答えに「する」力

仕事をしていると、無駄な仕事、不要な仕事に異常なほど時間をかけ、時間という貴重な資源を無駄に浪費しているケースにお目にかかる。こうした業務生産性の悪さの原因はただ一つ。業務そのものの業務目的が曖昧なため、仕事のやり方に「絞り込み」と「論理的なステップ」がないからだ。絞り込みとうのは、その業務目的を達成するために必要、かつ十分なインプットはなにか、と考えることであり、論理的なステップとは、その目的を達成する上で合理的な手順を設計するということである。大がかりなシステム開発などでは半ば常識であるが、仕事のできる人、というのは、普段の日常業務でも、こうしたプロジェクト型の思考、発想をしているものだ。業務効率が悪い人というのは、業務そのものがルーチン(定型化)化し、なんとなく仕事を始め、なんとなく終わっているというやり方をしている。
なぜこのようなことが起きるのか、というメカニズムについて考えてみたい。これは、私の持論であるが、人というのは「必要なもの」はいくらでも言うことができるのだが、「これで十分だ」、ということがなかなか割り切れない。だから、業務は、「必要である」という意味合いにおいて、自己増殖していくわけである。この裏には、とにかく「自分で意志決定ができない」、「自分で責任を追いたくない」という他力本願の根性が見え隠れする。自分で物事を決定できない、自分で責任を持ちたくないから、不安になり、心配になるため、不要な調査、不要な業務を繰り返し、目標を達成するためでなく、業務をすることそのもので安心感を感じているという悪循環に陥っているのだと思う。
自分で決められない、自分で意志決定ができない、ということほど不幸なことはない。何が不幸かというと、意志決定ができない人ではなく、その人に振り回される周りが不幸だということなのだ。これはハンドルの壊れた車に乗せられたようなもので、危険であろう。
なぜ、意志決定ができないのか。これは、私たちが今までやってきた教育に問題があると思う。それは、「答えを見つける力」を養おうという考え方だ。「答えを見つける力」といえば、あちこちでも述べられてフレーズであるが、私はあえて、この言葉に疑問を呈したい。「答え」を「見つけよう」とするから、終わりのない業務、根回し、不要な調整が増えるのではないか。当たり前だが、社会科学の世界に「唯一解」などない。だから、まず自分の出したジャッジ、意志決定を是とし、そのジャッジを「答えにする力」が必要なのである。極論を言えば、答えなど白でも黒でもどちらでもよい。私は、いろんな仕事のパターン整理をしているのだが、その時の判断は、その時の背景を踏まえた合理性によってなされているわけだが、いずれのケースにおいても、設計そのものと成果には(無関係とはいわないが)直接的な関係は薄いと感じることが多い。むしろ、白にする力、黒にする力が我々には最も欠けており、この部分が成功したケースは例外なく結果がでていると感じている。
* この文章は河合拓の個人ブログ 「事業再生コンサルタント河合拓の視点」の過去のものから抜粋しています
もっと読みたい方は→FRI Magazine: http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html
【著者】
河合 拓 (かわい たく)
経営コンサルタント 広く流通、小売業界に対して事業の立て直し、組織改革などを行っている。得意領域はマーケティング、事業戦略、生産性向上、営業改革、ナレッジマネジメント導入など。手がけた企業は国内外の大手上場企業。製造業、IT 企業、総合商社、流通企業など。赤字の上場企業を半年で黒字化させるなど、過去5社の立て直しを行いすべて成功裏に終わっている。
NPO法人FRIの設立者(現在はシニアアドバイザー) 自民党への政策提言、私立大学と大手商社と産学協同ブランド開発プロジェクト、大学生向け就職支援、中小企業向けコンサルティングなどを行っている。
ベンチャー事業会社経営顧問(社長付け経営戦略アドバイザー)グローバルに展開するアパレル企画会社の社長直属の戦略アドバイザーを務め、アジアに展開するブランド戦略に関する立案を支援している。また、公開企業のコンサルティング事業部、部長代行も勤める。
(講演、執筆)
繊研新聞 (全国紙)
「ザ・ターンアラウンド」アパレル業界の事業再生 2007年 9月より連載予定
「間違いらだけのQR」「ファッション業界は08年に起きる地殻変動に備えよ」連載
チェーンストアエイジ 「キャッシュフロー経営」
大手都銀向けビジネス雑誌寄稿
大手製造業向けビジネスマガジン寄稿
政策学校一新塾 (大前研一設立) 講師 経営戦略アドバイザ
「ロジカルシンキングと会議の設定」
「仮説構築と情報収集、分析の技術」
「プロジェクトマネジメント」
「モチベーションマネジメント」
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