セカンドライフの今後を占う

本稿では、近年着目を浴びている「セカンドライフ」に注目し、特に議論されている「不動産経営」について私見を述べたい。
1)セカンドライフとは
皆さんは、セカンドライフはすでにやっているだろうか。FRIのブログを読まれている皆さんは、比較的先端的なものを得意とされている方が多いと思うのですでにやられていると思うが一応説明をする。セカンドライフとは、2007年7月現在において世界的なデファクトスタンダードとなっているネット上の仮想社会の一つである。ざっくりとしたイメージは、現実の社会体験を目的としたネットゲームといえる。ネットゲームのようであるが、ファンタジーの要素、敵とのバトル、自分のレベルアップなどが無く、制作側が設定する目的は無い。アバターが出来る行動は主に、「歩く」、「被服を着用する」、「体を動かす」等でありコミカルな動きは出来るものの、魔法や武器で戦う等は無い。10年前くらいに、ソニーが「さぱり」という同様のネット環境チャットソフトを提供していた。一部のマニアには知られていたが、ほとんど利用されず2003年頃に無くなってしまった。基本的なコンセプトはこれに非常に近い。
主な利用者は、一般のユーザーおよび企業である。一般のユーザーは、自分のアバターをセカンドライフ内に作成し、アバターを自分の化身としてとらえ、仮想空間内で散歩、洋服の着用、社交場での他の利用者との会話等を行うものである。一方企業は、セカンドライフ内の土地所有権者との契約の上、仮想店舗を作成する。この店舗は、セカンドライフ内でものやサービスを販売することが出来る。このようにセカンドライフは、利用者だけではなく、企業が参加することで、実社会に似せたリアリティーを高めている。これによりセカンドライフは、他のネットゲームと比して、きわめて実社会との整合性が高いものとなっている。
セカンドライフは、不動産経営が可能と言われている。セカンドライフ内に出店したい企業は、セカンドライフの販売元である「リンデンリサーチ社」から直接土地を購入するか、直接土地を購入した企業から地上利用権を取得することのいずれかを選択することになる。この売買は、セカンドライフ内の通貨である「リンデンドル」ではなく、実社会の貨幣により行われることもあるようである。そのため不動産経営で実社会の貨幣を取得することも可能である。
2)セカンドライフの不動産の特徴
セカンドライフの不動産の特徴として主なものには、「①土地の数が無限である」「②物理的近接性の概念がない」「③エリアマネジメントにより人気地とすることが容易」「④人気地の先行取得による高値転売が出来ない」等がある。いかにそれぞれ解説する。
①土地の数が無限である
現実の社会は、土地が有限である。日本では38万k㎡しか無く、当然のことながらそれ以上の開発が出来ない。セカンドライフ内の土地も現在は有限となっている。しかしセカンドライフの土地は、提供側の意図次第では、無限に増やすことも可能である。この点でセカンドライフは、土地の限定性がないといえる。このため土地を速く取得すれば地勢的に良いところを購入できるというインセンティブが全く働かないものとなっている。
②物理的近接性の概念がない
現実の社会は、地続きである。東京から大阪に行くには、新幹線で2時間30分かかる。しかしセカンドライフは一瞬でテレポート出来る。そのため、セカンドライフ内の移動コストは0である。このためアクセス量は、人気地に近接しているため有利であるとか不利であるということはなく、その土地自身が人気であるか否かで決まるものとなっている。そのため人気のエリアのそばに土地を購入し、転売すると言うことは難しいといえる。
③エリアマネジメントにより人気地とすることが容易
セカンドライフ内で不動産で儲かるという視点は、このエリアマネジメントの概念が全てであろう。エリアマネジメントとは、ざっくり言うと大型商業施設や商店街の運営者が、セールを開催したり、集客イベントとしてインストアライブを実施したり、施策を展開することで、施設全体の付加価値を高める手法である。セカンドライフのアクセス量は、その地域内のコンテンツの質により決まり、前出の移動コストがかからない概念のため、地域間の移動が容易であり、特定の人気の場所に多くの人間が集中的に集まるものになると考えられる。このためエリアの付加価値を高めることは、集客に繋がり、転売や底地人としての賃貸の価格を上昇させることが可能である。よって不動産経営で儲かるには、ディベロッパーの手法を活用することで可能であろう。
④人気地の先行取得による高値転売が出来ない
今後の利用者増加を見込んで、人気のエリアを先行取得し、利用者増加後に転売することを想定することは、難しい。実社会の不動産は、対象地近隣の人の流量が価格決定要因となっている。よって人気地の近接地は、人気地の人気上昇と共に人の流量が増加し、価格も上昇する。一方セカンドライフのエリアは、人気のエリアの近隣であっても、魅力がなければ、人気のエリアにアクセスしたものはすぐにワープし別のエリアに移ってしまい、人気地の近隣地を通ることが無くなる。このため人気地の近隣の土地価格は、上昇しにくいものと考えられる。
以上をまとめると、セカンドライフ内の不動産経営は、「エリアマネジメント」につきると思われる。地域の価値は、アクセス数に比例すると考えるならば、アクセス数を増やす施策を常に採り続ける必要があろう。これを長期的に続け、他の地域に負けない魅力を生み出し続ければ不動産経営も可能であるものと思われる。
3)インサイトの視点によるセカンドライフ
最後に本セカンドライフを実施した結果のインサイトによる洞察を重ねて本稿をまとめたい。
私は、セカンドライフに直感的な面白さやわくわく感を感じない。そもそも私は、ネットゲームに直感的な面白さやわくわく感を感じていない。ネットの社会で、お金を得たり、武器を得たり、チャットをしたりとアクティビティーとしていろいろできるが、それらを得たときに個人的には大きく感動したりはしない。セカンドライフ内にも、ダンスをしたり、椅子に座ったり、チャットしたりなどさまざまなアクティビティーが可能だが、それ自体に面白みやわくわくを感じない。
私は、現実の社会に面白みやわくわく感を感じる。ネットの使い方でも、ネットゲームなどより、グーグルのような調べ物サイト、ヤフーのような情報ポータルサイト、ネット証券での株取引や友人の開設した掲示板の閲覧を好んで利用する。これらをよく利用する理由は、現実社会にこれらのアクティビティーが還元されるためである。グーグルやヤフーでの調査結果は自分個人の知識となり、株の取引の結果は自分の資産形成となり、掲示板の閲覧は友人とのコミュニケーションとなる。
人間が新しいものに取り組むときのモチベーションの根源は、現実の人生で役に立つか否かだと思う。少々短絡的であるがざっくりと新しいものに取り組むときの感覚とは、「それを実行したら今後の人生に役立ちそう」など、将来の状況改善に期待するから取り組むものだと思う。プライベートにおいても、新聞を毎朝確認したり、ビジネス書を読んだりするのは、それ自身に快感を覚えないが将来の人生に役に立ちそうな観点から読んでいるといえる。仕事においても、自分の能力を少しエクステンションさせるものは、それ自身は辛いものの将来の能力を高めてくれそうな観点から取り組むであろう。これらの結果人生で役に立つ知見や能力が得られ、最終的には満足感をえる。
このように重ねて考えるとセカンドライフで楽しむには、「将来に役立ちそうな感覚」を見いだす必要がある。ゲームを体感した感想としては、将来役立つ知見が得られそうな感じはしなかった。今後コンテンツの整備如何では可能であるとは思うが、現状ではまだ難しいといえる。
以上本稿をまとめるとセカンドライフは、感覚的に面白みやわくわく感を得られにくい点で、まだ発展途上であるといえる。また理屈上不動産経営は「エリアマネジメント」が成熟することで可能であるものといえる。よって不動産経営の視点でセカンドライフに参入するのは若干時期尚早かと思われる。今は、純粋にセカンドライフが楽しめるコンテンツの方向性を見計らい、面白みやわくわく感を得られるようになった時点で不動産経営が本格的になるものと感じる。
この記事の評価(平均点): 3.6/5 (これまで 5 人が評価しました)
FRIではご覧になった皆様の評価を常に大切にしています。良い評価も悪い評価も執筆者の大きな励みとなりますので、お気軽に☆マークをクリックしてこの記事を5段階で評価してください。




アドバイザー 河合 拓
副理事長 三島 正寛
スタッフ 宮崎 善輝
理事長 清水 知輝
