コストをかければサービスが良くなるのか? ~サービス向上で陥る罠と嘘~

「お金をかけ、対応を手厚くすれば、サービスレベルが上がり、顧客満足が上がる」
もっともなように聞こえるが、果たして本当にそうなのだろうか?
私は、事業企画と業務改革を中心に仕事をしてきて、今もある大手メーカーの本社管理部門改革を支援させていただいているが、最近、「人がいる程、仕事が増える」という言葉の方が、本質を突いているように感じることが多くなった。
例えば、「一人一人、相談に最後まで乗って、それを前提に対応する」と言われると、一見すると、一生懸命やってるのだなぁ、と思うかもしれないし、実際、担当者は一生懸命やっているのであるが、実のところ、大多数の顧客からは、高い評価を得られていないことが多い。
そこで、実際にそういう現場でよくよく話を聞いてみると、幾つかのことが共通している事がわかった。
・特定の人(管理職)が相談対応に時間を取られている
・全体の作業効率が悪い
・現場のメンバーは何やら忙しい
・仕事の大半は管理職で止まっている
他にも色々とあったのだが、ここまで来て何となくわかった。
それは、意思決定が可能な管理職の業務量のみ増していて、現場のメンバーは時々で変わる指示に振り回され、その後始末に追われていて、結果的に、普通の日常業務が雑になったり、とにかく短時間で済ませようとして、顧客から見て支障が出ている、という流れである。
こういうパターンの場合、現場を更に深く見てみると、
・マニュアルがない、あるいは、あっても不完全
・判断基準が曖昧で、その周りの問合せが多い
・多くのことが、最後は管理職に聞かないと判断がつかない
・一人一人対応を考えるため、対応する人によって対応内容が変わってくる
というような特徴があることが多い。
ようは、判断基準が明確化されていない上に、問い合わせしたら情状酌量の余地があるので、それが原因で問い合わせ数が非常に多くなり、しかも、現場担当者クラスでは判断し兼ねる事も多いので、問合せをした人は、「対応が遅い」「たらい回しにされる」と不満を持たれる上に、情状酌量された人がいると聞きつけた人は、「判断が人によって違うのは不公平だ」と常々不満に思う。
それを何とかしようと現場のメンバーも頑張るが、結局、自分で判断できないので、誤魔化し対応になり、更に、基準が曖昧なので標準化されておらず、対応するには幅広い知識や経験が求められるようになり、若手や派遣社員ではどうにもならず、少々の増員も焼け石に水。
日々、相談ごとに追われる結果となり、落ち着いて仕事も出来ないし、判断待ちの案件が多すぎて、幾つかは忘れさられてしまう有様。そうなれば、更に顧客満足は下がり、頑張っても報われない環境が作られていくのだ。
更に言えば、忙しいからと人を増やせば、アウトプットは良くならないのにコストは上がる。
「お金をかけ、対応を手厚くすれば、サービスレベルが上がり、顧客満足が上がる」
ここまで聞いて、この言葉は本当だと思えるだろうか?
嘘ではないかもしれないが、それは、基準が明確化され、ある程度、標準化が進んだ組織が、対応力を増して、顧客の待ち時間を減らす時に、はじめて言えることであって、曖昧な判断で柔軟に対応するという、一見すると良さそうに見えるところでは、この言葉は詭弁であると言えよう。
ベストなサービスとは、そもそも、「問い合わせや相談をする必要性を感じないサービス」であり、誰が見ても明確でシンプルであることだ。
例えば、あらゆる機能を満載しているが、全てを使いこなせない最近の携帯電話が、果たして優れたツールだと言えるだろうか。買い換えるまでに、一度も使わない機能や設定が如何に多いか。少なくとも私は、シンプル携帯が売れるのはとても納得がいく。
そういったシンプルさ・わかりやすさの追求を徹底せずに、「お金をかけないと/人を増やさないと出来ません」と安易な方に流れる事しかできない人は、そもそもサービスの何たるかを語る資格はないだろう。
コストをかける前に、自分がやれる事は本当にないのか。常々忘れないようにしたいものである。
より詳しく知りたい方はこちらへ(本稿は、個人ブログより転載)
⇒ 筆者メルマガ「FRIマーケティング&キャリア(旧就職参謀)」
⇒ 筆者個人ブログ「清水知輝の視点 ~ビジネス・キャリア徒然草~」
◆筆者紹介
FRI&Associatesの草創期メンバーで、現在NPO法人FRI&Associates 理事長。
外資系コンサルティングファームにて、事業戦略、業務改革、IT導入などを手がけたが、自身の仕事の関わり方に疑問を感じ、ベンチャー企業に転職。経験を活かし、経営・事業・商品・営業等の企画業務、ライン管理職、各種改革関連業務を担い、徹底した現場主義により業績拡大を支えつつ、多数の業界大手企業のマーケティングコンサルティングにも責任者として従事。業界特性を考慮した実践的なアプローチにより実績多数。その後、IT・ライフサイエンス領域の投資育成企業にて子会社の事業企画や経営改革、大手メーカーの機構改革などにあたった後、地元関西に戻り、計測機器メーカーにて、経営企画担当の上席執行役員として、各種改革業務および主要事業のマーケティング、事業開発などを推進する。
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