FRI トップ > FRIコラム > キャリア・就職 > ジョブキャリアとヒューマンキャリア

ジョブキャリアとヒューマンキャリア

2007年8月13日 by スタッフ 木原 工   

スタッフ 木原 工

 今春の部の新人歓迎会での話であるが、新人の所信表明として、当部で何を学びたいかを発表してもらうことになった。

 ある新入生は「○○という業務について、誰よりも詳しい人になりたい。」と語り、また別の新入生は「上司の○○さんの様になりたい。」とそれぞれに抱負を語ってくれた。このように仕事の能力を伸ばしていくときには、「業務」という軸で切る場合と、「人間性」という軸で切る場合の2種類がありそうである。本稿では、「業務」という軸での成長を見た「ジョブキャリア」と、「人間性」という軸での成長を見た「ヒューマンキャリア」という側面について、それぞれの考え方を整理してみたい。また長期的な自己成長において、どちらに重点をおくべきかをインサイトに検討してみたい。
  
  
1) ジョブキャリアとは
 ジョブキャリアとは、仕事の内容や具体的な知識で経験を積むものである。仕事の内容としては、新卒が会社を選ぶ際に使ういわゆる「業種別分類」という視点がある。またある程度仕事の経験を積んだキャリアビジネスパーソンが新たに会社を選ぶときの「業務内容別分類」という視点がある。
 「業種別分類」としては、具体的には「商社」や「銀行」や「メーカー」といった産業分類で分けることである。これは、非常に雑な言い方で恐縮であるが「商社」と言った側面で見れば、「物流速度を高めてゆとりある生活を提案」「ありとあらゆるものを商材にする」「想像力で新たな仕事の提案」といったことを行うのであり、「銀行」と言った側面で見れば、「堅実・信頼な仕事ぶり」「経理側面から企業の経営のサポート」「預かり資産の運用」といった業務を全般的に行う。このような業種別で見ることの利点としては、ビジネス経験が全くない者が、どのような仕事ならば自分に合うかもしれないと考える時に有効である。業種で切る場合は、ある程度のライフプランを固定化することが出来る。業務内容の時間的拘束の差、転勤の有無、一つの仕事のスペシャリストになるのかいろんな仕事を広範囲にこなすゼネラリストになるのか、ある程度人生設計を固定化することが出来る。おおむね個人が描く働き方や人生設計、趣味嗜好は変えられないものであるからこのような視点で仕事を選択することは悪くない。また新卒市場でスタンダードな切り口になっていることからしても、間違っていないといえる。
 「業務内容別分類」としては、具体的には「IT」「経理」「営業」と言った側面がある。これも雑な表現であるが、ある大企業を想定して考えてみると、「IT」であれば「各セクションのオペレーションの向上」「業務管理システムの改善」「ペーパーレス化による業務改善」といったことを行うのであり、「営業」であれば「仕入れ企業や販売先企業とのリレーションの強化」「新商品に必要な材料物流の強化」「お客様に商品を理解いただくためのご説明」などがあげられる。このような業務内容別で見ることの利点としては、採用側が採用応募者の経験や人柄を見て、即戦力として自分の会社の売り上げに貢献するか否かを判断することができること挙げられる。「業務内容別」で人を判断するときは、その人のバックグラウンドや前職での経験を評価することになるため、中途採用市場でスタンダードになっている考え方である。社会人経験がある場合の転職は、前職の経験を生かして、同じフィールド又は違うフィールドで仕事をするわけであるから、「業種」に興味があるというよりも「業務内容」に興味をもって実行することになる。結果として中途採用市場ではほとんどが「業務内容別」に採用活動を行っており、それが採用側にとっても応募側にとっても望ましいやり方となっている。
 さて、冒頭での部の歓迎会において行った所信表明の話であるが、この意図としてはどのような業務を勉強したいのかをフランクな中で聞くことにあった。特定の企業に新卒で入社する時点では「会社」というものにあこがれて来ている。しかし会社の特定の部署に配属されたならば、その部署はその新人を、その道で一人前になってもらうように指導をする。一人前になるためにこれから「業務」について教え込むわけであるが、具体的にはどのような業務に一番興味があるのか表明してくれると、今後の教える方向としても何を重視すれば良いのかわかる。その点でどのような業務をやりたいかを表明することが望まれていたわけである。そのため「○○という業務について、誰よりも詳しい人になりたい。」と言ってもらい今後の指導の方向性を理解するものであった。
  
  
2) ヒューマンキャリアとは
 ヒューマンキャリアというのは、いわいる「どんな人間になりたいのか」であり、仕事もプライベートも含み全てにおいてどのような人生を送りたいかについての考え方である。
 これは新卒時の自己分析で、10年後、20年後にどのような人間になっていたいのかを自己分析によって行う。自分の趣味嗜好をよく考え、またどのような土地でどのように暮らすのかを考えて、また結婚やその後の資金面での必要性を考えて、自分の将来像を定めることになる。経済学が好きであれば金融業界に、商学が好きであれば商社業界に、建築が好きであれば建設業界を選択し、海外に行きたければ商社・メーカー、地元に残りたいのであれば地方銀行や公務員になることがある。また仕事以外にやりたい趣味があるならば忙しくない仕事を選択することもあるし、高収入を得たいために忙しい仕事を選択することもある。これは仕事の内容よりも人生の価値観の置き方を検討することである。
 冒頭の新人歓迎会の話に戻ると、「上司の○○さんの様になりたい。」というのは、その人のヒューマンキャリアを自分に重ねた目標である。具体的な業務をマスターすると言うよりも、その人に近づくことで、業務知識や実行力を総合的に学習するものといえる。この場合は、個別に教えると言うことよりも、その仕事をしている姿を見せ続けることに意味があるので特にないかをするというわけではない。宣言されたものと近くに新人を配置することが指導方針となる。
  
  
3) 自分の自己成長とは
 最後に、インサイトの視点で自己成長を考えるならば、「ヒューマンキャリアを育てるようなジョブキャリアを選択すること」がキーワードになると私は考える。生きていく上で根本的に検討しなければならないのが、どのように生きるかだと思う。25才で結婚し、30才で子供を産み、35才で家を買い、40才で新しい車を買い、45才で子供の受験勉強につきあい等々、人生の中でのイベントは満載である。これを楽しめるか否かは個人の価値観にあると思うが、このようなライフイベントを経験することが人生の醍醐味であるような気がする。そのため仕事というものは、このライフイベントを経験するためのエッセンスに過ぎないと考えるのが良いのではないかと私は思う。「仕事のせいで30才になっても結婚できませんでした」と言うよりも、「30才で結婚するために会社を転職しました」ということの方が建設的であると感じるのは、ジョブキャリアよりもヒューマンキャリアを重視している証拠であると思われる。よって、ヒューマンキャリアをサポートするようなジョブキャリアの選択をすることが、人生を豊かにすることや自己成長につながると感じる。
 冒頭での部の歓迎会において行った所信表明の話であるが、インサイトの視点から考えるならば、「上司の○○さんの様になりたい。」という考え方が素直な回答であると思う。個人的にも、「上司の○○さんの様になりたい。」と目標設定をしながら仕事をしておるため、仕事の経験ではなく、仕事をふまえた先人の方々の生き方に自分の目標を併せて行動するのが、自己成長の早道ではないかと感じている。

 

この記事の評価(平均点): 3.5/5 (これまで 13 人が評価しました)

  • Currently 3.5/5
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5

FRIではご覧になった皆様の評価を常に大切にしています。良い評価も悪い評価も執筆者の大きな励みとなりますので、お気軽に☆マークをクリックしてこの記事を5段階で評価してください。

コメントを投稿する

※投稿が完了するとメッセージが表示されます。投稿ボタンを押してから少々の間お待ちください。

カテゴリー別 最新記事

Current Topics
地方創生の本質とは ~抽象論では地方は再生しない~
大阪都構想を考える ~賛否を判断する視点・論点~
【ケーススタディ】日本国家改革論 第三章『地方自治(政治・行政)のあるべき姿とは』
【ケーススタディ】日本国家改革論 第二章『国家財政基盤の構造改革におけるポイントとは』
【ケーススタディ】日本国家改革論 第一章『国家のトップのあり方とは』
東日本大震災の中長期的復興政策とは ~社会資本整備と財政基盤、原発問題を考える~
日本における教育の問題点と学力低下 ~ゆとり教育はなぜ失敗したのか~
農政改革と地方再生を考える ~地域格差と農業再生~
『朝青龍問題』に見る、マスコミ報道の論点整理力のなさ
「原発停止による電力不足」から考える ~太陽光発電活用とエネルギーミックスによる効率化の実現~
セカンドライフの今後を占う
スパ施設の今後を占う
「エコ」の見方
コムスン問題の論点 ~行政とマネジメントのミスリード~
商業施設出店の今後を占う
キャリア・就職
最適な就職先の選び方とは ~後悔しない企業・会社選択方法とキャリアプランニング~
非エリートキャリアのすすめ
ジョブキャリアとヒューマンキャリア
大企業と小企業のどちらに就職すべきか
将来の目標設定の必要性
「ベンチャー企業」か「大企業」か~就職先としての違い~
もしももう一度就職活動をやりなおせたら・・・
「勉強」と「仕事」の大きな違いとは ~仕事の本質を探る~
就職活動からの自分ブランディング ~就職活動でやるべきこととは~
グローバル化がビジネスキャリアに与えるインパクト ~激動の時代を生き抜くために~
キャリアに対する考え方
データ分析
ビッグデータの本質とは ~その特性・限界から考える活用範囲~
数値の本質を読む力とは ~インサイトによる実践的分析とシミュレーションの問題点~
デフレはいつまで続く? ~マクロ経済分析の限界とマーケット視点の重要性~
プロフェッショナル
学びと成長の本質とは ~学習能力と成果を高める方法~
知らずに陥る魔の思考停止とは ~仕事ができない・成果がでない理由~
プロフェッショナルな仕事とは ~そうでない仕事との違い~
答えに「する」力
なぜ、人の「成長スピード」に大きな差が生まれるのか
Morning Cafe Office
ダメな会議、ダメな上司、ダメな仕事
ホワイトカラーが陥る5つの落とし穴
塩一つで思考を広げることができるか
一流になるためのファッション
「あいまい」は「無責任」のあらわれ
プロフェッショナルとは?
マネジメント・リーダーシップ
優れた叱り手とは ~部下を伸ばす叱り方~
リーダーシップにおける3つの勘違いとは ~リーダーの真の役割を考える~
「軸」を定める ~課題遂行における本質とは~
リーダーに求められる力・必要とされる力
部下の叱り方
マネジメント力4 ~優れた上司とは~ 『成果を出すためにどうすべきか』
ファシリテーションの本質
リーダーの役割
マネジメント力3 ~優れた上司とは~ 『異性(男性・女性)の部下のマネジメント方法とは』
パワーミーティング
マネジメント力2 ~優れた上司とは~ 『優れた部下育成のあり方とは』
マネジメント力1 ~優れた上司とは~ 『管理職におけるビジネス社内情報管理術』
チェンジマネジメントの本質
女性社員の扱い方
マーケティング・ブランディング
マーケティング力を高める7 『ニーズを生みだす~商品・サービス開発の方法論~』
JAL 国内線ファーストクラス導入を分析する
航空会社は機内食をコンビニのお弁当にせよ
10万円の高級靴は結局得になるか?
間違いだらけのマーケティング
マーケティング力を高める6 『ブルーオーシャン戦略(BLUE OCEAN STRATEGY)』
マーケティング力を高める5 『新マーケティングミックス』
マーケティング力を高める4 『コミュニケーション・ミックス』
マーケティング力を高める3 『コンセプトを打ち立てる』
マーケティング力を高める2 『ターゲットを絞る』
売上至上主義の弊害~日本企業が陥る過ち~
マーケティング力を高める1 『マーケティングとは何か』
ICHIKAMIに見るブランディング戦略
マーケティングの飛躍とその理由 ~マーケティングが企業の命運を担う日~
仕事術・思考方法
五郎丸ポーズから考える習慣力
なぜ一年の計は失敗するのか
意思決定の科学
アイデアを実現し成果をあげる方法 ~新しい事を成功させる秘訣とは~
議論がうまく進まない理由とは ~無駄な会議を減らし成果をあげる方法~
シンプルに捉える秘訣 ~切り分けることの重要性~
コストをかければサービスが良くなるのか? ~サービス向上で陥る罠と嘘~
仕事は対応を後回しにするほど、業務量が増える ~仕事がはやい人の法則~
仮説と勘を分けるもの
仕事のスケールをあげる
モチベーションの上げ方
コミュニケーション力のインパクト
問題解決力を鍛える方法
問題意識の無いところに、問題解決は無い
仕事が「はやい人」と「おそい人」の違いとは
提案力・営業力
お客さまの心をつかむとは
営業力強化のポイント3 『顧客と正しく付き合う』
営業力強化のポイント2 『自信を持つ・強みを持つ』
営業力強化のポイント1 『ストーリーを描く』
日常スキル
日経新聞はこう読む
コイの処方箋
文章は誰でもきれいにかける(2)
文章は誰でもきれいにかける(1)
業種・業界・職種
機能しない情報システム部
コンサルタントを活用「できる」会社と「できない」会社 ~元コンサルタントが語るコンサルタント活用法~
企業の再生・育成の仕事 ~真のハンズオンとは何か~
時代遅れなメーカーの実態
コンサルティングの現場とは
経営戦略論
ビッグピクチャーを描け ~改良改善の積み重ねでは真の改革・創造は生まれない~
企業参謀
戦略立案の実務
フレームワークから考えてはいけない
ダイナミックストラテジー
コストワールドとスループットワールド

著者別 最新記事

創設者 河合 拓創設者 河合 拓
JAL 国内線ファーストクラス導入を分析する
企業参謀
航空会社は機内食をコンビニのお弁当にせよ
仕事のスケールをあげる
10万円の高級靴は結局得になるか?
戦略立案の実務
間違いだらけのマーケティング
コミュニケーション力のインパクト
答えに「する」力
部下の叱り方
問題解決力を鍛える方法
Morning Cafe Office
フレームワークから考えてはいけない
ダイナミックストラテジー
アンストラクチャーなテーマに軸をはる

 >>他記事はこちら(記事一覧)

スタッフ 木原 工スタッフ 木原 工
お客さまの心をつかむとは
ジョブキャリアとヒューマンキャリア
大企業と小企業のどちらに就職すべきか
日経新聞はこう読む
セカンドライフの今後を占う
将来の目標設定の必要性
スパ施設の今後を占う
文章は誰でもきれいにかける(2)
文章は誰でもきれいにかける(1)
商業施設出店の今後を占う
 スタッフ スタッフ
モチベーションの上げ方
『朝青龍問題』に見る、マスコミ報道の論点整理力のなさ
問題意識の無いところに、問題解決は無い
ダメな会議、ダメな上司、ダメな仕事
リーダーの役割
営業力強化のポイント3 『顧客と正しく付き合う』
営業力強化のポイント2 『自信を持つ・強みを持つ』
営業力強化のポイント1 『ストーリーを描く』
もしももう一度就職活動をやりなおせたら・・・
「あいまい」は「無責任」のあらわれ
プロフェッショナルとは?
時代遅れなメーカーの実態
キャリアに対する考え方
スタッフ 宮崎 善輝スタッフ 宮崎 善輝
コイの処方箋
「エコ」の見方
理事長 清水 知輝理事長 清水 知輝
地方創生の本質とは ~抽象論では地方は再生しない~
大阪都構想を考える ~賛否を判断する視点・論点~
ビッグデータの本質とは ~その特性・限界から考える活用範囲~
アイデアを実現し成果をあげる方法 ~新しい事を成功させる秘訣とは~
【ケーススタディ】日本国家改革論 第三章『地方自治(政治・行政)のあるべき姿とは』
【ケーススタディ】日本国家改革論 第二章『国家財政基盤の構造改革におけるポイントとは』
【ケーススタディ】日本国家改革論 第一章『国家のトップのあり方とは』
優れた叱り手とは ~部下を伸ばす叱り方~
東日本大震災の中長期的復興政策とは ~社会資本整備と財政基盤、原発問題を考える~
日本における教育の問題点と学力低下 ~ゆとり教育はなぜ失敗したのか~
議論がうまく進まない理由とは ~無駄な会議を減らし成果をあげる方法~
シンプルに捉える秘訣 ~切り分けることの重要性~
リーダーシップにおける3つの勘違いとは ~リーダーの真の役割を考える~
ビッグピクチャーを描け ~改良改善の積み重ねでは真の改革・創造は生まれない~
コストをかければサービスが良くなるのか? ~サービス向上で陥る罠と嘘~

 >>他記事はこちら(記事一覧)

理事 高橋建人理事 高橋建人
五郎丸ポーズから考える習慣力
なぜ一年の計は失敗するのか
意思決定の科学
仮説と勘を分けるもの
  • RSS