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部下の叱り方

2007年8月29日 by 創設者 河合 拓   

創設者 河合 拓

ある雑誌で部下の叱り方、という特集をやっていた。
なんでも部下にたいして叱れない上司が増えてきているらしい。その記事には、最近転職してきた上司が部下の怠慢に対して注意をしたところ、その部下がすぐに辞めてしまい、次はまったく叱らなかったら仕事がどんどん滞ってしまったと書かれている。最近はビジネスセミナーなどで「部下の叱り方講習会」というものがあるらしい。

 私は読んでいて呆れてしまった。これこそまさに目的と手段のはきちがい、典型的な日本人ビジネスマンが陥る発想だと思う。


 部下に対する怒り方など勉強する暇があれば、上司は自分の仕事の能力を高めるべきだ。怒られて嫌な気持ちになる部下は、上司の怒り方にテクニックがないから、ではなく、怒る上司の能力が低いことを見切っているからである。人は自分よりも能力が低い人間から注意をされたり怒られると無性に反発したくなるものだ。「なんで、こんなやつに言われなければならないのだ」という感じだろう。逆に言えば、能力もがないのに上司になった人間が多いということではないか。そこが問題だと思う。


 人は自分の間違いを論理的、合理的に「しかるべき人」(能力的にも、役職的にも)から指摘されることに対してそれほど嫌悪感を抱くものではない。もちろん人にもよるだろうが、かえって喜ばれるぐらいだ。実際に、成功したという人の話を聞いていると若い頃は血管が破裂するぐらいに部下に対して厳しく当たった、と書いている。私も事業会社にいたときに超有能な上司に木っ端みじんに怒鳴られたが、すべて良い思い出だ。逆に、能力のない人間からトンチンカンな指摘をされたことを思い出すと、今思い出しても虫づが走るぐらい気分が悪くなる。そういうことなのだ。


 呆れたのが、「3回褒めて、1度怒ろう」とか、「まずは相手の気持ちになって考えよう」とか、HOWが山のように書かれていることだった。正直に言わせて貰えば、能力のない人間から3回褒められて、1度叱られても気持ち悪くなるだけだ。HOWよりもWHATである。


 「怒る」というのは自分の中に「軸がある」ということである。軸というのは、ここまでは許せるが、ここを超えたら許せないという許容範囲に対して自分なりの明確な定義、境界線を持っているということだ。だから、その境界線を越えたときは沸々と怒りがこみ上げてくる。それは、そのまま「自分でものごとを判断できる」ということと等しい。つまり、「部下に対して怒る」ということはマネージャーとして有している当然の態度なのだ。


 しかし、自分の軸さえない。遅刻をするとか、仕事中サボっているとか、そういう「万人が怒らなければならないと思っていること」にしか反応できないマネージャーはWHATがないからHOWを学ぼうとする。私などは、場合によっては遅刻だってよいし、仕事中にサボっても全く気にならない。遅刻をしてはいけないのは、その時間軸に他人が絡んでいるとき、仕事をさぼっていけないのは人の話を聞いているときだけで、すべて「第三者が絡んでいるとき」だけだ。あとはアウトプットが期日通りに期待された品質ででてくればよいと思う。しかし、それを杓子定規に判断し、とにかく9時に席に座っていないから、とか、仕事中の態度が悪いから、などという理由で怒るマネージャーなどは、「自分の判断軸がない」場合が多い、または、合理的に説明できない自分の価値観を人に押しつけている場合が多いのだ。


 怒られる側の立場から論じよう。私は、怒られて辞めるのであれば追いかける必要はないと思う。辞めて貰えばよい。若い人はすぐにやめるから、なかなか怒れないなどという理由で、「すぐに辞めそうな若者」を引き留めるのは本末転倒だ。そんなことをしたら、組織には甘えと不合理が蔓延してしまう。そんな心配をするよりも、日頃から属人的な業務の標準化を行い、仕事のスキルを個人力から組織力、チームプレイに昇華させ、誰もが誰もの代わりができる組織を作る努力をすべきである。また、加えて言うなら、新人の一人や二人などいつでも集められるぐらい魅力的な組織にすればよい。特に、新人から見て魅力的に見える組織というのは、しっかりとしたヴィジョンを持ち、社会的にも倫理上も正しいと思うことをやっている会社、そして、夢を語れるトップがいる会社である。別に大企業でなければならないということはないと思う。そういう組織を運営していれば新人など引く手あまただ。ちょっと注意したぐらいで辞める新人の代わりなど山のようにいる。


 まとめると、この問題はすべて「組織のあり方」にその根本原因が起因しているのだ。セミナーで「3回褒めて1回怒る」などというHOW論を一生懸命ノートに書き写している上司に人は集まらないし、コミュニケーションはできないだろう

* この文章は河合拓の個人ブログ 「事業再生コンサルタント河合拓の視点」の過去のものから抜粋しています


もっと読みたい方は→FRI Magazine: http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html


【著者】
河合 拓 (かわい たく)
経営コンサルタント 広く流通、小売業界に対して事業の立て直し、組織改革などを行っている。得意領域はマーケティング、事業戦略、生産性向上、営業改革、ナレッジマネジメント導入など。手がけた企業は国内外の大手上場企業。製造業、IT 企業、総合商社、流通企業など。赤字の上場企業を半年で黒字化させるなど、過去5社の立て直しを行いすべて成功裏に終わっている。
NPO法人FRIの設立者(現在はシニアアドバイザー) 自民党への政策提言、私立大学と大手商社と産学協同ブランド開発プロジェクト、大学生向け就職支援、中小企業向けコンサルティングなどを行っている。


ベンチャー事業会社経営顧問(社長付け経営戦略アドバイザー)グローバルに展開するアパレル企画会社の社長直属の戦略アドバイザーを務め、アジアに展開するブランド戦略に関する立案を支援している。また、公開企業のコンサルティング事業部、部長代行も勤める。


(講演、執筆)
繊研新聞 (全国紙)
「間違いらだけのQR」「ファッション業界は08年に起きる地殻変動に備えよ」連載
チェーンストアエイジ 「キャッシュフロー経営」
大手都銀向けビジネス雑誌寄稿
大手製造業向けビジネスマガジン寄稿
政策学校一新塾 (大前研一設立) 講師
「ロジカルシンキングと会議の設定」
「仮説構築と情報収集、分析の技術」
「プロジェクトマネジメント」
「モチベーションマネジメント」

 

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