マネジメント力3 『公平なジャッジメントを行うために』

簡単ではあるが重要なマネジメントのポイントを挙げ、マネジメント力を高める参考にして貰おうと、「部下との情報連携」「権限委譲」(エンパワーメント)を中心に書いた。今回は、男性・女性に関わらず、「部下のマネジメント」などを中心に書きたい。
【公平たれ】
「公平」なマネジメントが組織活性において非常に重要である。これに異論を挟む人は少ないだろう。だが、「公平」とは何だろうか。「平等」や「均等」とは、明らかに異なる概念である。
言葉の意味の取りよう、という面はあるが、私は「公平」とは、主観が一定以上排除され、取り扱いに偏りがない状態、「平等」や「均等」とは、全てにおいて差がなく等しい事、を指すと考えている。
すなわち、「公平」とは、例えば、ゴルフのハンデ、のように、ある程度の差異を調整によって同一化し、同じ環境を作る事も含むため、結果に近いところまで等しい事を求める「平等」や「均等」と比べると、明らかに不平等と言えるかもしれない。
しかし、私はだからこそ、「公平」でなければならないと考える。
「公平」とはすなわち、スタートラインとコースに差が付かないようにするという事である。
例えば、陸上のトラック競技のように、誰が見ても、どのコースを走ったとしても、有利不利がほとんどない、という事がわかるようでなくてはならない。
確かに、中距離などで、インコースやアウトコースで得意・不得意はあるが、コース自体は整備されており、どこかのコース上に穴があったり、横の人から邪魔されたり、インコースの方が距離が短かったり、という事はあり得ないし、それは、選手にも観客にもわかる。
もし、この状態が守られず、例えば、インコースが一番距離が短い、となると、アウトコースになった人は、スタート前からやる気を失ってしまうだろう。
全員が、全力を出して競うためにも、競技が終わってから互いの成果を認め合うためにも、この「公平」さと言うのは、最低の条件なのである。
【異性のマネジメント】
女性のマネジメント、男性のマネジメントのどちらにも関わらず、異性のマネジメントというのは難しい。
なぜなら、多くの場合において、意識的か無意識的かは別として、この「公平」さが保てていないからである。
そのため、結果的に、マネジメントが難しくなるのだ。
例えば、よくあるのが、男性管理職が過去のやり方、すなわち、男性が総合職、女性が一般職だった時のままで、女性の部下(今は女性も戦力化している時代である)を取り扱い、部下から猛反発を受けて、管理職としての適正を問われる、というものである。
昔は、「女性は扱いにくいから」と言って、女性の部下が付く事を断る事も許されたが、今は、男女比からして断る事など不可能である。しかも、この傾向は、より明確になっていくだろう。
そうなると、互いにストレスがたまり、男性上司は女性の部下と直接話すのを避けたり、女性の部下は自律神経が失調気味になる。
私も、他の管理職がそういう状況を作るのを、比較的多くの比率で見てきた。
この時の一番の問題は、性差を最初から認めず、同じように扱う事である。
よく「給料など待遇が一緒なのだから、同じような条件でやって貰わなければ困る」と言って、女性を他の男性と同じように扱う管理者がいるが、その考え方自体が間違っている。
性別が違うというのは、遺伝子レベルから異なるわけで、極論を言えば異なる生き物である。それを全く同じに取り扱うのは、誤った平等であり、公平ではない。
女性と男性を比べれば、当然、力も体力も劣るし、声も小さいし、環境変化にも敏感である。男性にはない月ものもあるし、精神面も繊細である(最近は、男性の方が脆くなった感はあるが…)。
そこで、「男性と同じように急な残業にも答えて貰わないと」とか「営業は汗かいて外を回ってなんぼ」とか、男の基準を女性にも当てはめようとする事自体が無理というものだ。
実は、これにはカラクリがあって、本来であれば、上司が男女の性差を認め、得意不得意で分担を決め、力を発揮して貰う事で、組織全体の成果を高くもっていくのが、本来の務めである。しかし、出来ない管理者は、それが面倒だから、無理難題を押し付け、女性部下のせいにして逃げを図っているのである。
本来であれば、急な残業自体が発生しにくいようなマネジメントであるべきだし、発生しないように外部と上手くやり取りするのも管理者の務めである。営業でも、コミュニケーションや丁寧なフォローが得意な女性は、内勤営業として、テレアポやファーストアプローチ以降の対応を任せる等の役割分担をはかるべきであろう。
勿論、個々人で差異があるので、最終的にはそこまで見なければならないが、そこまでして、全ての人が働きやすい環境を生み出す事が、本当の意味での「公平」な環境なのである。
管理者は、これを肝に銘じて貰いたい。
では、その逆のパターンはどうだろうか。
女性の管理者のよくある過ちは、判断において感情を優先してしまう事である。
男性は、良いか悪いかは別として、筋を通したがる生き物である。つまり、手順を何よりも大切にするのである。
しかし、女性は、感覚を重要視し、共感を主とする生き物であるため、ここが最もマッチしない。
女性同士は、「あれって良いよね」という感覚的な言葉だけでも、会話が成立しがちである。これは、感覚による判断に加え、相手の判断を尊重し共感する事を重視するからである。
しかし、男性は感性の部分が女性よりも弱いため、非常に具体性を求める。仕事でも、具体的にどうなるか、その手順はどうか、と評価のポイントを必ず確認したがる。
その感情を無視して、「自分が良いと思ったからやりなさい」というような態度や指示出しをしたら、男性の部下は何となく引き下がるものの、確実にパフォーマンスしなくなる。
では、どうすべきかと言えば、これも男性管理者と同じであるが、原則は、強い立場の人が弱い立場に合わせるのである。つまり、男性の納得するやり方を学び、男性の部下に対しては気をつけて行うのである。
例えば、情報は公式の場で全員に伝達し、指示にはきちんと理由を説明する事を忘れない。また、個々の指示をばらばらその場の感覚で出すのではなく、全体像を提示し、それに沿った形で個々に支持をするように心掛けるのである。
これが出来れば、女性の部下との関係も良くなる事が多い。女性は、感覚を優先するが故に、合わない人とは女性であっても合わず、比較的それをハッキリと意思表示する。そのため、あまり管理者が感覚であたると、「好き嫌い」の判断をさせてしまうため、一度、「合わない」となると、上司と部下、の関係よりもそれが優先されるのだ。
だからこそ、基本はビジネスライクとし、一部を女性同士としての付き合いとした方が良いのである。
ある意味、これも、全ての人を「公平」に扱う事の副産物といえよう。
【デキる部下は特別に扱っても良い】
では、デキる部下もデキない部下も、同じように扱わなければいけないのだろうか。
実は、同じように扱う事は、「公平」の原則から外れる。
例えば、デキない部下は、どこがデキないのかを明確に指摘し、そこが改善されるように仕向けたり、改善の過程においては、失敗する事も視野に入れて仕事を与えなければならない。
デキる部下については、成果を挙げて経験を積むための仕事を任せたり、もう少しストレッチ出来るような仕事や自分の持っている仕事を与える事で、更に伸ばす事を目的にせねばならない。
そうなれば、当然ながら同じように扱ってはいけない事がわかる。
ただ、このどちらも、「成長し成果を挙げる」という意味では、「公平」に扱っている。
レベルに合わせて仕事を配分するのも、上司の重要な仕事である。
男女のケースと同じく、異なる立場でも成果を挙げる環境として、同じようにしなければならないのだ。
但し、これには条件があって、「どういう事ができれば高く評価するか」という基準を最初から明確にしておく事と、デキると評価した人は「具体的にどこが出来ているか」を示せなければならない。
そうなれば、その基準で見比べ、自分が劣っていれば、誰も文句を言わないだろうし、前向きな人間なら、頑張ろう、と思うはずである。
そういう「公平」な環境は、常に意識して作っていかねばならないのである。
最後にまとめよう。
「公平」とは「平等」や「均等」とは異なる概念である。
全ての人を等しく扱うのではなく、その立場や現状に合わせ、対応を変えていくことで、成果を挙げる、評価をする、という面において、同じように努力できる環境を作る、という事である。
そういう意味合いで言えば、「不平等」な扱いも恐れてはいけないし、個人に合わせて変化させる事も厭うてはならない。
但し、企業における「公平」性の軸は、「成果」を挙げ「評価」を受ける事で、個人が意義を持てる事であり、そこには徹底してこだわらなければならないのである。
結局のところ、個々人に合わせた形で対応せねばならない。
それが出来ない限り、デキる上司にはなれないのである。上司とは本来、職位が上がれば上がるほど、大変なものなのだ。
●「マネジメント力」強化シリーズ
マネジメント力1 『管理職における情報管理とは』
マネジメント力2 『役職に固執しない部下育成のあり方とは』
マネジメント力4 『欠かせないゴール設定のあり方とは』
本コラムは、筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」を元に再構成したものです。
より詳しく知りたい方はこちらへ⇒ 筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」
◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後、自らの関わり方に疑問を持ちベンチャー企業に転進。経験を活かし、経営企画・事業企画・商品企画・営業企画など様々な企画業務、数十名規模のライン管理職、業務・会計・人事などの各種改革業務などを担い、業績拡大を支える。また、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに責任者として従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革、大手企業の機構改革などにあたる。
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