マネジメント力4 『欠かせないゴール設定のあり方とは』

スポーツを観ていると、自分がやっていたら尚更だが、やっていなくても、他人事であるにも関わらず、なぜか非常に盛り上がりやすい。しかし、仕事となると、そうとは言えない。頑張ろう、と言う人もいれば、生きるために働く、と言う人もいる。他人の手伝いをしない人もいる。その結果、チームとして成果がなかなか出ない。これはなぜだろうか。
【ゴールを決める】
スポーツは、一部の例外を除き、基本的に単純である。
何が単純であるかと言えば、ルールなどではない。勿論、社会と異なり、明確なルールがあるというのは考える上で楽である。
しかし、もっと単純なのは、「相手に勝つ」事がスポーツの基本原理であり、それは誰が見ても明らか、という点だ。
そこをベースに、使う道具や環境、ルールなどを変えているだけである。
つまり、人は自身にとって「わかりやすい」ほど、盛り上がり、やる気を出すのである。
仕事でも、事務仕事ではなく、イベントのようなものも盛り上がりやすいのは、この影響が大きい。誰かが考えなくとも、どうすべきかがわかりやすいのである。
マネジメントを担う者は、組織、すなわち「人」の集合体を見なければならない。組織が力を出すためには、個々人が同じ方向を向いてやる気を出す環境を作り上げなくてはならないのだ。
そうであるなら、この根本原理を把握しておく必要がある。
【何をすべきかわかっているか】
いまいち成果が出ない組織の場合、大抵、「何をしていますか?」と聞くと答えは返ってくるが、「何のためにしているんですか?」と聞くと、まともな答えが返ってこない。
もし、あなたの周りに、いや、自分が属する組織にそんなところがあれば、同じ質問をしてみると良い。
ほとんどの人が、「理由が必要ですか?」とか「上司に言われたから」とか「会社の業績のため」(まだマシであるが)、というようなトンチンカンな回答をするはずだ。
こんな状態で、「成果を出せ」と言われても、正直困るだろうし、成果を出せないのも当然だ。
ようは、「何をしたら成果になるか」という事が、全くわからないまま、仕事をしているのである。
これは、明らかに管理職の怠慢である。
こういう組織の管理職の決まり文句は、「会社に貢献できるよう自ら考え行動するように」というものだ。
あるいは、「社長方針(or経営計画)に沿って頑張るように」である。
これでは、ゴールもわからぬまま、「とにかく走れ」と言われて、どれだけ走ったら良いかわからないマラソンをし続けるようなものだ。
人は疲弊するし、本来のゴールとは反対方向に走る者が出てきても仕方がない。
管理職において、役職によって異なるが、会社や事業部の方針・目標に沿って、自らの部門のゴールを設定することが、最も重要な仕事の一つである。
ようは、部下達が、自分達はどこへ向かってどれだけ走れば良いのかを示してあげる事である。
それからわかる事は、もし、会社や事業部の方針・目標がトンチンカンなものであれば、「それでは部門方針・目標を立てられません」と具申しなくてはならない。
そうでなければ、自身が成果をあげる事もままならない。
ただ、私も前職のベンチャー企業では、会社の方針が「売上」だけで語られており、それを覆すことは出来なかった事はある。「売上至上主義の弊害~日本企業が陥る過ち~」でも触れたように「売上」だけの目標は、最も下策であるため、避けるべきであったが、変更しようとしない以上、仕方がない。
そこで、仕方がないので、自ら最適な目標を設定し、それを達成すれば、「売上」だけでなく「利益」にも貢献できる、というロジックを組んだ事がある。部下のモチベーションダウンは、自身の成果に跳ね返る。成果にこだわるなら、時には、ここまで踏み込んだ事をすべきだろう。
【目標をどう置くか】
では、どのように目標を設定すれば良いのだろうか。
例えば、「私の部署はゴールが明確な仕事ではなく、毎日似たような仕事をしている」という人もいるだろう。
しかし、そういったところでも、やはりゴールは設定しなければならない。そうでなければ、仕事が漫然としてきて、サービスレベルを高めるどころか、維持する事も難しくなってくる。
管理職はメンバーの努力に頼り切ってはならない。
では、どうすべきか。
ゴールを決めるということは、評価基準を明確化する、という事でもある。
つまり、日々の仕事であったり、半期・年間の施策などについて、評価基準を設定しておくのである。
評価基準とは、「何を」「どこまで」やれば良いのかを明確化する、という事だ。
例えば、半期や年間の施策として、「業務の可視化・標準化」をあげて、○月までにマニュアル化に取り組む、というような、プロジェクト型の仕事を設定してみたり、日ごろのミス率について目標を設定し、ミス率を現状の20%以下に減らす、というような、日常における目標を設定しても良いだろう。
こうしておけば、もし達成しなくても、マニュアルは70%出来た、とか、ミス率は10%は改善した、とか、元の目標に対して達成度合いを評価もできるようになる。
具体的な方法論は、「シックスシグマ」などに詳しく載っているので、そちらを参照して貰いたいのだが、ようは部下が何を達成すれば良いのか、という評価基準を明らかにし、それを測定可能なものとしておく事で、初めて、何とか100%達成しようと皆が努力できるようになるということだ。
つまり、具体的な組織目標がないならば、当然、成果を確実に得ることは難しくなるということだ。
部下に元気がないから、飲み屋に連れてけば良いや、とか、全ては部下の気持ち次第、とか、とにかくコミュニケーションだ、とか思っている管理職の方は、直ぐにでも前近代的発想を捨て去るべきだろう。
そして、そんな上司がいたら、その人の下にいる事は考え直した方が良い。
それでは、最後にまとめよう。
組織が成果を達成するためには、まず、「どうすれば成果と見なされるのか」を明確にする事である。
業績が良い組織は、大抵において、KPI(評価基準)が明確で的を得ている。
管理職や経営企画などは、このKPIが如何にわかりやすく、かつ、会社の方向性と合致しているかに腐心すべきである。
この作業は、非常に時間も知的体力も使うハードなものだ。
しかし、これをやらなければ、組織が高い成果を出すことはかなわず、また、やっておけば、「成果」で報いられる事は確かと言える。
そして、これはどのような規模の組織にも成り立つ。
もし、数名のチームでもマネジメントするつもりであれば、ここは高い意識で臨んで貰いたい。
そして、最も大切なのは、それを決めるのは、リーダーであるあなた自身以外にはいない、という事だ。そこを強く意識して欲しい。
●「マネジメント力」強化シリーズ
マネジメント力1 『管理職における情報管理とは』
マネジメント力2 『役職に固執しない部下育成のあり方とは』
マネジメント力3 『公平なジャッジメントを行うために』
本コラムは、筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」を元に再構成したものです。
より詳しく知りたい方はこちらへ⇒ 筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」
◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後、自らの関わり方に疑問を持ちベンチャー企業に転進。経験を活かし、経営企画・事業企画・商品企画・営業企画など様々な企画業務、数十名規模のライン管理職、業務・会計・人事などの各種改革業務などを担い、業績拡大を支える。また、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに責任者として従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT・ライフサイエンス系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革、大手企業の機構改革などにあたる。
この記事の評価(平均点): 5/5 (これまで 4 人が評価しました)
FRIではご覧になった皆様の評価を常に大切にしています。良い評価も悪い評価も執筆者の大きな励みとなりますので、お気軽に☆マークをクリックしてこの記事を5段階で評価してください。




アドバイザー 河合 拓
スタッフ 木原 工
副理事長 三島 正寛
スタッフ 宮崎 善輝
