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マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』

2007年6月25日 by 理事長 清水 知輝   

理事長 清水 知輝

これから毎週、マーケティング力を高める、と題し、今までの経験を元に、マーケティングについて幅広く論じてみようと思う。興味がある方は、是非、お付き合いいただきたい。

その1:『マーケティングとは何か』

さて、マーケティングと聞くと、どのようなイメージを持つだろうか。ある人は「広告・宣伝」、ある人は「データ分析」、ある人は「感性」を想像し、近頃は「Web2.0」などと言う人もいるだろう。確かに間違っていないが、それらは全て一要素でしかない。


実は、マーケティングと事業戦略は非常に似通っている。これをベースとする事が、実践的マーケティングの第一歩といえる。なぜなら、効果的なマーケティングというのは、個々のテクニックもあるにせよ、業界や事業の特性に合わせた形にならなければならないからである。

そして、なぜ事業戦略と似通うかといえば、マーケティングは事業において、商品の企画から販売まで内包し、更に価格戦略なども含めるとコストや収益性の部分まで関係するため、ほぼ事業の全てをカバーしなければならないからである。
マーケティングの大家、マーケティング・ストラテジスト、セオドア・D・レビットの言葉を借りれば、マーケティングとは、「顧客の獲得と維持という企業目的のために企業活動のすべてを統合することであり、経営戦略そのもの」である。但し、マーケティングは企業のプロセスを決める考え方であり企業全体ではない、というマーケティングの限界についても触れている。

ここで重要なのは、マーケティングは、単なる広告・宣伝や販売手法ではなく、それぐらいの高い視点がなければ、高い効果を生み出せないものだ、という事に対する理解と、だからこそ、俯瞰的にモノを見る力を養わなければならない、という事である。
マーケティングで有名なP&Gが、マーケティング部署を経営候補排出機関と位置付けているのは、あながち間違いではないのだ(但し、今は、エリート養成機関の色が強すぎて、会社全体として悪い影響もあるように思えるが)。

マーケティング力を本気で高めようと思うのであれば、小手先のフレームワークを学ぶよりも、まずは、企業活動や経営戦略に関する理解が求められる。そうでなければ、実践的なマーケティングの実現はおぼつかない。
私が、広告代理店にマーケティングを任せてはいけない、とずっと言い続けているのは、そういう理由からである。

自社の戦略や企業活動を理解しなければならないのは、やはり自社の人間でなくてはならないし、マーケティングは、広告・宣伝という狭い領域のものであってはないからだ。
事実、データ分析に偏ったり、新しい広告宣伝手法に飛びついたり、根本原理を理解せずにメソッドやフレームワークだけに走る人で、マーケティングにて効果を挙げられているのを見た事がない。
事例としては書けないのだが、進んでいると言われる有名外資系企業でも、数値主義に陥って、まともに考えればわかる事まで、数値の呪縛に囚われて、販売現場や消費者を実際に見ることなく、効果的な施策に繋げられない人を多くみてきた。
反面、徹底した現場主義でマーケティング活動を行う、某日系メーカーは、一見地味な活動の積み重ねではあるにせよ、実際に成果を挙げている。

だからこそ、メソッドやフレームワークなど、目新しいものに飛びついたりするのではなく、きっちりと全体感をもって当たる事が重要なのである。特に、企業の持つ三要素、「企画」「製造・業務」「営業」の各機能に対し、それぞれ適切な影響力を発揮しなければならず、特定の機能だけに注力する事は避けなくてはならない。あくまで、各機能が上手く同一方向に働く事を助けるのが、マーケティングの重要な役割だからである。

そして、マーケティングには、それらを実現するための本質的な考え方がある。

それは、「ターゲット」と「商品(製品・サービス)コンセプト」である。
これら2つは有機的に連動しているのであるが、全社の機能が同一方向に向くための「道標」と考えるとわかりやすいかもしれない。
もっと平易な表現をすれば、「誰に」「何を」「どのように」売るのかを明確化する、という事である。

特にこれらの考え方は、「ブルーオーシャン戦略」が有名になるように、事業環境が大きく変わった現在、非常に重要度が増している(この辺りについては、別コラム「売上至上主義の弊害~日本企業が陥る過ち~」で詳しく触れている)。
今、企業は、過去の「レッドオーシャン」、すなわち、血みどろの戦い(競合企業同士が利益を削ってでも相手のシェアを奪おうとする戦い)、とは異なる考え方を持って事業運営しなくてはならなくなった。だからこそ、マーケティングは、広告宣伝や感性というようなレベルではなく、もう一段高いレベルで語られるようになったのだ。

次回以降、これらのマーケティングの考え方に入っていこうと思う。


最後にまとめてみよう。
マーケティングは、過去のように、「広告宣伝」などのレベルではなく、企業運営自体をサポートする仕組みとなっている。
だからこそ、有効なマーケティング施策を実施するためには、事業自体に対する理解力が求められ、それは、事業運営者自身が、主体的な役割を果たすべきである。
マーケティング力を高めるには、小手先の手法やフレームワークに流される事なく、消費者の視点と事業運営におけるより高い視点を併せ持つ事を第一に考える事が必要であろう。

マーケティングは、真の顧客思考を実践できるならば、私達の生活をより良くする事が可能な考え方である。是非、単なる売上向上、金儲けのツールとしてではなく、高い視点で取り組んで貰いたいものだ。


●「マーケティング力を高める」シリーズ
マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』
マーケティング力を高める3 『コンセプトを打ち立てる』
マーケティング力を高める4 『コミュニケーション・ミックス』
マーケティング力を高める5 『新マーケティングミックス』
マーケティング力を高める6 『ブルーオーシャン戦略(BLUE OCEAN STRATEGY)』
マーケティング力を高める7 『ニーズを生みだす~商品・サービス開発の方法論~』

◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後ベンチャー企業に転進。経験を活かし、あらゆる改革・企画・管理業務を担い、業績拡大を支えつつ、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT・ライフサイエンス系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革にあたる。
 
FRI公式ツイッター(筆者が主担当です)
筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」

 

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