ダメな会議、ダメな上司、ダメな仕事

昨日、定例の部会でのこと。午後一から開始した会議に出席しながら、「ああ、こうやって大企業はダメになっていくのだ」とつくづく実感した。大企業は一人当たりの生産性が低いと言われるが、まさにその通りだ。高価な人件費をかけて無駄な作業を延々とやっている。ただ、他人事だと笑い話では済ませてしまって良いのだろうか?みなさんのまわりにも、その魔の手は忍び寄っているのではないだろうか?大企業の衰退メカニズムの分析を通して、企業で働く我々自身のあるべき姿について考えたい。
【ダメな会議】
昨日は2週間に1度の部の会議であった。午後13時から10名強の部員全員が一つの長テーブルを囲んで向き合い、部内のことについて議論し合った。議題は、営業の売上システムの話である。現在、私の所属している部署は、営業戦略部といういかにも格好良い名前の部署で、販売会社の本体の経営企画部門である。論点は、「各支社ごとで集計している売上実績と、本体側で集計している売上実績があわない」という点に対して、「どうして合わないのか?」という点であった。
結論から言えば、この数値は合わなくて当たり前なのだ。各支社の集計は実際の売上金額の総額であるのに対して、本社側で見ている金額は、本社側の大手法人を専任している営業担当が関与した売上金額の総計だからである。言ってしまえば、前者は実際の数字、後者はシミュレーションの世界の数値である。売上システムの話はどうでも良い。私が言いたいのは、そんなすぐにでも分かるようなことを、「その理由がなぜなのか?」と10人もの人間が集まって、2時間以上も欠けて延々と議論している奇怪さだ。月何十万円ももらっているような課長、部長連中が2時間以上も集まって議論することなのかと。さらに悪いことには、結局、何も結論が出ないまま、今後の何の方針も出ないまま終わってしまった。部長の終わりの言葉は、「引き続き原因追求に努めよう」だ。これはもう笑いごとではない。
【ダメな上司】
実を言うと、この議論が意味も無くこれだけ延々と議論されるのには、意味がある。皆さんはその理由が分かるだろうか?理由は、「お偉いさんから報告を求められたから」だ。要は、会社の上層部が、各支社の実績と本社の実績の数値を比較して、その違いを疑問に思い、なぜその数値が違うのかを経営企画部の部長である、私の上司に報告を求めたからだ。
この答えを聞いて、「うんうん」とうなづいているあなたは、おそらく大企業に勤めている方だろう。そして、あなたの会社もかなり大企業病に侵されてしまっている。大きな組織では、「上層部がそうしろと言ったから」、「上層部が報告を求めているから」というのが、仕事をする上での重要な理由に位置づけられてしまっている。言うなれば、水戸黄門の印籠だ。その印籠が突きつけられたら最後、普段の仕事の優先順位はそっちのけで、その仕事が何の意味があって、会社にどれだけの利益をもたらすのかも検証されないまま、とにかくやらなければならないのだ。正直、私はばかばかしいと思いながら、一生懸命くだらない議論に熱中している部長、課長連中を冷めた目で眺めていた。
「それは合わないのが当たり前です。そもそも、その二つの数字は全く別物なので。少なくとも現状の売上システムでは、その二つは合うようにはできていませんが、それは問題でしょうか?」
「もし必要であれば、支社の売上システムをすべて解析し、本社の売上システムとの整合性を検証した上で、合わない理由をすべて洗い出します。そして、それをもとに双方の売上システムを見直し、新たにシステムを作り直します。そうすれば、双方の数字は整合性が取れるようになります。ただし、そのためには、当部署が全員がかりで何ヶ月か時間をかけて取り組む必要があります。本件は本当にそこまでする必要があるのでしょうか?判断ください。」
私の上司が上層部に対して、そう言えば済むことなのだ。上層部とて、その数字の意味が分かって言っているわけではない。ただ単純に、「数字が合わないのなぜだろう?」程度の思いつきの質問なのだ。にもかかわらず、そのくだらない質問に答えるのに、日中の重要な時間の大部分を割いているのだ。
大企業の中間管理職には、こういうタイプが多い。彼らの問題点は、自分の役割や自分の仕事の目的が全く理解できていないことである。彼らは、部として価値を出すために何をすべきか、自分の今の仕事が会社にどう貢献するかによって動くのではない。「上から言われたからやらなければならない」、「上の機嫌を損ねないためには、これをしておかなければならない」というのが、彼らの行動原理のすべてなのだ。
【ダメな仕事】
上記のことは、必ずしも大企業の中間管理職に限ったことではない。我々自身についても同じことが言える。皆さんは、日々の仕事の中でどれだけ自分の仕事の意味と価値を理解した上で、目的意識を持って仕事をしているだろうか。部長に言われたから、先輩に言われたから、という理由で何も考えず仕事をやってしまってはいないだろうか?
もちろん、必ずしもそのこと自体は悪いことではない。下が上から言われたことをただ単純にこなしている方が組織として効率的な場合はもちろんあるし、そういった組織形態を否定するつもりも無い。ただ、少なくともその時点で我々は、単なる作業者である。肉体労働に励むブルーワーカーでしかない。上から言われたことを、何も考えずただ単純にこなすことは、非常に楽である。何も考える必要はないし、その結果に対する責任も無い。なぜなら、彼は作業を請け負ったにすぎず、その責任は指示した上司にあるからだ。
ただ、そんな仕事のやり方は、決してプロフェッショナルな人のやり方とは言えない。仕事で作業以上の価値を出すことはできないし、自分の力で自分の道を切り開いていくこともできないだろう。10年後、20年後には、会社に飼われ、会社に迎合し、上司の機嫌を伺って仕事をするようなヒラメ社員になるのが関の山だ。
先の会議の例も、上司の例も、仕事の例も、共通して言えることは、その目的と価値を認識できていないことにある。人は考えることに対して怠惰な生き物だ。考えることなく、目的意識を忘れ、ただ単純に作業をこなすことは非常に楽なことなのだ。ただ、断言していいが、その楽さに流され、楽な仕事の仕事をしている人に、自立的な未来はない。ただし、そういった生き方も、生き方の一つであり、それはそれで否定するものではない。
大切なのは、我々がそういった生き方をしたいかどうかだ。そうでない生き方をしたければ、いくら辛くても、いくら厳しくても、目的意識を持って、時には上とぶつかりながら戦って行く必要があるのではないだろうか。
◆著者紹介
三島 正寛 (みしま まさひろ)
総合電機メーカーにて営業企画を経験後、企画部門のあり方に限界を感じ、自ら志願して現場の営業に異動。新規商品の事業拡大・販路開拓の営業に従事。2年間で多大な実績を残し、事業拡大に大きく貢献する。
現在、FRIの副代表理事。FRIがNPO法人化する以前から組織の運営参画し、早4年になる。今後、ますますFRIという組織を拡大・成長させるために代表の清水とともに日々奮闘中。
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