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マーケティング力を高める5 『新マーケティングミックス』

2007年8月 2日 by 理事長 清水 知輝   

理事長 清水 知輝

一般的にマーケティングミックスとは、「4P(価格:Price、流通:Place、製品:Product、広宣・販促:Promotion)」の各Pを組み合わせて考える事を指すが、派生した4C(顧客価値:Customer Value、顧客コスト:Customer cost、利便性:Convenience、コミュニケーション:Communication)も含め、もはや、これを考えないマーケティングなど存在せず、現時点においてはマーケティング戦術の要素でしかない。


その5:『新マーケティングミックス』


私が考える、新しいマーケティングミックスは、一連のマーケティング戦術をベースコンセプトを元に複数ラインで走らせるというものだ。


例えば、「ウコンの力」というヒット商品があるが、商品自体は2タイプあり、コンビニを主軸に売られている「ドリンクタイプ」とドラッグストアなどでも売られている「顆粒タイプ」がある。
これらは、ある種異なる商品とも言えるのであるが、前者は、まさに飲み会の前後で軽く飲む、というシーンを想定して作られたものであるのに対し、後者は、それが進んで、半ば健康維持のために常用するようになった人のために作られたものである。
確かに、形状が異なると製造コストなどは大きく上がるのであるが、同じ「ウコンの力」を如何に消費者に受け入れて貰うか、という事業的な観点で捉えると、実は同じ事業内での派生でしかない。
このような同じ「シーズ」をベースとしながらも、複数の展開で広く消費者を捉える事を、私は「新マーケティングミックス」と呼んでいる。


【本質的な顧客視点】


このような違いが生まれるのは、(MBAなどで教えている)古いマーケティングは、まず、4Pありき、でスタートし、それからSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)などを考えるのに対し、新しいマーケティングは、まず顧客視点から始まるため、シーズとSTPからスタートし、そこで選んだターゲットと作り上げたコンセプトを元に、4P(展開戦術)を練る、という手順を取るという大きな違いがあるからだ。
つまり、『数値の本質を読む力』でも触れたように、ストーリーの重要性が増したからこそ、最初にぶれない軸、すなわち、コンセプトを最初に打ち立てる必要が出てきたという事である。


ひとつの商品でマスを狙えた過去よりも、既に何度も触れたように、より絞り込まれたターゲットと深い関係を築く必要がある現在の方が、マーケティング自体もより複雑化しており、その結果、過去のように幅広い層を事業として狙うためには、このような複数のマーケティングプランを用いて、結果的に、複数のターゲットを捉える事が必要となっているからであろう。
それこそが、新しい真のマーケティングミックスであるといえるし、これらを別商品として扱うのではなく、ある程度統一されたものとして扱わなくてはならないのである。


【ミックスの幅】


既に述べたように、新しいマーケティングミックスとは、同じ「シーズ」を原点としながら、本シリーズで連載しているような商品作りも含めた「新しいマーケティング」を複数のラインで展開させる、という意味での「ミックス」である。


しかし、ターゲットを広げるために、幾つでもラインを持って良い訳でもない。
これは、責任者の力とコンセプトの持つ可能性によるところはあるのだが、「新しいマーケティング」においては、コンセプトが何よりも大切であるため、そのベースコンセプトが確実に反映されているかどうかが担保されなくてはならない。
例えば、「ウコンの力」のケースでは、「飲んだら飲んどこ」のキャッチコピーにもあるように、飲んだ際に気軽に肝臓を守る、という贖罪系の商品である。だからこそ、飲料から顆粒・タブレットへと形態が変わっても手軽に利用できる、というところには配慮されている。


このように、ベースコンセプトに全てのマーケティング施策が合致しているかを判断しなければならず、結果的に、その範囲は限定される事になる。
これが、人を介して行われるようになると、堅持する事は難しくなり、全体に悪影響を与えかねないため、徹底しなければならい。
例えば、シャンプーのブランドなどは、同名のサブ商品が多過ぎ、ブランドに対して良い影響が出ているとは言えない。機能的な連携がないものは、消費者にとって、同一ブランドを使う必然性が薄い以上、ベースコンセプトが徹底されているとは言えないからである。
つまり、単なるブランドの二次利用(人気ブランドを利用した異なる商品でのサブブランド展開)ではなく、ベースコンセプトを顧客に合わせて、受け入れられるものを提供するために、複数の展開を行うのである。だからこそ、他人を介して行われる規模になる時は、非常に注意が必要となるのだ。


新しいマーケティングにおいては、考えるべき事や範囲が非常に多いため、感覚値であるが、3~5程度のラインの持ち方が限界ではないかと考える。
それ以上増やす際は、既存ライン自体を見直す形で対応した方が、結果的に収益性の向上に貢献できるだろう。


最後にまとめよう。
マーケティングミックスの代表である4Pは、現在においては当然であり、マーケティング戦術の要素となってしまっている。
新しいマーケティングミックスは、その戦術ラインを、ベースコンセプトを起点とし、顧客に最もマッチした形で提供するために複数化し、そのコンセプトをしっかりと確実に伝えていくために行う、顧客ベースの活動である。
これは、新しいマーケティングが、過去の大量生産&マスマーケティングではなく、コンセプトを最も重視し、ターゲットを絞りこまなければならない事に起因する。
そして、これを着実に行うには、ベースコンセプトをしっかりと理解し推し進める力が求められるため、自ずと管理可能なライン数というのは決まってくる。
つまり、この方針を大きく展開させるには、マーケティングは企業の道標とは言え、遂行者の人材育成とセットで考える必要があるのである。


●「マーケティング力を高める」シリーズ
マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』
マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』
マーケティング力を高める3 『コンセプトを打ち立てる』
マーケティング力を高める4 『コミュニケーション・ミックス』
マーケティング力を高める6 『ブルーオーシャン戦略(BLUE OCEAN STRATEGY)』
マーケティング力を高める7 『ニーズを生みだす~商品・サービス開発の方法論~』

◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後ベンチャー企業に転進。経験を活かし、あらゆる改革・企画・管理業務を担い、業績拡大を支えつつ、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革にあたる。
 
FRI公式ツイッター(筆者が主担当です)
筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」

 

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