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「軸」を定める ~課題遂行における本質とは~

2008年5月31日 by 理事長 清水 知輝   

理事長 清水 知輝

私が仕事を進める上で、徹底している事がある。
これを守らない場合、私がその仕事を見ている場合は、決して許さないし、経験上、これを飛ばして仕事が上手くいったケースは、一部の運が良かった場合を除いて、非常に稀である。
だからこそ、徹底しているのであるが、これを徹底することで、どれだけ様々な障害に合おうとも、仕事は比較的順調に進む。


それは、『「軸」を定める』という事である。

仕事には、大きく
・方針(軸)を定める
・方針に沿って、詳細な実行手順を決める
・手順に従って実行する
と3つ程度に分類される。

これは私の個人的な意見であるが、一般的に優秀(有名大学を出ていて偏差値が高い)な人は、詳細な実行手順を決める事に注力し、頭より手足を動かす事だ!というような体育会系の人は、実行する部分に注力するように感じる。
どちらが良いという事ではないが、どちらも最初の「方針(軸)を定める」部分が、軽んじられがちである。

確かに、仕事をする上で、方針というものは無くとも進められるのは事実である。
しかし、案を練ったり実行して汗をかくことはできても、結果的に成果に繋がらない事が多い。
「失敗も経験のうち!」とも言えるかもしれないが、それは、多くのケースで成功できる場合に限られるし、失敗と言っても、大成功に終わらなかった場合に言うセリフであろう。
実は、本気で成果を求めるのであれば、この「方針(軸)を定める」ことが、最も重要なのである。

先日もこんな事があった。
あるイベントのオープニングについて話していたのだが、担当から「オープニングなので短時間で終わらせる事が第一なので、使用する音楽は短時間に編集できているものにしたい」という話があった。
一見すると筋が通っているように感じるが、そこで「オープニングって何のためにするの?」と聞くと、返ってきた言葉が「スムーズに司会に繋ぐために、注目を集めるため」であった。
私はすかさず、「そうであれば、一言で注目を集められるから、オープニングに音楽を流すのは止めたら?」と返した。なぜなら、注目を集めるためだけにやるのは、費用対効果が悪すぎるし、短時間で終わらせるものの究極は、「やらない」という事であるからだ。その方向で最善を尽くせば、当然、やらない判断も出てくる。
それに対して、担当者は色々と理由を並べて話したのであるが、聞けば聞くほど、オープニングに何かをする必要性を感じなかった。
私は、それに対し、「軸は大きく2つ。イベントに集まった人にイベントの目的を伝える事に注力するか、集まった人の負荷を考えて取り止めることも含めて最小化するか、どちらかじゃない?」と指摘した。つまり、「何の為に」を明確にして、詳細な実行手順は、それに即した形で徹底して考え抜く、という事である。
「短時間で終わらせる」というのは、あくまで実行手順の話であり、それより前に、方針を定めないから、議論が行ったり来たりするのだ。
結論は担当者に任せたが、シンプルに考えれば一気に片が付く事を、ああでもない、こうでもない、と数時間かけて議論しているのだから、仕事の効率が悪くて仕方が無い。

こう聞くと、笑い話のようだが、皆さんの周りでも、このような事が起きていないだろうか?
私がコンサルティングに入ったり、ベンチャー企業で経験したケースの多くが、この「軸が定まっていない」事によって、時間と人をムダに浪費していた。
酷いケースでは、「方針を提案して欲しい」と顧客企業から頼まれる事も多く、提案した方針についても意思決定できない、という事も多々あった。そういう場合、過去に同じようなプロジェクトやタスクフォース、検討委員会が設定され、提言内容もバラバラで、結果的に何も実行されず、現場はプロジェクト疲れを起こしている。なぜなら、方針が不明瞭であるにも関わらず、具体的な実行策を求められて、「これは難しい」と却下されたり、突然方針が変わって努力がパーになったり、方針自体を提案しても、上の会議で決まりきらずお蔵入りになったりしているからである。

私は、複数の仕事を抱えても、ある程度業務を進められるが、それもこの「軸を定める」事をどれだけ最初に労力をかけても徹底するからである。逆に、これが出来ない場合は、失敗を覚悟して進めなければならず、そういう場合は、エマージェンシープランを練りながら進めたりもする。

詳細は、その場その場の環境変化で、当然ながら変わってくる。なので、逆に柔軟性がある方が良い。
しかし、だからこそ、方針が定まってなければならない。
「五重塔」が地震で倒壊しないのは、「心柱」という中央構造体を持ち、それ以外の部分を揺らす事で、ある意味、免震的効果を生み出す効果によるらしい。つまり、芯をしっかりと持ち、他に遊びを持たせる事で、地震に対する柔軟性を生み出している。
仕事における「方針(軸)」と「実行手順」はこれに似た関係にあると言って良いだろう。
「方針」が定まらなければ、「実行手順」がどれだけしっかりしていても、成功はおぼつかない。環境変化に耐えうるには、「方針(軸)」が定まっている事が必須なのである。

私は、方針を定められない事を会社のせいにする管理職を多く見てきた。しかし、本当に方針を定める事が、そんなに難しい事なのだろうか。
私はそうは思えない。
適切な訓練と経験を積めば、方針を幾つかに絞込み、決定するための要素を洗い出す事は、それほど難しい事ではない。もちろん、学習しなければ、身につかない事ではあるのだが…。
そして、確かに大変ではあるが、定める事によって得られる成果は、それを超えて何倍もあるものだから、チャレンジすべき格好の対象と考えるべきであろう。

私個人の意見を言わせて貰えれば、この仕事を完遂するために学ばない管理職などのリーダーの役割を持った人間は、サボっているの一言に尽きるし、そんな人間はリーダー格のポジションにいるべきではない。なぜなら、その組織にいる人達を、人として不幸にしてしまうからだ。

皆さんの仕事の仕方は、本当にいつも目的を見据えられているだろうか。
改めて、自分や自分の周りを見渡してみて欲しい。
青い鳥を追うのも良いが、ある意味、直ぐそばにフロンティアがあるのかもしれないのだから。


◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates 理事長。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後、自らの関わり方に疑問を持ちベンチャー企業に転進。経験を活かし、経営企画・事業企画・商品企画・営業企画など様々な企画業務、数十名規模のライン管理職、業務・会計・人事などの各種改革業務などを担い、業績拡大を支える。また、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに責任者として従事する。実践的なアプローチにより実績多数。現在はIT・ライフサイエンス系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革、大手企業の機構改革などにあたる。
 
FRI公式ツイッター(筆者が主担当です)
筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」(本稿は個人ブログより転載)

 

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