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大企業と小企業のどちらに就職すべきか

2007年8月 5日 by スタッフ 木原 工   

スタッフ 木原 工

 FRIで出会う大学生と話をすると、大手の○○株式会社に就職するという話や、小企業の△△株式会社に就職するなどという話をよく耳にする。

大手に入社する学生に入社を決めた要因を聞いてみると、「大きな仕事が出来る」「若い時の教育体制が整っている」等の答えが多く、逆に小企業に入社する学生に入社を決めた要因を聞いてみるとは、「個人に任される裁量が多い」「いろいろな仕事を経験したい」等の答えが多い。一方で大企業に入社した入社1~2年目の社会人に話を聞くと、「大企業に入ってみたところ単純業務ばかりで自分の思い描いていたものと違う」との意見があり、逆に小企業に入社した入社1~2年目の社会人に話を聞くと「小企業では営業体制が未熟でつまらない仕事が多い」など当初思い描いていたものとは違う意見も少なくない。2007年8月3日付の日経新聞によれば、リクルートエージェントに4月1日から6月15日までの間に登録した新社会人の数が前年度比の約2倍の170人に増加したと伝えており、「雇用のミスマッチ」は本年度においても顕著であることを伝えている。本稿ではこのような雇用のミスマッチをふまえ、個人的な経験則ではあるものの、小企業と大企業の違いを説明したい。
  
  
1) 小企業の良い点と悪い点
 小企業の良い点は、責任が大きいことであろう。私も新人の時、ある自治体の経営分析を任された。なぜ任されたかというと、人がいないからである。最初に配属された部署は、40歳の主任、30歳の副主任、私という3人体制であったが、主任は営業のため全国を回り、副主任は主任が獲得した仕事を一人でこなしていたので、比較的定型的なレポートはどんどん私に振られたため、私の能力を超える仕事をすることになった。当初1~2年くらいは、こなせるわけではなく結局副主任にいつも泣きついていた。結局4年目には、特例市の政策実行の主担当としてもらえたが、自治体側のカウンターパートナーが40才前後の係長であったことを考えると、かなりの良い経験をさせてもらったといえる。上司はこのような私に辛抱強く指導してくれたのだから、今でも上司に感謝をしている。
 また仕事において多岐にわたる経験が出来るのも小企業の良い点であろう。小企業においては少ない人数で全ての業務を回すには、小さなことから大きなことまで各人が行わなければならない。そのため、営業、プレゼン、デリバリ、クロージング、フィーの入金確認まで一連を行うことになる。事務周りをパートさんに頼んだとしても、全体の流れについては把握しておかなければどこかでトラブルが発生した場合に迅速な対応が出来なければならないため、結局一人の人間が隅々にわたり業務を知らなければならない。この作業の担当にとっては辛いことではあるが、経験という面では大企業では決して味わえないものを短期間で学ぶことが出来る。
 一方で悪いところとしては、組織が未熟であることが挙げられる。特に人事制度や働きやすさ等の点は十分整備がされていない。
 たとえば人事制度の面では、労働規定などが曖昧であるため、自分で仕事をドライブできていない間は常に仕事をし続けることになる。本来は、プライベートの時間を確保し、自分の自己研鑽に当てる必要があるが、OJTとして常に仕事だけをしてしまいがちである。また制度的な背景として働き過ぎを止めるものがないため、さらに仕事をしてしまう傾向があるといえる。大企業は近年の「こころの問題」等で出社拒否をするものが増えていることを背景として、過度に働いた場合にストップをかけるような制度を盛り込んでいる。このような制度があることで、仕事のやり過ぎによる燃え尽きを比較的避けることが出来るようになっている。仕事にだけ打ち込んでしまうことは、閉塞感が生まれるため、他の業界の仕事へのアンテナが鈍り、全体感を持った仕事の対応が難しくなるため、あまりおすすめではない。
 また小企業は人間が固定化しやすい。小企業は全社員が数十人以下ということが多いため、上司になる人や部下になる人は必然的に決まってしまう。この場合上司や部下と折り合いが悪ければ仕事がうまくいかない。仕事の内容については良いが、人間関係の面が悪く辞めてしまいたいという話は少なくない。たしかに気の合わない上司がいて、仮にその職場に今後も在籍を続けると、10年も上司が変わらないと言うことが見えてしまうと、うんざりする。大企業であればある程度年が経ることで異動があり、特定の人間が上司であり続けると言うことはなくなる。この点で短期的に困った人間関係になったとしても、再度シャッフルされる機会がある。
  
  
2) 大企業の良いところと悪いところ
 大企業の良い点としては、働きやすい環境の整備が挙げられる。人事面では、福利厚生制度や年金制度などが手厚くなっているため、長期的に働きやすい。大企業に勤めると、ある程度自分の時間も作りやすいため、自分の将来設計を考える余裕があったり、社外での活動を広げたり自己研鑽を積む時間の余裕がある。個人的な感想になるが、シンクタンク時代は、会計実務や経済分析実務には詳しくなったものの、ITや営業など自分の専門以外については全くアンテナをたてていなかったため、儲かるビジネスの全体感をつかむことは不得手になっている。このような不得手の内容は、自分の時間で学ばなければならないのだが、30才を超えてITの基礎的な部分を勉強することは若いとき以上に苦労することだと思う。
 また大企業は、人間関係に問題が生じにくい。大企業は、小企業に比べ採用の段階で社風に合うか合わないかでふるいにかけられる。このため、ある程度話がしやすい人間が集まることになる。また大企業の場合は異動が多いため、仮に合わない人間関係になったとしても、数年後には変わることが想定される。
 一方で悪い点としては、小企業と比べてのんびりしてしまうのがあるだろう。仕事においては、長期的なビジネスを続けているため、1ショット、1ショットよりも長期的なリレーションについても重きを置いている。そのため、ひとつひとつの仕事の結果については責任が曖昧になり、契約に結びつかなくても次へつながったから良しとする風土がある。これでは個人能力の研鑽にならない。
  
  
3) 小企業と大企業の比較
 小企業と大企業は、どちらにも善し悪しがある。そこで本節では、インサイトな視点で小企業と大企業の比較をしてみる。
 小企業は大企業に比べて、個人に依存する部分が大きい。大企業であれば分業できるものが小企業では出来ない。大企業であれば一人が大きな成果を上げても会社全体へのインパクトは小さいが小企業であればインパクトが大きい。自分がやりたいという意見を出した場合大企業では実現しにくいが小企業であればツーカーである。このように個人の意志というのが小企業においては反映されやすく、またその責任が大きくなる。そのため、やった結果について非常にシビアになる。
 結論としては、個人の能力を高めたいという欲求と仕事に埋もれるリスクをヘッジしたい欲求を天秤にかけて、納得のいく方を選択すれば良いと思う。小企業は個人への責任が大きい分結果に対して大きな責任がある。そのため、ひとつひとつの業務が真剣なものになるため、仕事に埋もれるリスクが大きい。同年代の人間を見ると、小企業に勤める人間ほどプライベートの時間が少ないため、婚期が遅くなっている。人生は仕事だけではない面もあるため、プライベートの時間を確保することも大いに意味がある。自分のやりたいことと人生のライフプランを天秤にかけてもっとも満足できる選択をするのが、もっとも理想的な就職ではないかと思われる。

 

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