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マネジメント力2 『役職に固執しない部下育成のあり方とは』

2007年7月 6日 by 理事長 清水 知輝   ブックマークに追加する

理事長 清水 知輝

簡単ではあるが重要なマネジメントのポイントを挙げ、マネジメント力を高める参考にして貰おうと、前回は、「部下との情報連携」を中心に書いた。今回は、「権限委譲」(エンパワーメント)などを中心に書きたい。

【最初から去る事を考えよ】

管理職になったら直ぐに何を考えるか。私は、常に「自らがこのポジションから去るにはどうするか」という事を考えている。これは管理職以外でも言えるが、特に管理職は考えた方が良い。


皆さんの中には、「そんな無責任な」と思われる方もいるかもしれない。
しかし、私からすれば、これを考えない事こそ無責任であると思っている。なぜなら、「去る」事を常に考えておかないと、結果的に、管理職として大きな問題を抱えるからである。

つまり、こういった認識の違いが、大きな間違いの原因になっているのだ。

大半の人は、新しいポジションに就くと、その仕事を懸命にこなそうと努力する。
大抵は、使命感や(上司や部下などの)他者から認められたいという気持ちからで、それ自体は、前向きで良い場合が多い。
しかし、それがどういう結末を生むか、まで話が進むと、良いとは言えない結果になる場合も多いのだ。

1つは、仕事を懸命にこなそうとすればする程、結果的に、自らに余裕がなくなってくるケースである。
実際、管理職の仕事というのは見え難いので、部下からするとわかりにくいのであるが、その実、結構忙しい。

例えば、ミーティングも部の定例会以外にも、部を跨ぐ会議であったり、管理職のランク別会議であったり、経営クラスが気まぐれに開く会議に呼ばれたり、あるいは、部内外のリーダークラスの人に呼ばれての随時のミーティングだったりと、山のような会議に襲われる。
他にも評価のシーズンには、評価される側は真剣かもしれないが、あくまで直上司ともう1人か2人しかプロセス上に存在しないが、部下を多く持つと、部下1人1人手を抜かなければ、その量は生半可ではない。10名いれば、最低10回は面談を行い、評価を行い、二次評価者との打ち合わせを行うのである(これに加えて、自身の評価もある)。性質の悪い事に、それに来期部目標の設定などがセットでついてくるのだ。

これを上手く分散しながら進めず、最初から1人で上手にこなそうとすると、確実に時間はなくなる。
その結果、自身が常に(特に意思決定上の)ボトルネックとなり、管理する部署自体が機能不全に陥ってしまうのである。

もう1つは、認めて貰うべく努力し成果が出てきて、それが色々な面での評価に繋がるところまでは良いが、その評価に安心して、それにしがみ付いてしまうケースである。

人と言うのは、基本的に不安定な状況に置かれると、何とかそれを安定的な状況に持っていこうと努力し、不安定なままだと精神的にストレスがかかる生き物である。
特に、新しいことについては、安定化するかどうかすらわからないので、そのプレッシャーは想像以上のものである(生真面目な人ほど、その傾向が強い)。

そうなると、いったん安定フェーズに入った仕事を自らから手放す事を、必要以上に恐れるようになり、そこにしがみつく。しかも、安定フェーズに入るという事は、かなりの部分でオペレーション化しているという事であり、実施自体に、それ程、意思決定を伴わなくて良くなる。少なくとも、意思決定が必要なポイントは明確化してきているはずである。
その結果、意思決定が不要にも関わらず、自らの時間の大半をそれに費やすため、先ほどと同じく時間に余裕が出てこないばかりか、新しい事に挑戦するのを嫌がるようになってしまう。

どちらのパターンでも同じであるが、理由はどうあれ、管理者が実質的に上限を迎えてしまえば、その結果、現時点の状態が部署としての付加価値提供力の上限となってしまい、ある種の閉塞感が生まれる。
そのような部署から人材は育たないし、イノベーションは決して生まれない。

それに対する方策は、1つである。
最初にも述べたように、「自らがこのポジションから去る」方法を考える事である。

最初から「去る」事を前提にすると、当然ながら誰かにその仕事をやって貰わなければならない。
そして、ある程度のストレッチを含めてポジションに就くのであるから、自分の部下で直ぐに務まる者など基本的にはいない。すると、当然ながら、素養のある何人かを引き上げようと、育成や権限委譲など、努力しなければならない事に自然と気付き、実行しようとするのである。

他にも、自分が抱えてしまっている仕事は、他者に渡そうとすると、他者がわかる形にしなければならない。そうすると、仕事の可視化・標準化をはかろうとするようになるし、慣れてくると、最初からそれを含めて、仕事の構築をするのが癖付いてくる。

更に、それだけではなく、他にも様々な事を考えていかなければならない事に気が付くし、それを進めていけば、必ずその組織自体が良くなるのである。
部下も、仕事を任せて貰えるし、色々と教えて貰えるということで、自分の仕事で汲々としていて、部下は放置している上司よりも、俄然、やる気を出す事は間違いないだろう。

その結果、自身の成長できるばかりか、新しい事を考える余力が出てくる。
仕事に追われる日々から、仕事を追う日々に変わっていくのである。

上の立場から見れば、自らの仕事を今度はそういう人に任せて行こう、と考えるのは当然であろう。
しかも、任される仕事は、より責任ある立場や挑戦的な新しく大きな仕事になっていく。
こういった事を繰り返すとどうなるかはわかるだろう。
結果的に、その会社の生命線を握るような仕事ですら任されるような事になり、更に、それまでの仕事を部下に任せ、その部下が同じ事をする、という事になっていくのだ。
これが、どういう事を示すかは、多くを語らなくともわかって貰えると思う。


最後にまとめてみよう。
管理者として組織を上手く機能させ、成長させようと思うならば、「自らが去る」事を常に意識すべきである。
実際にそうするかどうかは別として、それを軸に全てを組み立てる結果、組織が成長し、自らももう一段階高いところを目指せるようになる。
仕事をこなす事を第一にし、自身がボトルネックになる事や、その後にポジションにしがみ付いて挑戦をやめる事は、部下から見ても良い上司ではないし、結果的に、自らに悪い結果しかもたらさない。
どのようなポジションでも仕事であっても、次を見定めて挑戦する事が、良い結果を導く、最良の方法に変わりはないのである。


●「マネジメント力」強化シリーズ
マネジメント力1 『管理職における情報管理とは』
マネジメント力3 『公平なジャッジメントを行うために』
マネジメント力4 『欠かせないゴール設定のあり方とは』

本コラムは、筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」を元に再構成したものです。
より詳しく知りたい方はこちらへ⇒ 筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」

◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後、自らの関わり方に疑問を持ちベンチャー企業に転進。経験を活かし、経営企画・事業企画・商品企画・営業企画など様々な企画業務、数十名規模のライン管理職、業務・会計・人事などの各種改革業務などを担い、業績拡大を支える。また、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに責任者として従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革、大手企業の機構改革などにあたる。

 

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