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「キャリアプランニング」と会社選び・仕事選び

2007年10月12日 by 理事長 清水 知輝   ブックマークに追加する

理事長 清水 知輝

10月を過ぎ、2008年度入社の内定式を終え、早くも2009年度入社の採用が本格化し始めている。インターンシップなどは、既に一山越えたくらいだ。また、中途採用も空前の活況を呈している。そして、大手企業は予算を増額し、今まで以上に露出を高め、人の確保に躍起になっている。
しかし、採用される側に目を移すと、本当に満足のいく会社選び・仕事選びが出来ていると言えるだろうか。更に言えば、キャリアプランニングの観点を少しでも持てていただろうか。
今回は、これからの時代において非常に重要な「キャリアプランニング」と、後悔しない就職のためのポイントについて触れてみたい。


私は、コンサルティング会社、ベンチャー企業、投資育成会社と、普通の人と比べて多くの企業と職種を経験してきたし、個々の会社において、一定の成果も挙げてきた。
その中では、事業推進者として、人材育成や採用などに携わる事もあったし、FRIを通じて多くの人を見てきた。そして、仕事柄、大手企業や著名企業で働く人との付き合いも多かったのだが、そういった中で、満足のいくキャリアアップをはかっていける人だけに、一定の共通点がある事が、最近、わかってきた。
その共通点は、実経験の中からの一つの解であり、学術的な世のキャリア本とは異なる。統計的に上手くいった人の共通因子、ではなく、それらの持つ本質的な共通項である。

今回、私のメルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」でも何度かキャリアについて触れてきたが、そこから特に本質的な部分のポイントを抽出し公開したいと思っている。
ただし、最初に断っておくと、実際のところ、その有効性は保証するが、それを実行することは楽ではない。成功している企業が、当たり前の事を着実に根気強くやっているのと同様、成功するキャリアについても、似たような面があるのだろう。
仕事やキャリアは算数ではない。これから読み進める前に、これは、最初に心に留め置いて貰いたい。


【現代のビジネス環境】

変化速度が過去とは比べ物にならないくらい加速し、同時にボーダレスな環境に置かれた現在、新卒採用が空前の売り手市場と言われるようになったとしても、社会に出てからは、より個人に成果を生み出す力が強く求められるようになっているのは、既にご存知の通りだ。

過去、日本は「国内事情」というものを錦の御旗にして、グローバルな基準からは目を背けてきた。なぜなら、日本国内には、世界基準に照らし合わせると、様々な「既得権益」という非合理的なものが山積していたからだ。
ちょっと考えればわかるが、「官僚の天下り」など、合理性はほとんどない。確かに、国家予算は非常に大きなものであり、関係者(官僚)を受け入れる事で、それに紐付いて仕事が来るなら、公僕という位置づけ上、良いか悪いかは別として、まだ、受け入れ側の話はわかる。しかし、今は、「公益団体」「特殊法人」という名の天下り先を自ら作り出し、数年いただけで高給と莫大な退職金をせしめる。そこに何の合理性があるのだろうか。

ボーダレスな社会においては、そのような非合理性は存続し得ない。なぜなら、付加価値を出せない組織は、寄生虫と同じであり、その母体を弱らせ、いずれは母体諸共、競争に負けて死んでしまうからである。
企業は社会の公器である。社会に対して、自分が得た対価以上の価値を提供できないものは、存在を許されないのだ。競争環境は、そういった非合理性を補正する。

それだけでなく、仕事に目を向ければ、定型業務はシステムに取って変わられ、少々の判断が必要であっても基準にのっとった判断程度しか要求されなければ、中国などに移ってしまうだろう。これは、結果的な事実である。
企業に関しても、実際、保険などは、ちょっと出来る人は、ほとんどが外資系の保険会社で契約しているし、金融も外資系や異業種を母体とする新銀行の躍進など、生み出す付加価値に見合っていない高給を貰っているような企業群は、企業自体が競争力を失っていくだろう。
高給で有名な大手広告代理店やTV局なども、TV一極集中ではなくなりつつあるに従い、それがいつまで維持できるかわからない。

つまり、ボーダレスというグローバル基準のある種平等な競争環境にさらされる以上、誰かにすがって生きていく事は、先ほどの「寄生虫」と同じ運命を辿る事に繋がる。
今の企業の置かれた環境は、それほど甘いものではないし、ボーダレスによって「日本の特殊事情」という言い訳が通用しなくなった以上、一歩間違えれば大企業でも傾く時代は、これからもしばらくは続いていく事になるのである。

そう、目前の売り手市場だけ見ていては、その先の荒波に飲み込まれてしまうのは必然だ。
これからは、会社という組織に頼るのではなく、自分自身は自分自身で磨きあげなければ、その会社諸共沈みかねない。
団塊の世代の大量退職や失われた10年間の雇用不足、若年者人口の急激な減少など、国内の特殊要因に一喜一憂している場合ではないのである。

だからこそ、「キャリアプランニング」という自身でキャリアを築いていく、という発想が重要度を確実に増しているのだ。


【仕事の本質】

では、その仕事というものに目を向けてみよう。

「勉強」と「仕事」の大きな違い』でも述べたが、仕事とは、例えば「勉強をすれば点が上がって合格する」というようなものとは異なり、自身だけの努力だけではどうにもならない場合もあり、同じく、その成果の大きさは、一人の努力だけでは変えきれない、というものである。
もちろん、だからと言って、手を抜けば如実にそれが成果に反映されてしまうという面があり、かなり厳しい環境であることは間違いない(しかし、だからこそ成果を出せた時の達成感は格別であるのだが)。

外部環境も厳しければ、そもそも、仕事自体も簡単なものではないのだ。
一部のラッキーな人を除いて、「成功者」といわれる人達は、総じて、他人よりも多くの努力を積み重ねているという事実が、それを物語っている。
勉強(暗記)をすれば点が上がる、という単純なものではない。自身の能力も向上させなければならないが、同時に、人を動かす力、手の届かない範囲の人をも律する力(仕組みを生み出す力)、自分以外の人の能力を開花・発揮させる力さえ求められる。しかも、時の運まで、引き寄せなければならない。

そんな仕事において、「○○業界にいれば安心」等と言うものが存在するだろうか?

想像通り、それは否である。

結局のところ、求められるのは、「○○業界」に行く事ではなく、どんな業界でも通用する力を養う事であり、もし選択するのであれば、それに必要だと「自分が」考える力を身に付けやすい業界はどこか、という視点である。
ここで勘違いしがちなのであるが、「便利な業界」はないという事だ。
「コンサルティング業界に行けば経営者になれる」とか「外資金融に行けばつぶしがきく」とか、確かに若干の合致するケースはあるが、それは、どちらかというと、その個人としてのキャリアの歩み方がメインであり、その業界にいたからそうなる、という事ではない。しかも、本当にそうなのかは、そこで身に付ける自分自身に問わなければならない。

サッカーチームに所属しているから上手くなるのではない。そこで血の滲むようなトレーニングを怠らないから上手くなるのだ。しかし、チームに属していた方が、トレーニングはしやすい環境にいられる。
これは、ビジネスにおいても同じである。

私がベンチャー企業に入ったのも、『「ベンチャー企業」か「大企業」か』で述べたように、ベンチャーという環境が、自身が責任を負った中で、自身を鍛えるための試練の場として最適だと考えたからだ。

しかし、そのような視点だけでは、納得のいくキャリアを歩める訳ではない。


【目前の成果にまずはこだわる】

一体、何が不足しているのか。
それは、「成果」へのこだわりである。しかも、それは大きな方が良い。

一つは、『なぜ、人の「成長スピード」に大きな差が生まれるのか』で述べたように、大きな「成果」を狙うと、「目標」が大きくなり、その分、大きな失敗する機会も得られ、成長に繋がりやすいからである。
そして、最初から失敗しても良いと思うのではなく、最後まで「成果」を出す事にこだわりを持ち続ければ、より、そこから得られるものは大きくなっていく。

そういった経験をしていければ、必ず大きな「成果」を出すときが来て、その「成果」を元に、次のキャリアをより歩みやすくなる。例えば、社内では最も難しく重要な課題が集まるようになるし、社外に対しても自分の名で話す事ができる。すなわち、個人としての市場価値は高まる。

もう一つは、「成果」を出す事で、あるいはその過程で、自分のやりたい事が明確になってくる、という理由だ。
よく、「私は何に向いているでしょうか」「私は何をすれば良いと思いますか」という質問を受けるが、そんな事を明確に分かっている人間など、本当に極僅かである。
芸事をやっている著名な人でも、ある程度の歳になって初めて、「この仕事が向いていたのだろう」と言えるぐらいである。そこまで強い信念を持てる人は、いないとは言わないが、何らかの原体験がない限りはないと言って良いだろう。

私も、キャリアを積む中で、「現場経験がなければ駄目だ」とか「経営の重要性というのは、思っている以上だ」とか「資本の論理は引っ張られては駄目だが軽視してはいけない」とか、それぞれのフェーズで気付いていった。
だからこそ、その必要性に駆られて転職に踏み切ったのである。

最近、「思っていたのと違う」とか「配属先が希望通りではない」と言って、新卒入社でも半年から1年程度で会社を辞めて転職してしまう人がいるが、正直、「?」と思う。
そんなに自分の判断は正しいと言えるのだろうか。人に与えられたものに文句だけ言っていれば良いのだろうか。

確信を持って「Yes」と言えるなら、直ぐにでも部署異動なり転職なりすべきだろう。
実際、酷い会社も職場もたくさんあるから、それは否定しない。TOPが駄目なら会社は駄目、本部長が駄目ならその事業は駄目、中間管理職が駄目ならその部署は駄目。そういう判断は必要だ。駄目な環境に身を置く事は、短期間で十分だ。それ以上の価値があるとは思えない。
しかし、入社2~3年目くらいまでは、自分の視野は地面と同じくらいであると思った方が良いだろう。実際は、その仕事について何も見えていない事がほとんどだ。そんな視野だけで、正しい判断が出来るとは思えない。
やりたい事ができているか、と、会社や事業部が駄目、というのは、次元が異なるからだ。

どのような環境であれ、「成果」にこだわりを持って個人として当たれば、色々なものが見えてくるはずだ。
そこに、会社のブランド名や流行りの業界など関係ない。
そういった積み重ねがあって、初めて、自分が「やりたい!」「やらなければならない」と思えるものが見えてくる。
それが見えたら、直ぐにそれが出来る環境に移るべきだろうが、少なくとも、それまでは、目前でも良いので「成果」にこだわりを見せて、実績を積み重ねて貰いたい。
そうすれば、いざ環境を移そう、と思った時に、様々な選択肢が向こうからやってくるはずだ。

勿論、だからと言って何でも良いとは言わない。先人達の知恵を借りる事は大切だろう。
特に、言葉は悪いが、「業界バカ」「○○会社バカ」にはならない事だ。自分の会社や業界を俯瞰して見る余裕は常に欲しい。
しかし、「キャリア」とは、与えられる、正解がある、というものではなく、そうして自分で見出し、掴み取るものである。
それは、心に刻んでおいて貰いたい。


最後にまとめよう。
「キャリア」には、万人に通じる正解などない。世の中のブランドや流行りに流されてはいけない。
また、「自己分析」をするだけでは、自分の適職など見つかりえない。「やりたい!」と思えるものに出会うためには、仕事という環境の中に身を置き、そこで「成果」にこだわる事で、初めて糸口が見えてくるものだ。
求められるものを挙げるとするならば、それは、どこの業界・企業でも通じるベースの力であろう。
「キャリアプランニング」とは、「やりたい!」と思えるものが、朧気ながらでも見えて来た時に考える「環境選択」の手法である。
企業とは、自らが「成果」を出すための「舞台」でしかない。企業が自分のやりたい事を教えてはくれない。自身が「成果」と向き合う中で見出し、それを実現する場なのである。

「自己分析」が進まないと嘆く必要はない。様々な企業を見る中で少しでも光るものを感じたら、そこに飛び込んで足掻く事こそ、「やりたい!」と思えるもの探しの始まりなのだから。


本コラムは、筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」を再構成したものです。
より詳しく知りたい方はこちらへ
筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」
筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」

◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates 理事長。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後、自らの関わり方に疑問を持ちベンチャー企業に転進。経験を活かし、経営企画・事業企画・商品企画・営業企画など様々な企画業務、数十名規模のライン管理職、業務・会計・人事などの各種改革業務などを担い、業績拡大を支える。また、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに責任者として従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革、大手企業の機構改革などにあたる。

 

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