時間が確保できる限り、振り返りに力を入れるようにしている。
そして、運営を担うスタッフ間でも、非常に振り返りを重視し、更なるステップアップに繋げているが、振り返りを繰り返すと、人によってスピードに差はあれ、確実に成長していくのがわかる程だ。
振り返りは地味な作業で、企画というのは華やかで楽しそうなイメージがある。
しかし、本当に成長したいのであれば、そのような見た目のイメージに決して惑わされないことだ。イメージに振り回されていては、本質などには決してたどり着けない。
つまり、振り返りを繰り返すことで、本質を見極める力も同時に養われていくのである。振り返りというのは、それ程、効果の高いものなのである。
【それは本当に正解なのか】
そして、最後に「深さ」が大切であると考える。
会社で面接などを担当していると、色々な経験をしている割には、これと言って秀でているものがない人に良く会う。あれもこれも、中途半端に手を出していて、それぞれがきちんと高いレベルで「学び」に繋がっていないか、個々が有機的に上手く結び付いておらず、更に高いところに昇華されていないのだ。
こういう人は、先日もそうだったが、私はご縁がなかった事にしている。なぜなら、一つ一つの仕事を高いレベルでこなしたり、他の人との結びつきで思いも寄らないものを生み出して貰えそうにないと思うからだし、個人的にも、自分自身にとって得られるものが少ないと感じてしまうからだ。
そういう人に会うと、環境があるのに勿体ないな、といつも思ってしまう。
これは何も、仕事のことだけではないので、案外当てはまる人は多い。
表現すると、「あと一歩及ばず」というところだろうか。やっている本人は楽しいし、それなりに充実しているのかもしれないが、残るものがないのである。良いところまで来ているだけに、とても残念な気がしてならない。
なぜなら、多くの事をこなせる人は、基本的に器用だし、コミュニケーションやリーダーシップの力も高い事が多いからだ。しかし、自分自身をコントロールする意志力や目的意識が欠けているために、ついつい色々な誘いやお願いに負けて、高みにまでは至れず、結果的に全てが中途半端になってしまうのである。
なぜ、そうなってしまうかと言えば、意識的にか無意識的にかはわからないが、人と同等レベルまでやって、それなりに評価されれば満足してしまっているからであろう。
それは、テストで80点取れた、という満足と同じだ。別に、合格点をとるために生まれてきたのではないだろうと、私は思う。経験も大切だが、参加すれば良いってものばかりではない。そんな満足感に浸っていては、例え、そのレベルのものを何度も繰り返しても、それ以上には決して到達しえないのだ。
これは、まさに正解教育がもたらす弊害でもある。
これでは、単なる自己満足に終わって、自分には取り立てて残るものがない。周りの人と同じレベルで出来る、という経験だけである。それに疑問を感じないところが恐ろしい。何か一つだけでも良いので、自ら秀でたものを作り、それを軸に社会に貢献していく事こそ、私達が社会に生きる上で大切な事なのではないかと思うのだ。
なぜなら、満遍なく出来るよりも、幾つかのポイントは押さえつつも、何か一つに秀でている事の方が、社会における価値は増大するからだ。ある意味、それ以外の部分は、あなた以外に秀でている人を集めれば良いのである。その方が、より高いレベルでアウトプットが可能だ。
成果を出すために、一歩抜きん出た力を本当に身に付けたいのであれば、とにかくそれに執着し、自分の成果に満足せず、人以上に考え抜き、人以上に行動する事である。
何か一つだけでも良い。そういうものを作ろうではないか。
単に「人と違う」と言われて満足するのではなく、成果で違いを語れる人を目指すべきだろう。
そうする事ではじめて、人よりも多くのものを学び取れるのだ。
中途半端にしかやれないなら、全てやらない。あるいは、中途半端にならないように集中してやり切る。
そのどちらかを、常に選択するのである。
これが、学びの本質を理解し、本当に成長している人の法則である。
「やる」か「やらない」か、とことん出来るかどうかを、自分に常に問い掛け続ければ、あなたの学びは一歩抜きんでる事になるだろう。
あなたにしか出来ない事とは何かを、常に問い続け、それを目指し行動する事が、真の成長を生み出す根源なのである。
最後にまとめよう。
「学び」を成長に確実に繋げるためには、まずはベースについては「真似る」こと、地味であっても「振り返り」に重点を置くこと、そして、「深さ」にこだわってとことん追求することを心掛けることである。
どんな立派なビルでも、基礎がしっかりしていなければ、簡単に倒れてしまう。
人の学びも同じであり、しっかりと基礎を築きあげる事が、将来的な強さ、すなわち、高いレベルでの着実な成長に繋がるのである。
企業も大抵は多角化をミスって傾く事が多いし、「戦略とは捨てること」と言われるほどだ。中途半端にたくさんの事をするよりも、絞り込み、一つの事に集中する事は、非常に大切である。
また、「当たり前のことを当たり前にやれば儲かる」とも言われる。ベースを大切にする人ほど、結果的に多様性を生み出せる。うわべだけの華やかさに惑わされてはいけないのだ。
これらは、全て「学び」にも当てはまる。
自分自身を本当に成長させたいのであれば、中長期的視野を持って、時には短期的には我慢も必要だろう。周りからの誘いやお願いも断らなければいけないかもしれない。それをどれだけ本気でやりきれるかどうかが、実のところ、最も大切なのかもしれない。
有り体に言えば、「本気で成長したければ、誰にも負けないくらい学びを追求しろ」という事だ。それだけやり切る事を考えれば、楽しい事だけしていては駄目な事も、出来ることは多くない事も、適度なところで満足してしまう事も弊害だということが、自ずとわかってくるはずだ。
自分との戦いに勝てた時に、本当の学びと成長が得られ、その結果、あなただけの貢献ができるようになるのである。
学びもまた、近道や楽な道は存在しないのだ。
努力した人全てに幸運の女神は微笑まないが、努力した人だけがその権利を有する、のである。
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⇒ 筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」
⇒ 筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」
◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates 理事長。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけたが、自身の仕事の関わり方に疑問を感じ、ベンチャー企業に転職。経験を活かし、経営・事業・商品・営業等の企画業務、ライン管理職、各種改革関連業務を担い、徹底した現場主義により業績拡大を支えつつ、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングにも責任者として従事。業界特性を考慮した実践的なアプローチにより実績多数。その後、IT・ライフサイエンス領域の投資育成企業にて子会社の事業企画や経営改革、大手メーカーの機構改革などにあたった後、地元関西に戻り、計測機器メーカーにて、経営企画担当の上席執行役員として、各種改革業務および主要事業のマーケティング、事業開発などを推進する。
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