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10万円の高級靴は結局得になるか?

2008年1月20日 by 創設者 河合 拓   ブックマークに追加する

創設者 河合 拓

高級靴が流行っているという。ジョンロブ、エドワードグリーン、ベルルッティーなど一足10万円以上もする高級靴が売れているし、ファッション雑誌を読んでも特集が組まれている。

 webを見てみよう。彼方此方に、エドワードグリーンを買った、チャーチを買ったという人が「自慢の」靴の写真をwebにアップしている。そして、(ほぼ例外なく)こう書かれているはずだ


「高級靴は10年も長持ちする。だから、長い目で見ても安いのだ。例えば、一足 8000円の靴を一年で毎年買い換えても、高級靴は毎年は1万円だ。一方、履きやすさは天と地の違いがある。だから、高級靴はコスト対効果がよいのだ」と。


 こういう記述を読むと、私は「ああ、日本人はやっぱりブランドというものがよく分かっていないのだ」と思う。


 まず、こういう人に限って、高級靴は必ず複数持っている。つまり、毎年1万円どころか、毎年3万円、4万円の減価償却費になる。さらに、10年も使えば、最低でも3回はオールソールが発生する。一回のオールソールは2万円以上するから、さらにコストはかかる。また、決定的なのは、8000円の靴は1年で一回つぶれてしまう、という理屈だ。そんな話は聞いたことはない。8000円でも、10万円靴と同じようにローテーションを組めば、グッドイヤーウエルティッド製法ではなくても余裕で3年は持つだろう。つまり、高級靴は結局は安いのだ、というのは間違いなのである。高いものは高いのだ。


 それでは、なぜ、高級靴を買った人は「結局は安くなる」というのだろうか。それは、日本人が「精神価値」というものを理解していないからだ。ブランド品は、「安いから」買うのではない。「ステータス、高い感性」などという、物理価値ではない精神的な価値が高いから買うのである。ヨーロッパなどブランドが発達した国では、消費者は「高いもの」を贅沢品として認めて買っている。同様に、こういう高級靴を買っている人も、間違いなく、ここに満足感を感じているのだ。しかし、それを自分で認めようとしない、自分に「いい訳」を無理な理屈で作っているだけである。そうしないと、高いお金を出した「意味合い」を自分の腹に落とせないから、だ。


 日本でブランドビジネスが育たないのは、こういう日本人の精神構造、すなわち、物理価値=絶対価値という戦後の工業化時代のDNAが体に組み込まれているからだろう。嘘だと思うなら、最近ヴィトンを買った人に、なぜ、ヴィトンのバッグを買ったのと聞いてみて欲しい。きっと、「丈夫で長持ちするから」というだろう。


 私が、日本からブランドは生まれない、日本はブランドの消費国だ、という理由はここにある。


* この文章は河合拓の個人ブログ 「事業再生コンサルタント河合拓の視点」の過去のものから抜粋しています

もっと読みたい方は→http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html

【著者】
河合 拓 (かわい たく)
経営コンサルタント 広く流通、小売業界に対して事業の立て直し、組織改革などを行っている。得意領域はマーケティング、事業戦略、生産性向上、営業改革、ナレッジマネジメント導入など。手がけた企業は国内外の大手上場企業。製造業、IT 企業、総合商社、流通企業など。赤字の上場企業を半年で黒字化させるなど、過去5社の立て直しを行いすべて成功裏に終わっている。
NPO法人FRIの設立者(現在はシニアアドバイザー) 自民党への政策提言、私立大学と大手商社と産学協同ブランド開発プロジェクト、大学生向け就職支援、中小企業向けコンサルティングなどを行っている。

(講演、執筆)
繊研新聞 (全国紙)
「ザ・ターンアラウンド」アパレル業界の事業再生 2007年 9月より連載予定
「間違いらだけのQR」「ファッション業界は08年に起きる地殻変動に備えよ」連載
チェーンストアエイジ 「キャッシュフロー経営」
大手都銀向けビジネス雑誌寄稿
大手製造業向けビジネスマガジン寄稿

政策学校一新塾 (大前研一設立) 講師 経営戦略アドバイザ
「ロジカルシンキングと会議の設定」
「仮説構築と情報収集、分析の技術」
「プロジェクトマネジメント」
「モチベーションマネジメント」

 

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この記事へのコメント (3件)

こういった考え方僕もしてしまいます。
モノを買うとき減価償却的な発想で価値を測ってしまう。
ようするに、日本人はケチなんですかね。

ただこの記事のタイトルを読んだ瞬間思い浮かんだのは、履いている靴が高級なほうが顧客先などで交渉・プレゼンするときの印象が良くなり支払われる報酬も高くなるから結果的に得するほうの話しでしたが。

どちらにせよブランドというのは実価値よりも、それを持つことによる自信など、精神的な魅力があるからこそ買われるものなんですね。

実は、私も減価償却的発想で買っています。。
財布からクレジットカード出すときぐずってしまうんですね(笑)そんなとき、いや、高いもの買った方が結局安くつくんだよ、と自分を説得するわけです。
我々の精神構造の中には「贅沢は敵だ」という戦争中の価値観がすり込まれているのかもしれません。そういえば、昔水前寺清子が「ぼろは着てても心の錦〜」って歌を歌っていました。

著者のその他の論考には賛成できるものが多いです。
しかし、本論は暴論として同意できません。

『日本人が「精神価値」というものを理解していない』という点、あまりにも一般論化しすぎていると感じます。
おそらく著者自身の個人的感覚を他者に投影しすぎではないでしょうか。

私は自分でもブランド物の価値の本質は、高価で社会的に高評価なものを入手することの自己満足か、もしくはそれが他者に気づかれることによる優越感の獲得効果だと感じています。

そのように言語化する人は少ないでしょうが、感覚として同じものを抱く人は少なくないでしょう。

なぜ多くの若い日本人女性がこれほどヴィトンを買うのでしょう?(確かLVMHの売上の4割は日本からだとのこと)

なぜ、生活に困らず高等教育に進める社会階層の家庭に属する女子学生がナイトビジネスに精を出してまでブランドバッグを買うのでしょう?
(キャバクラの現実を知る人ならば驚く話ではありません)

なぜ、6畳一間のアパートに住んで5年ローンを払ってまで中古のフェラーリを買う人がいるのでしょう?
(現実には少ないですが、このような趣旨の人気車雑誌の連載が現実にあります。

本論の主張がもし、ブランド、特にファッションブランドの「使い方」もしくは「手に入れ方」が欧米のそれと違い間違っている、という主張なら理解できますし同意です。

しかし、ブランド品を「安いから」買っているなどという人は確実にマイノリティでしょう。

嘘だと思うなら、初めてヴィトンを手に入れた女性をサンプルに、なぜヴィトンなのかと”実際に”聞いてみて下さい。

半数以上は、「ずっと欲しかったから」もしくは「カワイイから」、あるいは「皆がもっているから」、さらには「パパ/彼がくれたから」といった答えでしょう。

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