マネジメント力1 ~優れた上司とは~ 『管理職におけるビジネス社内情報管理術』

ニュースで、30代のうつ病が急増している、という話を聞いた。私もちょうど33歳になったが、確かに、回りの30代は上から下まで、いつも疲れた顔で仕事をしている人が多いように感じる。
その理由は、若手を含めたミドル(中間管理職)にかかる負荷の大きさが、過去とは比べ物にならない事が、1つの要因として挙げられる。ミドルにかかる期待と負荷は、日増しに増して来ているが、その反面、なかなかそれに答えられていない、という現状がある。特に30代は、就職氷河期と呼ばれ、企業が採用を抑えていた頃であり、企業内でもその負荷は最も高い層の1つと言える。
そこで、同じ30代の一員として、部長として数十名の管理経験と、NPOの代表としての経験を踏まえ、簡単ではあるが重要なマネジメントのポイントを挙げて行こうと思う。少しでも負荷軽減の一助になればと思う。
【情報は開示が原則】
「情報管理」と聞くと、セキュリティの話や情報量をどう捌くか、という話になりがちだが、まず、発信側の話をするならば、基本的に情報は「開示が原則」と覚えておくと良いだろう。
今の世の中、インサイダーのような法規制に絡むこと以外は、評価だろうが給与だろうが、本来的には隠して良い方向に動くことは何もない。もし、それが必要なのであれば、会社自体の仕組みや考え方が古いと言える。情報の流れを止めて良いことなど何もない。
また、大量の情報をどう捌くか、については、まず、情報のスリム化に取り組むべきだろう。
いかに大量の情報を捌くか、ではなく、「大量の情報を管理しなければいけない」という状況自体が問題なのだという認識を持つべきだ。
部屋の片づけと同じである。時々、情報の棚卸をして、さっさと捨てていく。あるいは、部下に渡していく。そうしないと、整理できずに効率ばかり悪くなるのは当然である。情報は開示して、抱え込まないことだ。一年後に数%の確率で使う情報を後生大事に抱えて、日々の作業効率を悪化させるよりも、一年後に情報を集めてまとめ、資料を作りなおす方が、総合的な時間は短くなるし、良いものに仕上がるものだ。二度もやりたくないのであれば、説明の手間をかけても、部下に引き継いでしまえば良い。
特に、情報は賞味期限があるものであり、鮮度の良い情報をどうやって入手するか、ということの方が重要なのである。
なので、今回は、情報をどう管理するか、というよりは、どの様にして管理すべき情報を得ていくか、というところに焦点を当てて進めたい。
【情報は自ら取れ】
ここ自体に問題があると思うが、ほとんどの企業において、管理職に昇進するのは、現場で実績をあげた人であることが多い。
本来、管理職も1つの職種である以上、管理職に対する適正、というものがあるものだが、現実はそうなっていない。問題発生の根本的原因の多くはここにあるのであるが、なってしまったものは仕方がないので、どう対処していくか考えてみよう。
現場で実績をあげるタイプは、大きく2種類に分かれており、一人でガンガン動いて自分の力のみで実績をあげる一匹狼タイプと、上手く上司を使って成果があがる環境を作るのが上手い環境派タイプになる。
どちらか一方という訳ではなく、これらの混合、という場合も多々あるが、どちらにせよ、そのスタイルから、2タイプ共に、管理職になった時に同じところで躓く事が多い。
それは、部下に対しての情報収集の考え方である。
一匹狼は情報を一人で握りたがるし、環境派は上には報告するがそれ以外について、特に何かする訳ではないことが多い。
そうなると、初めて部下を持ったとしても、一匹狼は、放置プレーになりがちだし、環境派は、上司(すなわち自分)には部下が報告するのが当然、と考えてしまう。
すなわち、共に、自ら部下から情報を集めよう、という意識が働かない。
しかし、自らがプレーヤーでいる事と、管理職との大きな違いの1つとして、「生きた情報」に接する機会の頻度、が挙げられ、当然ながら、管理職になった途端、情報が上手く手に入らなくなってくる。
こういった事を事前に理解し、その重要性に気付いていれば、自ら情報を集めようとなるのであるが、それに気付く人は少ない。
そうなると、昔のように情報が集まらず、過去の判断に頼りがちになってしまうばかりか、「ホウ・レン・ソウ」(報告・連絡・相談)が出来ていない、などと部下を叱咤してしまう。そうすれば、余計に相談などしにくくなるにも関わらずである。
【部門の壁を越える】
また、管理職の重要な仕事として、他部署との調整、というものがある。
これは面倒がられるのであるが、仕事を進める上で、非常に重要な役割を果たしている。なぜなら、1つの部署だけで仕事が完結することなどありえないからだ。特に、改革・改善業務などは、全体最適の観点が重要であるため、この傾向は強くなる。
しかし、前述のような管理者は、部下に対してと同じく、自ら動いて情報を取りにいくことなく、「横のつながり」が出来ていない、と他部署批判をしてしまったりする。
これ自体は間違いではないのだが、その責任の一部、あるいは多くは、動かない自分にある、という事を忘れてしまうのである。これは、昔、自分がよく動くタイプだった人に見られる。自分がやっていたのだから、人もやって当然、と思ってしまうのだ。
だが、そんな事を言っていては、結局のところ、仕事が進まなくなる。そして、結果的にプレッシャーが高まり、心理的負荷が増し、管理職になった途端、精神的に病む事になるのである。
本来であれば、こういった仕事のやり方は、上司から学び取るものであったし、教えてもくれた。しかし、上司も時間がないばかりか、近頃は、上司自体がこうしたやり方が身に付いていない事も多いようだ。
では、どうすべきか。
答えは簡単である。単に、どんな時でも、自らが動いて情報を取りに行くようにすれば良い。
「何で部下が報告すべきものを自分が」「他部署から言うべき内容だろう」と思うかもしれない。
そして、それはあながち間違えではないかもしれない。
しかし、同時に、そのままでは成果が出ない事は確かだ。
成果を出したいのであれば、自らが動き、情報を取りに行くべきだろう。
【情報格差は相手に合わせる】
そのようにして得た情報も含めて、管理職には様々な情報が集まる。
そして、多くの場合において、部下に渡す情報を選別し、これは渡さない方が良いんじゃないか、などと考えているだろう。
情報共有についての基本は、「情報格差を生んで良い事は何もない」である。
もちろん、インサイダーなどの法令上定められた事や人事相談など個人的な情報はその限りではないが、情報格差が管理職の特権などと思っていては、効率的な組織運営はできないと考えた方が良いだろう。
但し、情報の渡し方・渡す量のコントロールは、マネジメントにおいて重要だといえる。
それは、なぜか。
理由は簡単である。それは、人が理解しうる情報量は限界があるからだ。
つまり、理解力のある人には、どんどん情報を伝えていっても良いが、伝えられた直近の情報に左右されてしまったり、色んな事に手を出しすぎてなかなか成果に繋がらない人などには、伝える情報をコントロールしなければならない。
そうしなければ、逆に組織が回らなくなってくるのだ。
時々、相手の情報処理能力を嘆いたりバカにしたりする人がいるが、それで何か事態が良くなるか、と言えば、悪くはなっても良くなることはない。
そんな事を言っていても無駄だし、自分が周りに悪影響を及ぼす存在になっている、ということをわかるべきだろう。結局、仕事を進められなければ、自分や相手がどうであってもダメなのである。
しかし、それを除けば、情報は意志決定の源だ。情報量に振り回されない限り、多くて困る事はない。
上司だから知って良い、部下だから知らなくて良い、などという情報はないのである。
出来る限り、情報を共有し、パートナーとして動いて貰う。上司と部下の関係がそうなっていくように、マネージャーは考えるべきだろう。
最後にまとめてみよう。
情報は大量に抱えても意味はない。必要な情報を必要な時に必要なだけ持つ、ということが大切だ。
管理職になっても成果をあげるためには、自らが動いて「情報を取りに行く」という心掛けが重要である。簡単な事だと思うかもしれないが、自らがその立場にたつと、なぜか動けなくなる事が多い。
人間関係も動きづらい要因としてはあるかもしれないが、動かなければどうしようもない、という事を自覚し、積極的に動く事をお勧めする。
少なくとも、この事業環境下におけるスピード感の中、待っていれば必要な情報が必要なタイミングで上がってくるとは考えない事だ。必要と思う情報がありそうなところに取りに行くスタイルに早急に変えなければ、タイミングが確実に間に合ってこない。
情報を取りに行くようにすれば、また違った関係が築け、悩みのかなり部分が解決されることだろう。「情報は集まるところに更に集まる」というのは、全ての仕事と同様なのである。
そして、その得た情報を、可能な限り共有する事も大切だ。もう一つ付け加えれば、「情報は発信されるところに集まる」である。
「情報を取りに行く」「情報を発信する」のは、成果を挙げるには欠かせない要件である。これは、プレイヤーでもマネージャーでも関係ない。どんな立場にたっても、ここは忘れずに自ら動いていきたいものだ。
●「マネジメント力」強化シリーズ
マネジメント力2 ~優れた上司とは~ 『優れた部下育成のあり方とは』
マネジメント力3 ~優れた上司とは~ 『異性(男性・女性)の部下のマネジメント方法 』
マネジメント力4 ~優れた上司とは~ 『成果を出すためにどうすべきか』
◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後、自らの関わり方に疑問を持ちベンチャー企業に転進。経験を活かし、経営企画・事業企画・商品企画・営業企画など様々な企画業務、数十名規模のライン管理職、業務・会計・人事などの各種改革業務などを担い、業績拡大を支える。また、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに責任者として従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革、大手企業の機構改革などにあたる。
※FRI公式ツイッター(筆者が主担当です)
※筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」
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