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『朝青龍問題』に見る、マスコミ報道の論点整理力のなさ

2007年9月13日 by スタッフ   

 スタッフ

ここ何週間か、朝青龍問題が毎朝ワイドショーを騒がせている。朝青龍が仮病を使って巡業を休み、モンゴルに帰っていたことからはじまったこの騒動。正直、このニュースを見るたびに、「もういい加減、うんざり」という倦怠感に見舞われる。論点を整理せず、大したことでもないことを、「問題だ問題だ」と騒ぎ立てるのは、日本のマスコミの報道によく見られる傾向だ。そして、自ら報道を加熱させ、毎日毎日、さして意味のないことをさも意味ありげに報道しているのだ。
 
『朝青龍問題』は、一体何が問題なのだろうか?
そう聞かれてみなさんは、すぐにその問題点を指摘できるだろうか。朝青龍の問題を例に、論点を整理する力、問題を見抜く力を鍛える意識を皆さんには持ってもらいたい。
 

上記の質問に対して、皆さんはどう答えるだろうか? 毎日毎日加熱に報道されるこの朝青龍の問題は、そもそも何が問題で今回のような自体を引き起こしてしまったのだろうか?思うに、問題は下記の3つに整理されるのではないだろうか。
 

1.横綱としての朝青龍の未熟さ
まず第一にして最大の問題は、「朝青龍の未熟さ」だろう。今回の問題を引き起こした一番の問題はこれである。朝青龍は、横綱としての自覚がなく、プロの相撲取りとは言えなかったということだ。
 
そもそも、今回の騒動の発端は、朝青龍が仮病を使って巡業をズル休みしたことにある。確かに、朝青龍は強い。他の力士を寄せ付けず、連続優勝を続けるその能力については、疑う余地がない。しかし、横綱としての自覚という面ではどうだったのだろうか?果たしてその綱の重みと責任を十分に理解し、それを全うしていたと言えるだろうか?おそらく、「NO」である。毎日毎日血のにじむような練習を繰り返し、常に勝つことを求められ、勝って当然、負ければ厳しい批判を浴びせられる。そのプレッシャーはすさまじいものだったに違いない。ただ、それでもその重圧をはねのけ、強い横綱の姿を見せ続けるのが、真の横綱であり、プロフェッショナルというものではないだろうか?ましてや、巡業では各地の相撲ファンや子どもたちが朝青龍の姿を心待ちにして、待っているのである。その人たちに強い横綱の姿を間近で見させるのが横綱の役目であろう。その責任の重さを自覚できていなかった朝青龍は、やはり「未熟」であったと言わざるを得ないだろう。
 
 
2.高砂親方の指導力不足
第二の問題は、親方である高砂親方の指導力不足だ。そもそも、相撲とは「心技体」をモットーとするスポーツである。確かに朝青龍は、「技」と「体」は申し分なくあった。ただ、「心」の部分についてはどうだろうか?決して十分だったとは言えないはずである。それを指導するのは、指導者である高砂親方の役目である。
 
高校野球の場合を考えてもらいたい、もしここに天才野球少年がいたとする。彼はピッチャーとしての才能が抜群で、投げれば三振の山を築く。一方、バッティングセンスもすさまじいものがあり、打ては長打やホームランのオンパレード。ピッチャーで4番で大活躍する人材だ。ただ、彼には性格面で大きな問題があった。自分の才能を鼻にかけ、他のチームメンバーを雑魚呼ばわりし、彼らとは交わろうとせず、自分ひとりで試合に勝てると思い込んでいた。確かに彼を使い続けていれば連戦連勝で、甲子園制覇も夢ではない。もし皆さんが彼のチームの監督だったとしたら、どうだろうか?彼をそのまま好きなようにさせておいて、使い続けるだろうか?
 
きっとそんな人はいないはずだ。野球では、もちろん勝つことも重要だが、人の心の育成や人格教育もそれ以上に大切なことである。彼のその態度を叱り、考え方を改めること、もしかりに直らないようであれば、彼を試合に出さずそれで負けてしまったとしても良しとする。そこまで徹底した哲学を持って人の指導に当たるというのが本来の指導者の姿であろう。
 
高砂親方の姿勢には、そのような指導者の姿は全く垣間見られない。自分の常日頃の指導力不足を棚に挙げ、「朝青龍の病状は重く、可哀相だ」と言う始末である。確かに、こんな指導者に指導されていた朝青龍は可哀相だ。朝青龍の未熟さの問題は、指導者の問題であろう。
 
 
3.相撲協会の無責任体質
最後の問題は、相撲協会の無責任さである。そもそも、横綱とは「心技体」の本当に横綱にふさわしい人材にのみ与えられるものではないのだろうか?にもかかわらず、横綱としての自覚のかけらも感じられず、仮病が発覚して批判の的にさらされたらそのプレッシャーに押しつぶされてうつ病になってしまうような力士を選んだ相撲協会には大きな問題があると言わざるを得ない。横綱とは、それだけの格式を持った地位であり、だからこそ任命にあれだけの労力と時間がかけられるのではないだろうか?
 
今回の件に対する相撲協会の対応を見ていると、協会の責任についての自覚は一切なく、さも全ての責任は朝青龍自身とその親方にあるといった無責任な態度は問題であろう。朝青龍を横綱に任命した協会自身の問題を素直に認め、横綱の任命のプロセスや方法に課題は無かったのかを見直し、同じ過ちを起こさないように事前に対策を取ることが本来協会のあるべき姿ではないだろうか?問題を自分以外のところに帰属させ、自分たちは何もかわらない協会に、官僚化し、硬直化してしまった組織の姿を見るのは私だけだろうか?
 

【情報を鵜呑みにせず、論理力を鍛えよう】
以上、一連の朝青龍問題について、私なりに問題点を分析してまとめてみた。本稿の趣旨は、決して、自分の主張の正しさや分析力を見せびらかすことではない。毎日我々の耳に入ってくる情報について、「その何が問題で、論点は何なのか?」ということを常日頃から鍛えて欲しいということである。

日本のテレビの報道には、論点が明確化されておらず、何を伝えたいのか分からないまま、とにかく情報が垂れ流されているということがよくある。それらを、自分なりに整理し、まとめないまま、素直にそれらを受け入れていると、我々の論理力や考える力は衰えていく一方である。これはとても危険なことだ。テレビの報道に限らず、常日頃から問題意識を持って、論理力を鍛えてもらいたい。


◆著者紹介
三島 正寛 (みしま まさひろ)
総合電機メーカーにて営業企画を経験後、企画部門のあり方に限界を感じ、自ら志願して現場の営業に異動。新規商品の事業拡大・販路開拓の営業に従事。2年間で多大な実績を残し、事業拡大に大きく貢献する。
現在、FRIの副代表理事。FRIがNPO法人化する以前から組織の運営参画し、早4年になる。今後、ますますFRIという組織を拡大・成長させるために代表の清水とともに日々奮闘中。

 

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