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商業施設出店の今後を占う

2007年6月 5日 by スタッフ 木原 工   

スタッフ 木原 工

 近年、ロードサイドや、道路結節点に大型商業施設が多数見られる。私の住んでいる横浜市でも、「ららぽーと横浜」「イケア横浜」「ノースポート・モール」など3万㎡を超える施設がある。日々生活している中で私は、これらの施設が便利であると感じる反面、魅力に欠けると感じている。

本稿では、大規模商業施設に対する意見を3章に分けて触れてみたい。話の主題は、「近年大規模商業施設が見られるようになった背景」からはじめ、「大規模商業施設の功罪」と続け、最後に「これから求められる商業施設利用のスタイル」とする。


1)近年大規模商業施設が見られるようになった背景
 大規模商業施設が見られる様になったマクロ的背景を大局的に説明すると、1990年後半に日本は米国に小売市場開放を求められた。日本は市場開放に一定の抵抗をしたものの、改革の流れに押され、2000年に法規制を緩くし、郊外型大型ショッピングセンターが出店できるようになった。当時、カルフールやウォルマートなど欧米のショッピングセンターが郊外部に乱立したことは、記憶に新しい。それから7年が経ったが、欧米型のショッピングセンターは、日本の複雑な消費者心理をとらえられず撤退し、イオンやヨーカドー、その他三井不動産のような開発会社が郊外型のショッピングセンターを多数建設し、それなりの成功を収めている。


 なぜ成功したのかを消費者サイドから俯瞰的に見ると、大型ショッピングセンターが「日常の生活ではあるが、ちょっとした楽しめるお買い物が出来る空間」を提供できたため成功したのだと私は考える。主婦は、日常は、スーパーや薬局などでの日常消耗品の買い物と家族への世話に追われている。そのため主婦は、土日には、ちょっとした息抜きを求めている。旦那は、買い物のドライバーとなってくれる。そのため車で買い物に行けるところが妻と旦那の妥協点として浮かび上がっている。近年の主婦の財布のひもといえば、足下での景気の改善があるが、基本的には堅い。このように妻と旦那の行動範囲の中で予算制約戦を決めると、「日常生活+車+ちょっとだけ楽しめる」というものが妥協点となり、これらを満たすのが大規模商業施設となっている。マーケティングの成功のため意外に人を集めている。みなさんもイメージしてもらえるとわかるが、これらの施設は、奇抜なものはなく、男女ともにある程度楽しめるものが並んでいることに気がつくと思う。来ているお客さんもファミリー層が多く、みな楽しそうに土日を謳歌しているように見えるであろう。店舗がお客さまの心をつかんだため、集客が成功しているのである。


 私は、これらの施設を否定しないが、本当に顧客視点であるかについては、疑問を感じている。


2)大規模商業施設の功罪


 前投稿で書いたように大規模商業施設は、多くのファミリー層の消費需要をとらえており、商業上成功している。マクロ的な視点で見ると、地域の商業需要の取り合いに成功しているといえる。旧来の商業の中心地であった中心市街地は衰退し、一方で郊外の大規模商業施設が中心市街地で行われていた商需要を吸収し、順調な事業経営を行っている。この現象は、大規模商業施設が中心市街地の施設より質の高いサービスを提供した結果といえ、競争の結果の望ましい姿といえよう。


 一方で消費者サイドのからの視点で分析したい。前投稿でも述べたが消費者が「日常の生活+ちょっと良いもの」を求めているという大前提に私は疑問を持つ。なぜならば、本来ハレの場となりえる土日が日常生活に浸食されてしまっているといえるからである。本当は、「土日には日常とは異なる楽しい時間」を過ごしたいのでは無かろうかと私は考える。私は、土日には普段出来ないことをするように努めている。FRIなどで会社の仕事とは離れた環境で活動をするというのは、その一つであろう。家族形成層にとっても本音は、「日常とは異なるの楽しみがほしい」と思っているのだと、私は考える。土日に、ユニクロで洋服を買い、ヤマダ電気店で新しい家電を買い足し、成城石井でワインを買って帰るというのが、大規模商業施設が提案するライフスタイル(このライフスタイル自身は、良いと思っている。)だが、本来は、家族で普段で歩かない六本木や品川に出かけ、普段食べられないおいしいランチを食べ、高島屋や伊勢丹で買い物をして帰るというのが、良いのでは無かろうか。もちろん、遠出が疲れるなど大きな外出のデメリットもあるためトレードオフとなっているのはわかるが、刺激のあるライフスタイルを得るためには、やはり「非日常の体験」というのが重要であり、大規模商業施設が提供するそれなりの満足度は、本来の顧客の心を満たしていないのではないかと考えている。


3)これから求められる商業施設利用のスタイル


 最後に提案としては、「非日常を体験できる仕組みの提供」が重要だと主張したい。私は、月1回、半年に1回は、東京のデパートに買い物に出かけるライフスタイルを良しとする仕組みが必要だと感じる。イメージとしては、「土日に外出する」→「電車に乗る(このように電車で遠出をすることで、非日常感が出る)」→「質の高いイベントをこなす(例:六本木で観光、新宿高島屋や伊勢丹での買い物、品川のおしゃれなお店で食事)」→「帰路につく」という行動が必要だと考えている。


 このような主張を提案する背景として私は、「顧客はもっと質の高い欲求を持っている」と感じている。土日に遠出することを客観的に捉えると、「非日常を楽しめる」というプラス面と「疲れる・おっくうである」というマイナス面が、トレードオフの関係となっている。現在このプラスとマイナスの均衡点に「郊外型商業施設」が位置づけれれているといえる。ただし、このマイナス面を見ると、メンタルな要因が多く含まれていると感じている。現に自分の心に遠出を見合わせる理由を問い合わせてみると、「面倒」「欲求がない」「魅力を感じない」等の内在的な理由が主要因になっているように思える。このような非物理的要因により、商空間に対する要求水準はマイナス側に引っ張られていると感じる。よって私たちは、要求水準より低い商空間を享受していると考えられよう。これを克服するために、非日常の演出などでメンタル面によるマイナスを打ち消すことが必要だと考える。


 現に足下を見ると、20代の未婚女性の多くは、郊外に住んでいてもこだわりの商品の発掘や非日常の体験のため東京まで買い物に出かけている。また景気の回復もあり、個人消費の回復も続いているため、遠出のコストに対する拒絶感が和らいでいる。また東京では新しい商業施設の新規オープンが続き、どこも活況を示している。このような基調が続けば、土日の買い物需要は、大型商業施設から東京の商業施設へと潮流の変化が生まれると考えられる。


 以上3章に渡って書かせていただいたが、まとめると、「大規模商業施設がふえているが、私はその魅力提供は限定的に感じており、商業施設へのニーズのあり方の根本的な解決が求められている」と考えている。このような変化を通じることで、新しい時代にあった買い物空間が生まれる。


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木原 工 (きはら たくみ)

都市銀行勤務 地方銀行シンクタンクに新卒入社。地域経済・地域社会分析、地方公営企業経営コンサルティングを担当。その後、都市銀行に転職。不動産ユニットにて、不動産投資計画立案等を担当。専門分野は、都市計画、地域経済、地方行政等。

 

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