FRI トップ > FRIコラム > キャリア・就職 > 非エリートキャリアのすすめ

非エリートキャリアのすすめ

2008年7月12日 by 理事長 清水 知輝   

理事長 清水 知輝

最近、活躍している経営者の方々の話を聞いていると、多くの人が、いわゆる「本流」のキャリアを歩んでいない事に気がつく。もちろん、経営者育成を主眼に、敢えて本流を作らない会社も出てきているが、特に、日系大企業はこの傾向が強いように感じる。
「本流」とは、いわゆる、「エリートコース」というものである。


多くの企業において、本社管理部門はエリートコースになっている事が多い。
最近は、経営幹部候補ということで、子会社の経営層を経験するケースも出てきているが、大抵は、財務部門や経営企画部門などを経て、役員への階段を登り始める。
他にも、その企業で最も大きく安定している事業の管理職も、コース上にある事が多い。

しかし、そういったタイプの人が社長に就いても、企業は大きな発展をしたケースは少ない。
それは、多くの著名な経営者を見てみれば明白だ。ほとんどが傍流で多様な経験を積んでいるケースが多い。
確かに、本流の人がトップに就くと、企業が潰れるケースは少ないようだ。ただ、大きな問題が起きた際に、企業が傾くのもまた、こういったエリートコースを歩んできたトップであるケースが多い。
ようは、失敗がないかわりに成功もなく、安定するが変化に弱いのである。

これは、今までの「エリートコース」が「成功させる(≒挑戦する)」人ではなく「失敗をしない」人を選んできたからに他ならない。
こういっては何だが、大企業のメインストリームを担う事業は、頑張って良くしようと「しなければ」、悪くなることもまた少ない。ようは、変化させなければ、誰がやっても同じようなものである。だからこそ、その企業は秀でているとも言えるのだ。
そんな安定的なところばかり経験し、失敗だけはせずに、それなりの期待にだけ応えてきた人が、自ら目標を掲げて会社をリードし、環境変化に合わせて変革し、更なる発展を遂げられるのだろうか。それが難しいことは、想像に難くないだろう。

そして、どれだけ大きな企業でも、事業の集合体であることに他ならない。そして、事業は成長と衰退のサイクルで動く。つまり、いつまでも安定だけ求めていてはならず、必ず転換期を乗り越えなければ、その企業は傾くのである。
多くの日本企業は、市場の拡大にのって、そういった本来の転換期を誤魔化して乗り越えたような錯覚を得て成長してきた。その分、企業の内部に多くの歪みが残されており、そういった部分にメスを入れたり、ボーダレス化や消費者の成熟化という市場環境変化に対応するため変革を進められるトップでなければ、企業を更に成長させることは難しいと言えよう。

少し脱線するが、いわゆる新卒で入社する人気企業についても、企業の抱える事業のサイクルから考えると、ある程度仕事で実績をあげて、更に大きな実績をあげるための仕事に就ける頃には、その企業や企業が属する産業自体が、衰退期に入っていることも多々ある。
今でも、多くの学生が金融業界を目指すと聞くが、金融とは社会インフラの一部である以上、なくなる事はなくとも、大きく役割を変える事もない。ガスや電力のように規制がかからないのであれば、その多くは競争に晒されて、当然ながら業績を悪化させる銀行も出てくる。あれだけ多くの雇用を、将来にわたって維持できるとは到底思えないし、給与だって相対的に下がってくるだろう。
それなのに、なぜか現状の安定を求めて、多くの人が「現在の人気企業」、そして、多くの場合「将来の不人気企業」を選んでいる。これも1つの歪みと言えるだろう。

話を戻すと、これからますます本質的なリーダーが求められる傾向は強まっていくだろう。後少なくとも、四半世紀近くは続くと思われる。
そうであれば、大企業の「エリートコース」を目指すことが、本当に将来の自分のためになるのか、素直に考えてみればわかって貰えると思う。

これから求められる人材は、自ら考え、自ら方向性を打ち出し、それを推進できる人である。
そういった人材は、早くから人の上に立ち苦労をし、新しいことに挑戦して意思決定し、多くの失敗も経験することで、多様な価値観を理解し、自らの考えを的確に伝えて人を動かせるようになるのだ。
すなわち、今で言う「非エリート」コースを歩まなければならない。
いわゆる本社管理部門ではなく、新しい事業や大きくない事業、あるいはベンチャー企業などにおいて、自らがなるべく重い責任と権限を持って、事業を遂行する立場に身を置き、極論すれば、本社管理部門のような安定環境から遠い、いつ潰れるともわからない不安定な事業現場で、事業の本質を学ぶべきだろう。

そのためには、旧来型の「エリートコース」に乗っていては、それは望めない。
社内異動でも転職しても良いが、若いうちから安定した場所に身を置くのではなく、数年でビジネスの基本を身に付けた後は、失敗できるうちは失敗を恐れずにチャレンジする、また、チャレンジできる環境にいることを心がけた方が良いだろう。
少なくとも、大企業に入って育てて貰おう、などという甘い考えは捨てた方が良い。正直、そんな余力はほとんどないのが実態である。少なくとも、活躍の場、として捉えるべきだろう。

それこそが、自身を加速度的に成長させ、自立という最も安定した力を手にする方法なのである。


◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates 理事長。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後、自らの関わり方に疑問を持ちベンチャー企業に転進。経験を活かし、経営企画・事業企画・商品企画・営業企画など様々な企画業務、数十名規模のライン管理職、業務・会計・人事などの各種改革業務などを担い、業績拡大を支える。また、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに責任者として従事する。実践的なアプローチにより実績多数。IT・ライフサイエンス系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革、大手企業の機構改革などにあたった後、現在は、地元関西の中堅メーカーにおいて、業務領域担当の執行役員として、戦略遂行と業務改革・改善など、成果にこだわった企業運営を担っている。
 
FRI公式ツイッター(筆者が主担当です)
筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」(本稿は個人ブログより転載)

 

この記事の評価(平均点): 4.5/5 (これまで 16 人が評価しました)

  • Currently 4.5/5
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5

FRIではご覧になった皆様の評価を常に大切にしています。良い評価も悪い評価も執筆者の大きな励みとなりますので、お気軽に☆マークをクリックしてこの記事を5段階で評価してください。

コメントを投稿する

※投稿が完了するとメッセージが表示されます。投稿ボタンを押してから少々の間お待ちください。

カテゴリー別 最新記事

Current Topics
地方創生の本質とは ~抽象論では地方は再生しない~
大阪都構想を考える ~賛否を判断する視点・論点~
【ケーススタディ】日本国家改革論 第三章『地方自治(政治・行政)のあるべき姿とは』
【ケーススタディ】日本国家改革論 第二章『国家財政基盤の構造改革におけるポイントとは』
【ケーススタディ】日本国家改革論 第一章『国家のトップのあり方とは』
東日本大震災の中長期的復興政策とは ~社会資本整備と財政基盤、原発問題を考える~
日本における教育の問題点と学力低下 ~ゆとり教育はなぜ失敗したのか~
農政改革と地方再生を考える ~地域格差と農業再生~
『朝青龍問題』に見る、マスコミ報道の論点整理力のなさ
「原発停止による電力不足」から考える ~太陽光発電活用とエネルギーミックスによる効率化の実現~
セカンドライフの今後を占う
スパ施設の今後を占う
「エコ」の見方
コムスン問題の論点 ~行政とマネジメントのミスリード~
商業施設出店の今後を占う
キャリア・就職
最適な就職先の選び方とは ~後悔しない企業・会社選択方法とキャリアプランニング~
非エリートキャリアのすすめ
ジョブキャリアとヒューマンキャリア
大企業と小企業のどちらに就職すべきか
将来の目標設定の必要性
「ベンチャー企業」か「大企業」か~就職先としての違い~
もしももう一度就職活動をやりなおせたら・・・
「勉強」と「仕事」の大きな違いとは ~仕事の本質を探る~
就職活動からの自分ブランディング ~就職活動でやるべきこととは~
グローバル化がビジネスキャリアに与えるインパクト ~激動の時代を生き抜くために~
キャリアに対する考え方
データ分析
ビッグデータの本質とは ~その特性・限界から考える活用範囲~
数値の本質を読む力とは ~インサイトによる実践的分析とシミュレーションの問題点~
デフレはいつまで続く? ~マクロ経済分析の限界とマーケット視点の重要性~
プロフェッショナル
学びと成長の本質とは ~学習能力と成果を高める方法~
知らずに陥る魔の思考停止とは ~仕事ができない・成果がでない理由~
プロフェッショナルな仕事とは ~そうでない仕事との違い~
答えに「する」力
なぜ、人の「成長スピード」に大きな差が生まれるのか
Morning Cafe Office
ダメな会議、ダメな上司、ダメな仕事
ホワイトカラーが陥る5つの落とし穴
塩一つで思考を広げることができるか
一流になるためのファッション
「あいまい」は「無責任」のあらわれ
プロフェッショナルとは?
マネジメント・リーダーシップ
優れた叱り手とは ~部下を伸ばす叱り方~
リーダーシップにおける3つの勘違いとは ~リーダーの真の役割を考える~
「軸」を定める ~課題遂行における本質とは~
リーダーに求められる力・必要とされる力
部下の叱り方
マネジメント力4 ~優れた上司とは~ 『成果を出すためにどうすべきか』
ファシリテーションの本質
リーダーの役割
マネジメント力3 ~優れた上司とは~ 『異性(男性・女性)の部下のマネジメント方法とは』
パワーミーティング
マネジメント力2 ~優れた上司とは~ 『優れた部下育成のあり方とは』
マネジメント力1 ~優れた上司とは~ 『管理職におけるビジネス社内情報管理術』
チェンジマネジメントの本質
女性社員の扱い方
マーケティング・ブランディング
マーケティング力を高める7 『ニーズを生みだす~商品・サービス開発の方法論~』
JAL 国内線ファーストクラス導入を分析する
航空会社は機内食をコンビニのお弁当にせよ
10万円の高級靴は結局得になるか?
間違いだらけのマーケティング
マーケティング力を高める6 『ブルーオーシャン戦略(BLUE OCEAN STRATEGY)』
マーケティング力を高める5 『新マーケティングミックス』
マーケティング力を高める4 『コミュニケーション・ミックス』
マーケティング力を高める3 『コンセプトを打ち立てる』
マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』
売上至上主義の弊害~日本企業が陥る過ち~
マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』
ICHIKAMIに見るブランディング戦略
マーケティングの飛躍とその理由 ~マーケティングが企業の命運を担う日~
仕事術・思考方法
五郎丸ポーズから考える習慣力
なぜ一年の計は失敗するのか
意思決定の科学
アイデアを実現し成果をあげる方法 ~新しい事を成功させる秘訣とは~
議論がうまく進まない理由とは ~無駄な会議を減らし成果をあげる方法~
シンプルに捉える秘訣 ~切り分けることの重要性~
コストをかければサービスが良くなるのか? ~サービス向上で陥る罠と嘘~
仕事は対応を後回しにするほど、業務量が増える ~仕事がはやい人の法則~
仮説と勘を分けるもの
仕事のスケールをあげる
モチベーションの上げ方
コミュニケーション力のインパクト
問題解決力を鍛える方法
問題意識の無いところに、問題解決は無い
仕事が「はやい人」と「おそい人」の違いとは
提案力・営業力
お客さまの心をつかむとは
営業力強化のポイント3 『顧客と正しく付き合う』
営業力強化のポイント2 『自信を持つ・強みを持つ』
営業力強化のポイント1 『ストーリーを描く』
日常スキル
日経新聞はこう読む
コイの処方箋
文章は誰でもきれいにかける(2)
文章は誰でもきれいにかける(1)
業種・業界・職種
機能しない情報システム部
コンサルタントを活用「できる」会社と「できない」会社 ~元コンサルタントが語るコンサルタント活用法~
企業の再生・育成の仕事 ~真のハンズオンとは何か~
時代遅れなメーカーの実態
コンサルティングの現場とは
経営戦略論
ビッグピクチャーを描け ~改良改善の積み重ねでは真の改革・創造は生まれない~
企業参謀
戦略立案の実務
フレームワークから考えてはいけない
ダイナミックストラテジー
コストワールドとスループットワールド

著者別 最新記事

創設者 河合 拓創設者 河合 拓
JAL 国内線ファーストクラス導入を分析する
企業参謀
航空会社は機内食をコンビニのお弁当にせよ
仕事のスケールをあげる
10万円の高級靴は結局得になるか?
戦略立案の実務
間違いだらけのマーケティング
コミュニケーション力のインパクト
答えに「する」力
部下の叱り方
問題解決力を鍛える方法
Morning Cafe Office
フレームワークから考えてはいけない
ダイナミックストラテジー
アンストラクチャーなテーマに軸をはる

 >>他記事はこちら(記事一覧)

スタッフ 木原 工スタッフ 木原 工
お客さまの心をつかむとは
ジョブキャリアとヒューマンキャリア
大企業と小企業のどちらに就職すべきか
日経新聞はこう読む
セカンドライフの今後を占う
将来の目標設定の必要性
スパ施設の今後を占う
文章は誰でもきれいにかける(2)
文章は誰でもきれいにかける(1)
商業施設出店の今後を占う
 スタッフ スタッフ
モチベーションの上げ方
『朝青龍問題』に見る、マスコミ報道の論点整理力のなさ
問題意識の無いところに、問題解決は無い
ダメな会議、ダメな上司、ダメな仕事
リーダーの役割
営業力強化のポイント3 『顧客と正しく付き合う』
営業力強化のポイント2 『自信を持つ・強みを持つ』
営業力強化のポイント1 『ストーリーを描く』
もしももう一度就職活動をやりなおせたら・・・
「あいまい」は「無責任」のあらわれ
プロフェッショナルとは?
時代遅れなメーカーの実態
キャリアに対する考え方
スタッフ 宮崎 善輝スタッフ 宮崎 善輝
コイの処方箋
「エコ」の見方
理事長 清水 知輝理事長 清水 知輝
地方創生の本質とは ~抽象論では地方は再生しない~
大阪都構想を考える ~賛否を判断する視点・論点~
ビッグデータの本質とは ~その特性・限界から考える活用範囲~
アイデアを実現し成果をあげる方法 ~新しい事を成功させる秘訣とは~
【ケーススタディ】日本国家改革論 第三章『地方自治(政治・行政)のあるべき姿とは』
【ケーススタディ】日本国家改革論 第二章『国家財政基盤の構造改革におけるポイントとは』
【ケーススタディ】日本国家改革論 第一章『国家のトップのあり方とは』
優れた叱り手とは ~部下を伸ばす叱り方~
東日本大震災の中長期的復興政策とは ~社会資本整備と財政基盤、原発問題を考える~
日本における教育の問題点と学力低下 ~ゆとり教育はなぜ失敗したのか~
議論がうまく進まない理由とは ~無駄な会議を減らし成果をあげる方法~
シンプルに捉える秘訣 ~切り分けることの重要性~
リーダーシップにおける3つの勘違いとは ~リーダーの真の役割を考える~
ビッグピクチャーを描け ~改良改善の積み重ねでは真の改革・創造は生まれない~
コストをかければサービスが良くなるのか? ~サービス向上で陥る罠と嘘~

 >>他記事はこちら(記事一覧)

理事 高橋建人理事 高橋建人
五郎丸ポーズから考える習慣力
なぜ一年の計は失敗するのか
意思決定の科学
仮説と勘を分けるもの
  • RSS