仕事のスケールをあげる

新人の仕事のやり方の効率が悪いのは、マルチタスクができないからだ。簡単に言えば、与えられたタスクを一つだけこなすのが精一杯という状態である。
非効率な仕事のやりかたの特徴は、工程をシーケンシャル(直列)に並べ、前工程から後工程へ一つづつこなしてゆくというやり方であるが、ラーメン屋さんでもこんな仕事のやりかたをしている人はいない。手際の良い主婦でも洗濯をしながら料理をするなど朝飯前で、おそらくホワイトカラーだけではないかと思われる。
マルチタスクというのは、工程をパラレル(同時並行)でこなすスキルだが、これができるようになるためには、仕事の真の目的の理解と全体像(各工程の依存性、つながり)が頭に入っていないとダメだ。結局はどうなるの、なんのためにやっているの、ということがわかっていれば、必要でありかつ十分なミニマムタスクに分解し、また、そのミニマムタスクはどの程度の時間をかけて、どの順番でやれば全体が最適化されるかということがわかるからだ。
さらに、全体感の見える人は、特有の頭の使い方をする。それぞれのタスクに期限をつけ、その期限から逆算して必要所要量を計算するということである。これに対して、直列にしか仕事ができない人はタスクに期限をつけず、「善処します」とか「着実に一歩一歩進めます」とか抽象論で語り、直近のタスクを積み上げてゆく。だから、突然、「これをやれ」と言われたら、期限のないタスクはすべて後ろにいってしまい、いつまでたってもタスクは完成しない。また、必要条件は語れるが十分条件をみないため、仕事は自己増殖的に増えてゆく。
タスクに期限をつけられる人は、突然「これをやれ」といわれても、「ええ、今週は20%が別のタスクで埋まっていますので、80%の時間を割くことができます。だから、着地は2週間後になります」と答えられる。また、3週間後でよければ、工数を60%に押さえることができるので、さらに20%の時間をつかって別のタスクもいれられる。だらだら仕事をする人は、60%で終わらせられる仕事も無駄なことをやって時間を埋め80%を使ってしまう。だから、何度聞いても、「私は忙しい」というのだ。
仕事は必ず目的がある。そして、必要なタスクは、その目的を必要かつ十分な工程に分解したものであり、この設計ができれば所要量計算ができるはずだ。また、所要量計算ができれば、一日24時間のどの部分を使えるかを計算することができる。つまり、マルチタスクができるのである。
新人が経験者にスキルアップする瞬間が、このマルチタスク処理スキルの向上である。私自身、入社して3年目まではマルチタスクができず、上司からいつも怒られていた。
一般的に、新人の教育方法として、マルチタスクを行う前に、まず、しっかりとシングルタスクをやらせてみようという考え方がある。若手も腕試しにマルチタスクを経験し、すったもんだして「すいません。やっぱり自分には無理でした。当分、シングルタスクに専念させてください」とアピールする人もいるが、これは間違いである。
私も、同じアピールを上司に行った。しかし、上司のやりかたは逆だった。彼は、「おまえのように要領の悪いやつは、シングルタスクじゃなくてマルチタスクの嵐の中で苦しむ必要がある」と言って、私に5倍、10倍の仕事を無理矢理やらせたのだ。しかし、これがよかった。5倍、10倍の仕事をしていると、ある種の「割り切り」が見えてくる。いや、正確に言えば、「割り切り」ではなく、「無駄をやめる」という意識といっても良い。この地獄の特訓を経た後で、ある程度マルチタスクが処理できるようになった上で過去を振り返ると、自分のやっていた仕事の80%は無駄なことではなかったのかと思えるほどだった。それほど、最終アウトプットと関係ない仕事をやっているのが実態なのだ。
考えてみれば、仕事に本当にシングルタスクなど存在するのか、という疑問もある。たとえ、仕事そのものがシングルタスクであっても、その中にある詳細な工程は、すべてパラレルに動いているはずだ。シングルタスクと思っていても、段取りが悪かったり優先順位が逆だったり、ようは要領が悪いのはマルチだろうが、シングルだろうが同じなのである。そう考えれば、私の鬼上司の荒療治も合理性がある。つまり、物理的に不可能なレベルでのマルチタスクをこなすことで、意識的に全体感をつかもうとし、すべてフィニッシュさせるために無駄な部分をそぐということを意識的にやりはじめる。。。
こんなところから、仕事のスケールはあがってゆくのかもしれない
上記は、私のメールマガジン FRI Magazineからの抜粋です。もっと読みたい人はこちらまで
http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html
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