マーケティング力を高める3 『コンセプトを打ち立てる』

本シリーズの1、2において、マーケティングには実現するための本質的な考え方があり、それは「ターゲット」と「商品(製品・サービス)コンセプト」であり、「ターゲット」の考え方について詳しく述べた。今回は、「商品(製品・サービス)コンセプト」の考え方に触れていこう。
その2:『コンセプトを打ち立てる』
コンセプトとは何か。この単語の意味を考えると、何となくわかっていそうでわかっていない事に気が付くだろう。
それがわからなければ、具体的に反映する事は難しい。
「コンセプト」とは、一言で言うと、「商品(製品・サービス)によって顧客に提供する価値、及び、その表現」のことである。
「この商品(製品・サービス)のコンセプトは何か」と聞かれて、あなたは明解に答えられるだろうか。
もちろん、商品企画や営業だけでなく、製造・サービス提供部門に至るまでが対象となる。
これは、マーケティングで重要なのは、シリーズ1の「マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』」でも述べたように、マーケティングとは会社全てを同じ方向に向ける「道標」であり、部署に関わらず、この「コンセプト」が伝わっていなければならないからだ。
ここで、商品の機能やサービス基準を思い浮かべた人はいないだろうか。
それらは、大きくずれてはいないが、性能であって、コンセプトの一部でしかない。以前より、かなり機能勝負は減ってきたとは言え、機能を全面に打ち出すだけでは、消費者はもはや明確な購入動機に繋がらなくなっているのだ。
【コンセプトが求められるワケ】
つまり、「コンセプト」とは「顧客視点での商品(製品・サービス)の(再)定義」である。
「売上至上主義の弊害~日本企業が陥る過ち~」でも述べたように、消費者は自身にとって価値あるものしか買わないし、その価値観は多様化している。
昔のように、他人に比べて良いものを持つ、というようなメンタリティーとは、明らかに違っている。
以前であれば、例えば、デジタルカメラの画素数のように、100よりも200、200よりも500という風に、性能があがれば、かなりの割合で購入に至る因子になれた。
しかし、今は、消費者自身が価値を感じられなければ、性能がどれだけ良くとも無価値である。売り手の都合での物づくりは、職人の領域まで高められなければ、ほとんどにおいて評価されない。
だからこそ、「コンセプト」が重要なのである。
例えば、消費者が求めているものは、「ストーリー」だ。
商品の担い手(企業や職人)が持つ歴史や、商品が目指すもの、商品企画者の想いなどに共感して、それを共有するために所有、あるいは購買するのである。
そういった、価値感を共有する、という事自体が、消費者自身の価値となり得るのだ。
BtoBの領域においても、標準部材を除けば、例えば、どこよりも速いスピードだったり、担当者の課題を共に解決してくれたり、卓越したコーディネートスキルであったりと、全てにおいて優れている、あるいは安い、というものではなく、担当者の業務の価値を更に向上させてくれるような商品(製品・サービス)が求められている。
ある意味、昔の街の商店主のように、「ちょっとこういうのないかな」と相談を持ち掛ければ、数日後には「こんなの仕入れましたよ」と返ってくる、というような、過去への原点回帰とも言えるだろう。
それが、より大量に、より素早く、より安価に求められていると考えれば、わかりやすいのかもしれない。
では、コンセプトを具体的に考えるには、どのようにしていけば良いのだろうか。
【コンセプトを打ち立てる】
「コンセプト」は主に2つの因子から成り立っている。
それは、顧客に対する「訴求価値」と、顧客がどのように使うかという「利用シーン」である。
詳細は、メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」を読んで貰えればと思うが、結局のところ、どれだけ顧客の立場に近づけるか、という事である。
しかしながら、前章でも述べたように、消費者の嗜好は多様性の一途をたどっている。そこに意識を合わせろ、と単に言われても難しい。
そこで、影響を与える因子として大きくこの2つを挙げているのである。
「訴求価値」とは何か。
これを理解しなければ、これからのマーケティングを推進する事は難しい。
一言でいえば、「訴求価値」とは、「利用者(消費者)が得られる便益そのもの」である。
例えば、最近「空気で洗う洗濯機」というものが発売され、人気を博している。
機能自体は、水でなく「空気で洗う」というものであるが、消費者は、「空気で洗う」機能を買っているわけではないのだ。
ここで、「なぜ?」と思った人は、機能優位の発想に囚われている危険性がある。
実際に消費者は、「靴がキレイになる」「帽子がキレイになる」「クリーニングとまでは行かなくても冬物重量衣料をキレイにする」という効果に対してお金を払っているのである。
これがもし従来のものでも可能であれば、わざわざ新しい技術に高いお金を払ってまで買ったりしない。
例えば、エアコンを1つとったとしても、「電気代(古いものと比べ)が安くつく」というような金銭的な効果であったり、「直ぐに快適な温度に」「冷えすぎない除湿で快適さだけを得る」「自然の森と同じ空気環境を部屋の中で実現」などの快適な住環境を作る効果、更に、最近は「10年間掃除不要」(機器の買い替え頻度を考えると10年はほぼフリーメンテナンスと同義)という手入れの簡便さという効果に至るまで、消費者は得られるようになっているし、それに対価を払っている。
これらの「訴求価値」を前号「マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』」で述べたような「ターゲット」に合わせて考えるのである。
次に、「利用シーン」であるが、その商品(製品・サービス)を利用する場面を想定しなくてはならない。
なぜなら、そのシーン毎に、求められる価値自体が変わってくるからである。
例えば、エアコンも「一人暮らし」と「子供がいる家庭」では、利用シーンが異なる。
「一人暮らし」の場合、ほとんど家にはいないので、帰ってきてから朝を迎えるまでに重きが置かれる。働いているのであれば、疲れをとるために熟睡したい、と思うだろう。「子供がいる家庭」では、日中も主に子供が使うため、継続的に使う事を前提に、アレルギー対策だったり、空気の循環や、冷えすぎないための工夫が求められる。
例えば、自動車も、通勤や旅行、ドライブ、買い物など、利用シーンによって、求められるものは変わってくる。
そのため、「訴求価値」と「利用シーン」はセットで考えなくてはならないのだ。
顧客をベースとする発想方法、すなわち「コンセプトの打ち立て方」について、少しは掴んでいただけただろうか。
これらの力を高めるには、座学だけでは難しい。
実践と共に、日頃の消費者としての情報収集が欠かせない。これは、BtoBの発注者としても同じであり、様々なBtoBソリューションにも当てはまる。
是非、漫然と周りを見たり、情報に接するのではなく、これからの時間を有効に活用し、力を磨く努力をして貰えればと思う。
最後にまとめてみよう。
「コンセプト」とは「顧客視点での商品(製品・サービス)の(再)定義」であり、商品の性能やサービス基準とは異なるものである。
そこにおける重要な因子は、「訴求価値」と「利用シーン」である。
「訴求価値」とは、顧客の得る便益そのものであり、「利用シーン」とはどういう場所・時間帯・目的で使われるか、それらの可能性を見る事である。
そして、「訴求価値」は「利用シーン」により影響を受けるため、常にセットで考える必要がある。
最後に欠かせない視点として、競合との比較、というものがあるが、これは過去においても実践されてきているので、ここでは多くは語らないが、やはり忘れてはならない視点だろう。
また、「コンセプト」は「ターゲット」と組み合わせる事でのみ、高い効果を挙げられる。常に、これらの複合的な視点を持つ事を忘れてはならないだろう。
●「マーケティング力を高める」シリーズ
マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』
マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』
マーケティング力を高める4 『コミュニケーション・ミックス』
マーケティング力を高める5 『新マーケティングミックス』
マーケティング力を高める6 『ブルーオーシャン戦略(BLUE OCEAN STRATEGY)』
より詳しく知りたい方はこちらへ⇒ 筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」
◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後ベンチャー企業に転進。経験を活かし、あらゆる改革・企画・管理業務を担い、業績拡大を支えつつ、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革にあたる。
この記事の評価(平均点): 4/5 (これまで 4 人が評価しました)
FRIではご覧になった皆様の評価を常に大切にしています。良い評価も悪い評価も執筆者の大きな励みとなりますので、お気軽に☆マークをクリックしてこの記事を5段階で評価してください。



アドバイザー 河合 拓
スタッフ 木原 工
副代表理事 三島 正寛
スタッフ 宮崎 善輝
