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間違いだらけのマーケティング

2007年10月27日 by 創設者 河合 拓   

創設者 河合 拓

 製造業の場合、会社が「言っていること」と「消費者として見えること」が決定的に違うことがおおい。例えば食品メーカの商品企画の人と話をしていると、「うちの商品はとにかく歯ごたえシャクシャクし、天然の味が味わえる」などと全社員が言っている。


 確かに「言われてみれば」歯ごたえもシャクシャクしている「気がする」し、確かにおいしいわけだ。しかし、友人の女性に話を聞いてみると、あそこの商品は味に興味がない人が、適当に弁当のすみに置いておく程度のお総菜、という認知が一般で、商品企画の人が言っているようなイメージは全くないということが本当に多い。


 さらに、そのことを企画の人に話してみると、なにやら複雑な分析をいろいろ説明し、それはそれでアカデミックな興味としては面白いのだが、一方、消費者の視点で感じてみる(考えるではない)と、どうもしっくりこない。彼らの理屈は、多くの場合、我々の思いや商品のコンセプトを、しっかりと小売・店舗の人たちが実践してくれない、というものだ。
ようは、売れない商品を「売り方が悪いからだ」と他人のせいにしているだけなのだ。

 
 だから、メーカーの営業部は、店舗の最前列までいって、販売員に対していろいろ指導しているのだという。しかし、その「指導」の中身を見ていると、その「なんとか分析」の結果出てきた的外れなことを、あれこれやっているに過ぎない。その内容はプロダクトアウトそのものである。


 例えば、ビールを考えてみよう。「ビールはやっぱりアサヒだ、いやキリンだ」と、自分の「こだわり」を語る人が多いが、私はいわゆる「ビール党」をあつめ、ブラインドテストをし「飲み比べ」をやってみれば、大多数の人の「こだわり」が幻想だということが明らかになるだろうと思っている。消費者なんてそんなもんだ。


 そこで、こういう仮説がでてくる。「ようは消費者は分かっていない」のである。しかし、同時に、「食べ物にあれこれウンチクを語りたい」という癖も持っている。だから、消費者の頭の中にある「ぼんやりとしたもの」を「明確」に、「理屈付け」してやればよい。私なら、まず、このように全体の構造を仮説で押さえるだろう。


 例えば、歯ごたえが「シャクシャク」する理由は、素材に「湯通し」をやっていないから、素材が「生のまま」入っている。これが歯ごたえの良さなのだ、などという「理屈」である。そうすると、消費者は、「そうか、湯通しをしていないんだな。だから、天然の味をそのまま味わえ、触感もシャクシャクするのか」など、消費者の頭の中で、訴求ポイントがはっきりする。また、「生の素材なら少々値段が高くてもしかたないでしょう」などと、消費者に価格を転嫁する合理性がつながってくる。つまり、プライシングも見直すことができるわけだ。


 世界の一流のブランドは、こうした「ストーリー付け」がうまい。昔、船が沈没したときでもルイヴィトンバッグに入っていたものは壊れなかった、とか、それはそれでかなり怪しいのだが、それなりにストーリーと理屈がはっきりしているので、消費者が、「そうか、「だから」、この商品はよいのだ」という「ロジック」が頭に残るのだ。ブランドロイヤリティーが高い商品には、かならず「ウンチク」本がうまれ、雑誌などの商品評価で読まれるのはこういうメカニズムである。


人は、分かりやすい因果関係を頭に植え込めば、そのブランドに対して長期のロイヤリティーを持つ。


 これに対して、ダメマーケティングの最大の特徴は、とにかく消費者の声を集め、消費者の声を「神の声」とし、複雑な(私から言わせれば無意味な)分析を繰り返す。簡単にいえば、仮説もなければヴィジョンもない人間がやる手法だ。


 上記のビールのように、現実は、消費者は何も分かっていないのだから、そんな声を聞いても答えなど出てくるはずなどない。せいぜい「ひとりよがりのウンチク」がでてくるだけだ。それが、そもそも「うんちく」だということが分かっているならいざ知らず、その言葉を真に受けて、言われるがままいろいろやっていても何も変わらないだろう。例えば、私がビール会社の社長なら、クオリティーに対する過度な投資より、CMやイメージ戦略に投資をすると思う。いくら消費者が「ビールは味だ」などとのたまっていても、だ。なぜなら、私の頭の中には、「消費者は、一見、味にうるさいが、その根拠はイメージに左右される部分が大きい」という仮説があるからだ。

 もう一つ、お粗末な例を紹介すると、あるアパレルで、自社のブランドの競争力を高めるために、競合とブランド比較の意識調査をやったことがあった。その話を女性にしてみると、みんな大笑い。女性の間では、そのアパレルの商品にブランド力などなく、多くの女性はただ「安いから」買っているだけだということである。さらに、競合として上げているブランドアパレルに関しても、「なんで競合なのか分からない」という声が圧倒的。「比べる相手を間違えているんじゃないの?」ということである。結局、比べる土俵も違うのに、自分もブランドの仲間入りだと思い違いをしながら調査を行っている。

 消費者は、なんとなくいいと思っている「理由」を分かりたいと思っている。そのためには、そもそも、「伝えたいもの何か」というコンセプトを明確にする必要がある。


 一方、商品の持つイメージというものは、偶然と必然が複雑に絡み合い、商品企画の初期段階とは微妙にねらいがずれてくるということがある。そのできあがったイメージに沿って商品を変えるのか、または、イメージそのものを変え原点回帰をねらうのか、これは、まさに戦略に他ならない。


 そして、一度イメージしてしまったものはなかなか変えられないということがあり、ここにメーカー側と消費者側の意識ギャップが生まれるのである。突き詰めて言えば、TO-BE (あるべき姿)とは何か、今(AS-IS) の延長にない「見えない姿」を見る力が必要(仮説構築)ということだ。


* この文章は河合拓の個人ブログ 「事業再生コンサルタント河合拓の視点」の過去のものから抜粋しています


もっと読みたい方は→http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html


【著者】
河合 拓 (かわい たく)
経営コンサルタント 広く流通、小売業界に対して事業の立て直し、組織改革などを行っている。得意領域はマーケティング、事業戦略、生産性向上、営業改革、ナレッジマネジメント導入など。手がけた企業は国内外の大手上場企業。製造業、IT 企業、総合商社、流通企業など。赤字の上場企業を半年で黒字化させるなど、過去5社の立て直しを行いすべて成功裏に終わっている。

NPO法人FRIの設立者(現在はシニアアドバイザー) 自民党への政策提言、私立大学と大手商社と産学協同ブランド開発プロジェクト、大学生向け就職支援、中小企業向けコンサルティングなどを行っている。


(講演、執筆)
繊研新聞 (全国紙)
「ザ・ターンアラウンド」アパレル業界の事業再生 2007年 9月より連載予定
「間違いらだけのQR」「ファッション業界は08年に起きる地殻変動に備えよ」連載
チェーンストアエイジ 「キャッシュフロー経営」
大手都銀向けビジネス雑誌寄稿
大手製造業向けビジネスマガジン寄稿


政策学校一新塾 (大前研一設立) 講師 経営戦略アドバイザ
「ロジカルシンキングと会議の設定」
「仮説構築と情報収集、分析の技術」
「プロジェクトマネジメント」
「モチベーションマネジメント」

 

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