「勉強」と「仕事」の大きな違い

大学受験までエリートコースを駆け上がり、優秀な大学を出た人が、仕事では成果を出せない、というケースを、仕事などを通じて非常によく見かけてきた。
確かに、既に決まったルールに沿った繰り返し(本人はそうは思っていない事が多いが)や、決まった内容を覚えなければ仕事が出来ないものについては、そういった人が活躍している事も結構ある。例えば、経理だったり、法務だったり、いわゆる管理部門系に多いが、ただ、事業部門を率いて成果をあげている人ではあまり見かけない。事業で活躍する人は、大抵、変わり者だったり、勉強以外の事に打ち込んだ、という話をする。
それはなぜか。
こうなってしまう理由は、「勉強」と「仕事」における前提が大きく異なるからである。
このヒントは、新卒採用時のチェックポイントにヒントがある。
中途採用と新卒採用の大きな違いは、実際に仕事をしたことがあるかないか、である。勿論、学生時代にビジネス経験があり、かつ、成果を挙げていれば、それに勝るものはない。
中途採用は、第二新卒を除き(第二新卒は新卒と採用基準が大きくは変わらないため)、徹底した職務経歴主義である。
つまり、どんな仕事でどんな成果を挙げてきたか、が第一であり、その上で、その人の資質や会社との相性をはかるのである。将来を買う、と言っても、今までの仕事ぶりを見られない事はない。
しかし、新卒採用は、それが出来ないため、様々な方法で、ビジネス適応力を見るのである。
例えば、アルバイトや部活・サークル、ボランティアなどの話などを聞かれたりするが、勉強の良し悪しだけであれば、そんな事は聞く必要がないはずである。
また、選考の際に、グループディスカッションなどがあるが、あれも、普通の受験勉強では行わない。
私は高校受験で書いた事があるが、論文など受験勉強には普通入っていない(そういう選抜方法を取る場合もある)。
では、なぜそんな事を経るのか。
それは、当然、ビジネスにおいては必要な力を見るからである。
ここまで来ると、何となくわかった方が多いかもしれないが、「勉強」と「仕事」の最も大きな違いとは、前者は基本的に一人でやる事が多いのに対し、後者は複数でやる事が普通である事だろう。
問題を解くのも一人、答え合わせをするのも一人、先生に教えて貰うとしても、結果的にやるのは一人である事が普通である。
しかし、実際のビジネスでは、一人で考える時間があるとしても、それを実行するには、多くの人の手を借りなければならないし、それが社内外の人に評価されなければ、意味がない。
そのためには、自分ではなく相手に理解して貰う、答え合わせするのではなく相手に高く評価して貰う、自分が動くだけでなく相手にも動いて貰う、という事が常に求められるのだ。
この差は非常に大きい。
なぜなら、一人でやる場合、自分が納得さえすれば良い。答えを見て、「ああこれが答えか」と思えば済むのである。
しかし、複数が関係する場合、他者という自分とは異なる基準を持つ人達に合わせた形で考えなくてはならず、それと同時に、自分の納得感も出していかなくてはならない。
制御できるか出来ないか、という区分で言えば、自分をコントロールするのも難しいが、他者を制御する事はそれ以上に非常に難しいのである。
しかも、他部署ならまだしも、顧客を巻き込んで、となると、立場や年代等、全く価値観の異なる可能性がある初対面の人達と一緒に、1つの成果(ここも認識が異なることがあるのだが…)に向けて走らなければならない。
その相手を選ぶということも、プライベートや学生時代までなら、かなりの範囲で可能だろう。嫌なら付き合わなければ良い、という事も比較的容易だ。仕事でもある程度は可能であるが、選択できる程度はそれに比べて圧倒的に低い。
仕事で成果を挙げられない人はこれをわからずに、「これだけ頑張ったんだから、それを理解しない相手が悪い」と言ってしまう。確かにそれについては、一理ある。
しかし、仕事の本質は、「相手を動かせるか否か」である。どれだけ自分が頑張ったか、正解に近づいたのか、ではないのだ。
これが、「勉強」と「仕事」の大きな差である。
最後にまとめてみよう。
「勉強」と「仕事」の差は、常に相手があるか、いないかの差である。
この差は、自分だけでどうにか出来るか、そうでないかの差と、ほぼ同義である。
そのため、それまではエリートコースを駆け上がっていた人でも、ビジネスにおいては成功しない場合があるのである。
採用時に企業は、ビジネスで成功するかどうかを見ている。勿論、地頭は良いに決まっているし、厳しい受験競争を勝ち抜いた人の方が可能性は高いだろう。しかし、根本的には、複数で物事を進めていける力、を見ていると考えて臨む事が、良い結果を導くポイントといえる。
仕事力を高める最良の方法は、実践を通したトレーニングである。出来れば、顧客がいる環境の方が良い(社内か社外かは別として)。自らの弱い部分とも真摯に向き合い、適切な教育のもとに経験と学習を欠かさない事で、自ら成果を導けるのも難しくなくなるだろう。
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◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates代表理事。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけ、その後ベンチャー企業に転進。経験を活かし、あらゆる改革・企画・管理業務を担い、業績拡大を支えつつ、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングに従事する。実践的なアプローチにより実績多数。
現在はIT系投資育成企業にて、子会社の事業企画や経営改革にあたる。
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