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AI時代の働き方改革2~効率化が進むのはドライバーよりも事務職の仕事~

2018年5月15日 by 理事長 清水 知輝   

理事長 清水 知輝

AIに仕事が奪われる。
そんなキーワードをよく見かけるが、産業の転換期においては、職を変えざるを得ない人が多数出るのは、歴史的に見ても、実はよくあることだ。
例えば、近い過去では、エネルギー資源が石炭から石油に移った時、日本ではほとんどの炭鉱が閉山されて、そこで働いていた労働者は、仕事を変えざるを得なくなった。海外では他の資源採掘の現場へと移っていったが、日本では移り先が少なかったことから社会問題化した。
実は、AIはそれくらいインパクトのある技術であり、同様の転換が必要になるだろう。
では、今の時代においては、どのようなことが予想されて、私達は何を考えていくべきなのだろうか。

 
【変化はゆっくりと確実に進む】
 
今回も、幾つかの仕事においては、過去と近いことが起こると予想されるが、労働力不足が言われる日本においては、世の中で言われるほど劇的にではなく、時間をかけて変化が進むと想定される。
 
例えば、AIと言えば自動運転の話が良く出てくる。
自動運転によって影響を大きく受けるのは、まず最初は地域公共交通や長距離トラックなどの輸送機関になるだろう。
しかし、この業界では、深刻な労働力不足に見舞われつつあるか、そもそも過疎地等で採算が合わないことで、事業者自体が少ない領域であるため、逆にその産業においては、AIは強力なツールとして機能するのではないだろうか。
 
実際、長距離トラックの労働環境は良いとは言えないし、過労による事故や病などが発生している。
ここを自動運転車が担えるようになれば、例えば、短距離かつ配送先が多い輸送に人を集中させて、長距離の拠点間は自動運転に任せる、と言った分業が可能になってくる。都市部での配送は、配送先で受け取り可能な時間帯になるので、夜間に働く人はかなり減るだろう。
 
また、自動運転バスなどは人件費がかからないので、運行のための採算ラインがかなり低くなり、過疎地では、特に山間部等を中心に、自動運転バスがコミュニティバスとして運行されるようになるだろう。それにより、過疎地での足が確保され、高齢者が無理に運転しなくなり、交通量も減って事故が大幅に減少するだろう。
場合によっては、自動運転車にコンビニ機能をつけることで、荷物の積み込みを都市部で行い、村落についてからはコミュニティ毎の管理者が運営する時間帯を限った移動コンビニの実現も夢ではない。移動中に人が介在せず、各コミュニティもその時間帯のみの受託業務とすれば、非常に低コストでの店舗運営が可能となる。
 
このように、初期に起きる変化は、どちらかと言うと、労働補完的に発生するため、確実ではあるが、ゆっくりと進むことが予想される。
業界的にも、大きな反発が発生しないように、細心の注意を払って進めていくだろう。
そのため、心配しているような社会的混乱は起きにくいと考えられるのだ。
 
しかし、このような始まりで自動運転技術が向上し、社会に受け入れられるようになると、都市部でのバスやタクシーが自動運転化するタイミングがどこかで来る。
実際、自動運転に任せた方が安全だ、というデータが積み上がってくることが予想される。台数が多いこともあるが、タクシーが事故を起こしたり、巻き込まれているシーンは良く見かける。人の視界や注意の限界よりも、AIとセンサーの限界の方が高いレベルにある以上、それは当然の結果だ。
交通事故の約9割が、人の注意不足かミスによるものだ、との調査もある。自動運転自体へのアレルギーがなくなれば、その安全性から一気に広まるだろう。
 
このタイミングが来ると、かなりのドライバーが仕事を変えざるを得なくなる。
それに向けて、若手については職業訓練や自動運転車を前提とした業務への転換、現時点で、一定の年齢に達している方は、業界による特定職種に対する年金上積みの検討など、将来の変化に備えた対応は必要となる。
 
 
【最も早く進むのは単純事務職の領域】
 
しかし、もっと早く幅広い影響が出る領域がある。
 
実は、AI化の影響が最も早く出るのは、単純な事務職の領域である。
 
業務改善の話でも触れたように、特に日本のホワイトカラーの業務効率は一向に上がっていない。
そのため、ここを何とかしたいと考えている経営層は非常に多い。
 
この領域で、近年非常に注目されているのが、RPA(Robotic Process Automation)である。
実は、AIとまで呼ばずとも、ちょっと気の利いたシステムというレベルであるが、それによる効率化力は非常に高いと言って良いため、これから10年はこのRPAによって、多くの事務業務が自動化の道を歩むだろう。
 
例えば、勤怠情報から給与計算を行ったり、経費をシステムに正しく登録・転記したり、個々の個別システムの情報を組み合わせて計算し、それを基幹業務システムに登録する、と言ったような、多くの事務職の人が行ってきた業務が、その対象となる。
これは、世の中の業務がクラウド化し、多くの仕事が一定のルール化で処理されるようになったことも、それを後押ししている。
 
私は過去に、大手企業の管理系職種の業務分類を行ったことがある。
その際、いわゆる本社管理部門を広くチェックしていったが、その半数以上が定型的業務になっており、毎回決まったことを正しく行う、と言う業務で占められていた。
このような仕事は、非常にシステムとの親和性が高いのであるが、個々の仕事は一人の人間が何種類も担当しているので、今まではシステム化コストの方が高くつくとして、その多くが人の手に残っていたのである。
 
しかしながら、こういった業務もRPAの発展と共に、一気にシステム化・自動化されていき、それを人が行う事はどんどん無くなっていくだろう。
これは夢物語でもなんでもなく、既に動き始めている事であり、先進的な企業では経理や契約関係等を中心に導入が始まって、コスト削減が進んでいるのである。
 
 
【仕事の仕方を変えられなければ淘汰される】
 
AIは、過去の大量のデータをもとに最適解を導く、というものであるという理解が適切である。
 
つまり、過去の事例やルールに沿って、正確に処理していく、という業務は、非常に得意である。
これをもっと単純化したのが、先ほどRPAであり、既にその部分は徐々にAIに置き換わり始めているのだ。
 
過去の事例やルールに沿って、正確に処理する。
この言葉を聞いて、一番そのような仕事をしているのはどこかと言えば、本社管理部門の事務担当者を思い出すのではなかろうか。
あるいは、契約や受発注と言った、営業部門の事務担当者を思い出さないだろうか。
そのイメージは、正しい。
 
いわゆる○○事務、という名前の仕事は、これから更に縮小されていくだろうし、今、それを担っている人達にも、仕事の仕方や内容の変更を迫ることになっていくのは明白だ。
しかも、その時になって、「この仕事しか出来ません」というような対応は通用しない。
 
今までは、特に日本はジョブディスクリプションが不明確が故に、管理系の事務業務は非効率なまま残されてきたところが多々あったが、具体的に○人日分の仕事が効率化された、というような形で転換が進む中では、今までシステム化を拒んできたような「この仕事は単純じゃない」「この部分が置き換わらないから効率化しない」などと言った言い訳は通用しなくなる。
 
なぜなら、AIの一部となるデジタルレイバー(システムを労働者と見立てた言葉)が、低コスト高品質に対応できるからであり、もはや石炭から石油にエネルギー資源が変わった時の炭鉱労働者のように、否応なしに単純事務従事者は、仕事の転換を余儀なくされるだろう。
 
今までは、出来る人と出来ない人というレベルで比較するため、出来る仕事量の差は、良くても倍程度が普通で、一桁変わることはまずなかった。しかし、デジタルレイバーは24時間365日稼働が可能であり、旧来のシステムのように汎用性が低くない。コストも、初期投資とメンテナンス費用だけしかかからず病気にもならない。それと比べれば、一桁以上の差は普通に発生してしまうのだ。
そうなれば、一気にAIに業務を移したくなる経営者や管理職者は、相当の割合になるだろう。
これを甘く見てはいけないし、実際、仕事の多くが繰り返し作業になっていることは、一歩引いて見れば、自ずと理解できるはずである。
 
少し前にRPAのデモを見たが、これは必ず広がるだけのポテンシャルを持っていたし、既にかなりの会社で導入が静かに進んできている。
全ての人は、それを覚悟しておくべきなのだ。
AIは確実に私達の働き方に改革を迫っているのである。
 
 
最後にまとめよう。
AIは、自動運転やシンギュラリティと言った完全代替のような話が取り上げられ易いが、実は既に事務的業務に浸透し始めている。
単純な事務仕事、例えば、経理・人事に関する事務や受発注業務、データのとりまとめと言った業務は、既にRPAなどに置き換えが始まっている。これはベンチャーや先進的企業だけでなく、大企業でも始まっており、現時点でそういった業務しかしていない人は、今すぐにでも自分のキャリアを考えた方が良い。
今回の変革は、事務業務についてはかなり本格的なものになっていくだろうし、それだけ、早めにキャッチアップしなければ、どんどんと活躍の場を狭めてしまうことに繋がってしまう。
次章で、AI時代に求められる仕事について触れていくが、今までもIT化の波は何度も来ており、環境を踏まえると、今回は事務業務の改革は避けられないと考えるべきだろう。
我々は、新たな一歩を踏み出すべきではないだろうか。
 
 
◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在、NPO法人FRI&Associates 理事長
大阪大学大学院 工学研究科を修了後、コンサルティング会社にて、事業戦略、業務改革、IT導入等を手がけたが、自身の仕事の関わり方に疑問を感じ、ベンチャー企業に転職。経験を活かし、各種企画・改善業務、法人営業、業務部門長等を担い、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングにも責任者として従事。その後、投資育成企業にて子会社の事業企画や経営改革、大手メーカーの機構改革などにあたった後、地元関西にUターン。
計測機器メーカーにて、経営企画担当の上席執行役員として、各種改革業務、マーケティング、事業開発等を推進する。その後、グローバルファームの大手監査法人にて、メーカーを中心に経営高度化に関するビジネスアドバイザリーサービスを提供後、住宅リフォーム会社にて人事とコンプライアンスという新たな業務に携わり、関西の大手携帯販売代理店にて、業務改善、物件開発、マーケ、購買等の責任者を担う。2017年4月より業界団体に出向し、会員企業向け教育研修事業の立ち上げ、各種業務の改善などに従事。業界全体の発展に尽力している。
事業企画や問題解決をはかる際、事業特性を鑑み、横串での業務改革とマーケティングを軸に、具体的な行動を行うことを信条としている。

 

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