FRI トップ > FRIコラム > マーケティング・ブランディング > マーケティング力を高める3 『コンセプトを打ち立てる』

マーケティング力を高める3 『コンセプトを打ち立てる』

2007年7月 9日 by 代表理事 清水 知輝   ブックマークに追加する

代表理事 清水 知輝

本シリーズの1、2において、マーケティングには実現するための本質的な考え方があり、それは「ターゲット」と「商品(製品・サービス)コンセプト」であり、「ターゲット」の考え方について詳しく述べた。今回は、「商品(製品・サービス)コンセプト」の考え方に触れていこう。

その2:『コンセプトを打ち立てる』

コンセプトとは何か。この単語の意味を考えると、何となくわかっていそうでわかっていない事に気が付くだろう。

それがわからなければ、具体的に反映する事は難しい。
「コンセプト」とは、一言で言うと、「商品(製品・サービス)によって顧客に提供する価値、及び、その表現」のことである。

「この商品(製品・サービス)のコンセプトは何か」と聞かれて、あなたは明解に答えられるだろうか。
もちろん、商品企画や営業だけでなく、製造・サービス提供部門に至るまでが対象となる。
これは、マーケティングで重要なのは、シリーズ1の「マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』」でも述べたように、マーケティングとは会社全てを同じ方向に向ける「道標」であり、部署に関わらず、この「コンセプト」が伝わっていなければならないからだ。

ここで、商品の機能やサービス基準を思い浮かべた人はいないだろうか。
それらは、大きくずれてはいないが、性能であって、コンセプトの一部でしかない。以前より、かなり機能勝負は減ってきたとは言え、機能を全面に打ち出すだけでは、消費者はもはや明確な購入動機に繋がらなくなっているのだ。

【コンセプトが求められるワケ】

つまり、「コンセプト」とは「顧客視点での商品(製品・サービス)の(再)定義」である。

売上至上主義の弊害~日本企業が陥る過ち~」でも述べたように、消費者は自身にとって価値あるものしか買わないし、その価値観は多様化している。
昔のように、他人に比べて良いものを持つ、というようなメンタリティーとは、明らかに違っている。

以前であれば、例えば、デジタルカメラの画素数のように、100よりも200、200よりも500という風に、性能があがれば、かなりの割合で購入に至る因子になれた。
しかし、今は、消費者自身が価値を感じられなければ、性能がどれだけ良くとも無価値である。売り手の都合での物づくりは、職人の領域まで高められなければ、ほとんどにおいて評価されない。
だからこそ、「コンセプト」が重要なのである。

例えば、消費者が求めているものは、「ストーリー」だ。
商品の担い手(企業や職人)が持つ歴史や、商品が目指すもの、商品企画者の想いなどに共感して、それを共有するために所有、あるいは購買するのである。
そういった、価値感を共有する、という事自体が、消費者自身の価値となり得るのだ。

BtoBの領域においても、標準部材を除けば、例えば、どこよりも速いスピードだったり、担当者の課題を共に解決してくれたり、卓越したコーディネートスキルであったりと、全てにおいて優れている、あるいは安い、というものではなく、担当者の業務の価値を更に向上させてくれるような商品(製品・サービス)が求められている。

ある意味、昔の街の商店主のように、「ちょっとこういうのないかな」と相談を持ち掛ければ、数日後には「こんなの仕入れましたよ」と返ってくる、というような、過去への原点回帰とも言えるだろう。
それが、より大量に、より素早く、より安価に求められていると考えれば、わかりやすいのかもしれない。

では、コンセプトを具体的に考えるには、どのようにしていけば良いのだろうか。

【コンセプトを打ち立てる】

「コンセプト」は主に2つの因子から成り立っている。
それは、顧客に対する「訴求価値」と、顧客がどのように使うかという「利用シーン」である。

詳細は、メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」を読んで貰えればと思うが、結局のところ、どれだけ顧客の立場に近づけるか、という事である。
しかしながら、前章でも述べたように、消費者の嗜好は多様性の一途をたどっている。そこに意識を合わせろ、と単に言われても難しい。
そこで、影響を与える因子として大きくこの2つを挙げているのである。

「訴求価値」とは何か。
これを理解しなければ、これからのマーケティングを推進する事は難しい。

一言でいえば、「訴求価値」とは、「利用者(消費者)が得られる便益そのもの」である。
例えば、最近「空気で洗う洗濯機」というものが発売され、人気を博している。
機能自体は、水でなく「空気で洗う」というものであるが、消費者は、「空気で洗う」機能を買っているわけではないのだ。

ここで、「なぜ?」と思った人は、機能優位の発想に囚われている危険性がある。
実際に消費者は、「靴がキレイになる」「帽子がキレイになる」「クリーニングとまでは行かなくても冬物重量衣料をキレイにする」という効果に対してお金を払っているのである。
これがもし従来のものでも可能であれば、わざわざ新しい技術に高いお金を払ってまで買ったりしない。
例えば、エアコンを1つとったとしても、「電気代(古いものと比べ)が安くつく」というような金銭的な効果であったり、「直ぐに快適な温度に」「冷えすぎない除湿で快適さだけを得る」「自然の森と同じ空気環境を部屋の中で実現」などの快適な住環境を作る効果、更に、最近は「10年間掃除不要」(機器の買い替え頻度を考えると10年はほぼフリーメンテナンスと同義)という手入れの簡便さという効果に至るまで、消費者は得られるようになっているし、それに対価を払っている。

これらの「訴求価値」を前号「マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』」で述べたような「ターゲット」に合わせて考えるのである。

次に、「利用シーン」であるが、その商品(製品・サービス)を利用する場面を想定しなくてはならない。
なぜなら、そのシーン毎に、求められる価値自体が変わってくるからである。

例えば、エアコンも「一人暮らし」と「子供がいる家庭」では、利用シーンが異なる。
「一人暮らし」の場合、ほとんど家にはいないので、帰ってきてから朝を迎えるまでに重きが置かれる。働いているのであれば、疲れをとるために熟睡したい、と思うだろう。「子供がいる家庭」では、日中も主に子供が使うため、継続的に使う事を前提に、アレルギー対策だったり、空気の循環や、冷えすぎないための工夫が求められる。
例えば、自動車も、通勤や旅行、ドライブ、買い物など、利用シーンによって、求められるものは変わってくる。
そのため、「訴求価値」と「利用シーン」はセットで考えなくてはならないのだ。

顧客をベースとする発想方法、すなわち「コンセプトの打ち立て方」について、少しは掴んでいただけただろうか。
これらの力を高めるには、座学だけでは難しい。
実践と共に、日頃の消費者としての情報収集が欠かせない。これは、BtoBの発注者としても同じであり、様々なBtoBソリューションにも当てはまる。
是非、漫然と周りを見たり、情報に接するのではなく、これからの時間を有効に活用し、力を磨く努力をして貰えればと思う。


最後にまとめてみよう。
「コンセプト」とは「顧客視点での商品(製品・サービス)の(再)定義」であり、商品の性能やサービス基準とは異なるものである。
そこにおける重要な因子は、「訴求価値」と「利用シーン」である。
「訴求価値」とは、顧客の得る便益そのものであり、「利用シーン」とはどういう場所・時間帯・目的で使われるか、それらの可能性を見る事である。
そして、「訴求価値」は「利用シーン」により影響を受けるため、常にセットで考える必要がある。
最後に欠かせない視点として、競合との比較、というものがあるが、これは過去においても実践されてきているので、ここでは多くは語らないが、やはり忘れてはならない視点だろう。

また、「コンセプト」は「ターゲット」と組み合わせる事でのみ、高い効果を挙げられる。常に、これらの複合的な視点を持つ事を忘れてはならないだろう。


●「マーケティング力を高める」シリーズ
マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』
マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』
マーケティング力を高める4 『コミュニケーション・ミックス』
マーケティング力を高める5 『新マーケティングミックス』
マーケティング力を高める6 『ブルーオーシャン戦略(BLUE OCEAN STRATEGY)』

より詳しく知りたい方はこちらへ⇒ 筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」

◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後ベンチャー企業に転進。経験を活かし、あらゆる改革・企画・管理業務を担い、業績拡大を支えつつ、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革にあたる。

 

ブックマークに追加する

この記事の評価(平均点): 4/5 (これまで 4 人が評価しました)

  • Currently 4/5
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5

FRIではご覧になった皆様の評価を常に大切にしています。良い評価も悪い評価も執筆者の大きな励みとなりますので、お気軽に☆マークをクリックしてこの記事を5段階で評価してください。

コメントを投稿する

※投稿が完了するとメッセージが表示されます。投稿ボタンを押してから少々の間お待ちください。

  • FRI Summer Camp 2008詳細・参加方法はこちら

カテゴリー別 最新記事

Current Topics
農政改革と地方再生を考える
『朝青龍問題』に見る、マスコミ報道の論点整理力のなさ
「原発停止による電力不足」から考える
セカンドライフの今後を占う
スパ施設の今後を占う
「エコ」の見方
商業施設出店の今後を占う(2)
コムスン問題の論点
商業施設出店の今後を占う(1)
アカウンティング・ファイナンス
数値の本質を読む力
デフレはいつまで続く?
キャリア・就職
非エリートキャリアのすすめ
「キャリアプランニング」と会社選び・仕事選び
ジョブキャリアとヒューマンキャリア
大企業と小企業のどちらに就職すべきか
将来の目標設定の必要性
「ベンチャー企業」か「大企業」か~就職先としての違い~
もしももう一度就職活動をやりなおせたら・・・
「勉強」と「仕事」の大きな違い
就職活動からの自分ブランディング
グローバル化がキャリアに与えるインパクト
キャリアに対する考え方
プロフェッショナル
知らずに陥る魔の思考停止とは
プロフェッショナルな仕事とそうでない仕事の違い
答えに「する」力
なぜ、人の「成長スピード」に大きな差が生まれるのか
Morning Cafe Office
ダメな会議、ダメな上司、ダメな仕事
ホワイトカラーが陥る5つの落とし穴
塩一つで思考を広げることができるか
一流になるためのファッション
「あいまい」は「無責任」のあらわれ
プロフェッショナルとは?
マネジメント・リーダーシップ
「軸」を定める
リーダーに求められる力・必要とされる力
部下の叱り方
マネジメント力4 『欠かせないゴール設定のあり方とは』
ファシリテーションの本質
リーダーの役割
マネジメント力3 『公平なジャッジメントを行うために』
パワーミーティング
マネジメント力2 『役職に固執しない部下育成のあり方とは』
マネジメント力1 『管理職における情報管理とは』
チェンジマネジメントの本質
女性社員の扱い方
マーケティング・ブランディング
JAL 国内線ファーストクラス導入を分析する
航空会社は機内食をコンビニのお弁当にせよ
10万円の高級靴は結局得になるか?
間違いだらけのマーケティング
マーケティング力を高める6 『ブルーオーシャン戦略(BLUE OCEAN STRATEGY)』
マーケティング力を高める5 『新マーケティングミックス』
マーケティング力を高める4 『コミュニケーション・ミックス』
マーケティング力を高める3 『コンセプトを打ち立てる』
マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』
売上至上主義の弊害~日本企業が陥る過ち~
マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』
ICHIKAMIに見るブランディング戦略
マーケティングの飛躍とその理由
仕事術・思考方法
仕事のスケールをあげる
モチベーションの上げ方
コミュニケーション力のインパクト
問題解決力を鍛える方法
問題意識の無いところに、問題解決は無い
仕事が「はやい人」と「おそい人」の違い
アンストラクチャーなテーマに軸をはる
戦略的時間管理 Time Management
メールを使った仕事術
「論理思考」の原点
提案力・営業力
お客さまの心をつかむとは
営業力強化のポイント3 『顧客と正しく付き合う』
営業力強化のポイント2 『自信を持つ・強みを持つ』
営業力強化のポイント1 『ストーリーを描く』
日常スキル
日経新聞はこう読む
コイの処方箋
文章は誰でもきれいにかける(2)
文章は誰でもきれいにかける(1)
業種・業界・職種
機能しない情報システム部
コンサルタントを活用「できる」会社と「できない」会社
企業の再生・育成の仕事
時代遅れなメーカーの実態
コンサルティングの現場とは
経営戦略論
企業参謀
戦略立案の実務
フレームワークから考えてはいけない
ダイナミックストラテジー
コストワールドとスループットワールド

著者別 最新記事

アドバイザー 河合 拓アドバイザー 河合 拓
JAL 国内線ファーストクラス導入を分析する
企業参謀
航空会社は機内食をコンビニのお弁当にせよ
仕事のスケールをあげる
10万円の高級靴は結局得になるか?
戦略立案の実務
間違いだらけのマーケティング
コミュニケーション力のインパクト
答えに「する」力
部下の叱り方
問題解決力を鍛える方法
Morning Cafe Office
フレームワークから考えてはいけない
ダイナミックストラテジー
アンストラクチャーなテーマに軸をはる

 >>他記事はこちら(記事一覧)

スタッフ 木原 工スタッフ 木原 工
お客さまの心をつかむとは
ジョブキャリアとヒューマンキャリア
大企業と小企業のどちらに就職すべきか
日経新聞はこう読む
セカンドライフの今後を占う
将来の目標設定の必要性
スパ施設の今後を占う
文章は誰でもきれいにかける(2)
文章は誰でもきれいにかける(1)
商業施設出店の今後を占う(2)
商業施設出店の今後を占う(1)
 副代表理事 三島 正寛 副代表理事 三島 正寛
モチベーションの上げ方
『朝青龍問題』に見る、マスコミ報道の論点整理力のなさ
問題意識の無いところに、問題解決は無い
ダメな会議、ダメな上司、ダメな仕事
リーダーの役割
営業力強化のポイント3 『顧客と正しく付き合う』
営業力強化のポイント2 『自信を持つ・強みを持つ』
営業力強化のポイント1 『ストーリーを描く』
もしももう一度就職活動をやりなおせたら・・・
「あいまい」は「無責任」のあらわれ
プロフェッショナルとは?
時代遅れなメーカーの実態
キャリアに対する考え方
スタッフ 宮崎 善輝スタッフ 宮崎 善輝
コイの処方箋
「エコ」の見方
代表理事 清水 知輝代表理事 清水 知輝
非エリートキャリアのすすめ
「軸」を定める
知らずに陥る魔の思考停止とは
プロフェッショナルな仕事とそうでない仕事の違い
「キャリアプランニング」と会社選び・仕事選び
農政改革と地方再生を考える
リーダーに求められる力・必要とされる力
マーケティング力を高める6 『ブルーオーシャン戦略(BLUE OCEAN STRATEGY)』
なぜ、人の「成長スピード」に大きな差が生まれるのか
「原発停止による電力不足」から考える
マネジメント力4 『欠かせないゴール設定のあり方とは』
マーケティング力を高める5 『新マーケティングミックス』
仕事が「はやい人」と「おそい人」の違い
数値の本質を読む力
マーケティング力を高める4 『コミュニケーション・ミックス』

 >>他記事はこちら(記事一覧)

  • RSS