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仮説と勘を分けるもの

2009年2月12日 by 理事 高橋建人   

理事 高橋建人

最近「仮説思考」という言葉を良く耳にする。
この前、友人と食事をしてプライベートの悩み相談に乗っている際、非常に大胆な原因分析とアクションを伝えたら、「納得感はあるけど、それって仮説じゃなくて勘なんじゃないの?」という返答を受けた。
ここでは仮説と勘の差異を論じ、仮説思考力の上げ方に言及したい。


いきなりだが、皆さんは毎朝、新聞を読んでいるだろうか?
「仮説思考は自分で想像して考える力だから、新聞読んでも役に立たないのでは?」、「むしろ自分で考えなくなるのでマイナスでは?」と思った方は、仮説思考の捉え方が間違っている。仮説思考とは独りよがりのロジックを組み立てる事では、決してない。


仮説思考、という言葉が最も使われる職種はコンサルタントだろう(本来はあらゆる問題解決の場面で必要になるので、決してコンサルタントだけに必要な力ではないが)。コンサルティング会社がクライアントから仕事を受注する際に、我々はこういうアイデアを持っていますという提案をまず行う。その際にはまだ契約が結ばれていないので、クライアントの社内情報などにはほとんどアクセスせずにプレゼンテーションを作っていく事になる。まさしく仮説の状態で何千万円という仕事を取ってくるのだ。


しかし当然だが提案の根拠が「勘」ではクライアントを納得させる事はできない。相手が納得するに足る「論理」を伴って提案をする必要がある。その「論理」の質を決定的に左右するのが、「知見」と呼ばれるものだ。


例えば小売業界のA社に提案をする際に、その業界のB社でコンサルティングをした経験があれば、A社の情報を見ずとも、会社の問題構造と施策をある程度は推察することができる。このように応用可能になるまで昇華させた知識が「知見」である。規模の大きなコンサルティング会社には各方面の知見者がいる事が強みとなっているし、逆に業界を絞った専門的なコンサルティング企業も存在する。


知見とはこのように業界に紐付いたり、スキル(マーケティング、ファイナンスなど)に紐付いたりするが、いずれにせよそれを応用するからこそ、スピーディーに精度の高い(論理の通った)仮説を構築することができるのだ。頑張って論理の質を上げようと本やセミナーで勉強する人が多いが、自分の経験では知見がないあるいは薄い事に、より強い問題意識を感じている。


「仮説」と「山勘」の違いがそろそろ掴めてきただろうか。
全く論理のない仮説がいわゆる「山勘」であり、一見ぱっと出てきた勘のように見えても、その裏では論理が紐付いているものが「仮説」であり、さらにその論理が単なるフレークワークを使った机上の空論ではなく、知見に支えられているのが「精度の高い仮説」なのだ。


ではどうやったら知見が得られるのか。方法は1つしかない。

1.インプット :良質な情報(あえて情報という表現を使う)を仕入れる

2.アウトプット:その情報が持つ意味合いを考え、情報を知見へと高める

この1・2をひたすら繰り返す事だ。

CNETというサイトをご存知だろうか?IT系のニュースサイトとしては世界最大のサイトである。私はITが好きなので、日々このサイトをチェックするのだが、「アメリカでこういう技術を持ったベンチャーが注目されている」という記事があったとする。そこでふんふん、で終わってはただの情報通だ。


「ではその技術を日本に展開したらこういうビジネスが生まれるのでは?」
「そういえばこの前読んだ携帯コンテンツビジネスの内容にこの技術を組み合わせると、ブレークスルーが生まれるのでは?」と他の情報を組み合わせて、自分なり仕入れた情報の意味付けをしておく。このような日々のストックが仮説の質を分けるのだ。


こればかりは時間が掛かる。とはいえ毎日の電車の中で目についたつり革広告から、その文書が事実だとしたらどういうインパクトが世の中にあるか、を想像するだけでも訓練になる。単にワイドショーのネタを拾ってお昼休みにしゃべって終わるのとは大違いだ。
冒頭の「新聞を読んでいるか」というのは、まさに、このインプット⇒アウトプットの流れをスタートさせていますか?という問いを皆さんに投げかけたのだ。


そして知見のストックの量は、学生や若手社会人の間ではわずかな差しか出ないが、その後飛躍的に差がついていく。その理由が分かるだろうか?


会社に入りたての新人に対しては、上司もまだ力を測っている段階なので、まず与えられる仕事は誰でも同じようなものである。しかし多少なりとも知見のストックがある事で、似たような仕事の中でも成果に差を付けることができる。最初の内はわずかな差だろうが、少しでもリードが見られる人・成長が期待できる人材に、少しずつ良い仕事が振られていき、その人はより大きな成長機会を手にしていく。このループが軌道に乗ると、いつまでも同じような仕事をしている人に比べて能力や経験値の幅が圧倒的に広がっていき、気が付いたら知見の量に大きな差がつくのだ。
ぜひ今すぐにでもストックを始めて欲しい。


最後にコンサルティング業界を志望して就職活動や転職活動を行っている皆さんに、特に注意を促したい。これは私の短いコンサルティング経験でも見られた誤解だが、「コンサルタントになれば知見が得られる」訳では決してない。単に資料を見て終わるだけであれば、巷に売っているロジカルシンキング本に毛が生えた程度の情報を頭に仕入れて終わるだけだ。そのレベルで情報を知見だと勘違いしてしまうコンサルタントが多いので、むしろマイナスかもしれない。


自分なりに興味を持って情報を仕入れ、意味付けを行って頭にストックする事こそが知見の本質である。そして知見こそが質の高い仮説を作る、最大のポイントなのだ。

◆筆者紹介
FRI&Associates学生領域担当理事。
東京大学工学部システム創成学科卒業(2007年)
大学生時代は映像制作の会社を立ち上げ、Webサイトへの動画コンテンツ提供を行う。卒業後、アクセンチュア株式会社にて、コスト削減プロジェクトの立ち上げメンバーとして活躍した後、現在は不動産ベンチャーに参画し、取締役としての社内業務並びに管理・運営事業の責任者を務める。
FRIでは大学3年生よりスタッフを務め、FRI CampのPMを務めるなど経験多数。

 

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