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売上至上主義の弊害~日本企業が陥る過ち~

2007年6月27日 by 理事長 清水 知輝   

理事長 清水 知輝

仕事の中で、あなたは何を目標にしているだろうか。会社を見るとき、あなたはどこを見て判断をしているだろうか。
ほとんどの場合、「売上」規模を軸に見ている事が多いのではないだろうか。
今期は昨対比+15%だ、とか、あれだけの大企業なら信頼できそう、とか、意識的か無意識的かは別として、私達は、どうしても「売上」というものに大きな影響を受けている。


では、今度は、あなたが商品を選ぶ時、決め手は価格だけだろうか?
たぶん、価格の事は常に考えるにせよ、それが決め手とはならないのではないだろうか。
私も、幾ら安くても、趣味の合わないもの、本質的な価値を感じられないものには手が出ない。

最近、伸びている企業を見ると、高品質や良質なデザインなのに、価格は手頃なものを供給しているところか、価格が少々高くても、今までなかった良いものを提案してくれるところが挙げられる。
これらはどの企業も、大企業と比べれば、それほどの規模感があるとは言えないところが多い。

つまり、「消費者の視点」と、「会社や社内における評価の視点」は、明らかに合っていないのだ。

なぜ、そのように噛み合っていない事が起こるのだろうか。
これを知る事で、今後の企業のあり方や、企業の評価を正しく考えられるようになる可能性がある。

このように、価値観にズレが生じる時は、古い価値観と新しい価値観が混在してしまっている事が要因になっている事が多い。
次は、そういった目線で、市場環境を見てみよう。

今まで、いや、既に過去になっているが、市場、すなわち消費者が均一化していた。
少なくとも、ものが足りなかった時代は、安くて良いものであれば、「他の人が持っていて、自分が持っていない」ことが不満だった。つまり、とにかく「所有」しているかいないか、が判断基準であったのだ。
例えば、古くは、三種の神器、3Cや、新3C、新三種の神器などがある。
やはり、これらは全て、「所有」が判断基準である。

つまりは、ある程度の品質のモノを低価格で提供できれば、消費者は所有を価値判断の前提とするため、そのモノは売れたのである。過去は、しばらくの間、そういう時代がずっと続いた。
そして、モノである以上、量産効果というものがあるため、同一種類のものを一定量以上売ろうとするベクトルが働くようになり、それがメーカーが日本の主力産業となっていった経緯も重なり、日本のカルチャーとして根付いていった。

量産効果というのは、例えば、どんなものでも、形あるものは「金型」などの型を使って外観を作り上げる。
そして、金型は非常に高価なものである。1つの金型で全てのパーツが作れないものも多く、しかも、その1つ1つが数百万円するようなものもざらにあるのだ。
そうなると、100個しか売れなければ、1個当たりは数万円のコスト負荷となるが、1万個売れば、1個当たりは数百円程度の負担となる。
売れば売るほど、1個当たりのコストが下がり、同じ値段で売れば利益が大幅に増えるようになる。これが、量を売ろうとするベクトルが働く大本の理由である。

しかし、今はどうだろうか。
デフレはいつまで続く?にも書いたように、消費者は欲しいと自身が感じるもの以外は、他の人が所有しているかどうかに関わらず、買おうとはしなくなった。いわゆる、ものあまりの時代、である。
買いたいと思うものには、自分の価値観の中でお金を惜しまないが、それ以外のものについては、必要最小限だが価値あるもののみ購入するようになっている。
つまり、量産効果を狙って、なるべく多くの人に売ろうとすればするほど、結果的に、誰も買ってくれなくなるという、逆効果を生み出す事になるのだ。

このような環境下において、過去のままのやり方、すなわち「売上至上主義」を堅持しても、利益を生まないばかりか、下手な値引き合戦や無料サービスの拡充など、消耗戦、すなわち「レッドオーシャン(血みどろの戦い)」に陥り、どんどんと利益を削っていく事に繋がってしまう。

これを、量産効果とは縁の薄いサービス業(基本的に製造を伴わないものの多くはサービス業と認識して良い)に、何の戦略もなく適用した場合は、確実に企業内部に歪みや亀裂を生じさせる程のダメージを与える場合がほとんどである。
コムスン問題の論点でも触れたように、サービス業で戦略なき「売上市場主義」を取る事の恐ろしさは、記憶に新しい。企業の存在自体を破壊しかねないものなのである。

どれだけ頑張っても頑張っても、企業業績が上がらないのは、こういった「売上至上主義」に根本的な要因がある事が多いが、それに誰も気付かないか、気付いても過去の経験をベースにするため対策が思い付かず、結果的に、過去のやり方を踏襲する事となる、という、非常に根深い問題となってしまっている。

だからこそ、まず、現場で当たり前とされがちな、この「売上至上主義」を疑い、他に方策がないのか、真剣に考え抜く事から始める必要があるのだ。
そうすれば、きっと何か糸口がつかめるはずだ。
その時に、マーケティング思考は1つの大きなヒントとなるだろう。


最後にまとめてみよう。
未だに残る「売上至上主義」は、過去の当たり前とされていた事業環境から生み出された産物である。
しかし、現在は、その事業環境が大幅に変化した事により、「売上至上主義」によって、企業を間違った方向に導きかねない。
これからは、「ブルーオーシャン戦略」などのように、利益・価値創造重視の経営へと舵を切らなければ、企業の存続自体も危ぶまれるだろう。
これから、就職などで企業を見る時は、「売上」ではなく「利益」とそれを生み出す仕組みに注力しているところを選ぶべきである。そうすることで、前向きな仕事が出来る可能性がより高くなるだろう。


◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後ベンチャー企業に転進。経験を活かし、様々な改革・企画・管理業務を担い、業績拡大を支えつつ、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革にあたる。
 
FRI公式ツイッター(筆者が主担当です)
筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」

 

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