コミュニケーション力のインパクト

先日、私が住んでいる町内の話し合いに出席した。なんでも、町内の某施設で追加資金が必要になったということで、町内の人間が集められ、その説明会が開催されたので。私も、開会招集書を見て思わず「なんだこりゃ、きいていないぞ」と憤った。
会合は最初から殺気立っていた。私の最初の感想通り、「唐突感がある」、「だまされた」、「説明が不足している」などみんなから非難がごうごうだった。ある人が「話が噛み合っていないぞ」と指摘する。しかし、私からいわせれば、その人も話が噛み合っていない。あちこちに話が飛んで収拾が付かない。こんな状況なのだ。参加者の99%が、頭の中に全体感というかテーマのフレームワークが存在しないまま喋っているのだ。
しかし、よ〜く話を聞いてみると、どうも追加資金の徴収ではなく、徴収形態の変更、すなわち、総額は変わらないが、資金徴収の仕方を変更してみてはどうか、という話なのである。私が、「今している話は、徴収資金を増額するという話ではなく、徴収の方法を変えてみよう、という話ですよね」とホワイトボードに簡単な絵を使って確認したところ、会議の主催者は「そうそう、それがいいたかったんですよ」と叫び、その場で参加者全員が「.... なんだ、そういうことか」と沈黙した。
その間一時間、一体その時間はなんだったのだろうと、激しい徒労感を感じずにはいられなかった。なぜ、みんなこんなにコミュニケーション能力(伝える力)が弱いんだろうと感じる。簡単に言えば良いところを、下手な表現で伝える。また、こうした、ちょっとした誤解、ちょっとしたコミュニケーションの齟齬がハウリングのように増幅し、感情の対立を生みだす。こうしたメカニズムで話が全く伝わっていないということは仕事をしていて実に良くある。
その会議でも、「値上げをする」などという言葉を使わず、「徴収方法を変える」といえばよいのに、そういう(分かりやすくて単純な)言葉が使えない。また、人に説明をするときに、いきなり本題からはいるため、その背景、つまり、なぜ、そういう話になったのかというストーリーを伝えない、など、ようはプレゼンテーションの基本がなっていないわけだ。
もし、私がホワイトボードでまとめなかったら、あの会議はどうなっていたのか。なにか強制的にお金の追加徴収を突きつけられ、無理矢理納得させられた感じがし、また、その禍根がずっと残るという結果になっていたに違いない。汗を流して説明した人には悪いが、「語る言葉を持っていない」ということは、かくも誤解を引き起こしコミュニケーションを複雑にさせるのかとあらためて感じた。と同時に、「言葉を知らない」ということは、かくも恐ろしいものかと、あらためて身震いしたものだ。
私は、FRIの内部トレーニングでもプレゼンテーションの強化を徹底して行っているが、このような訓練を行っていない人は、総じて「伝える力」が弱いと思う。この問題がビジネスに与えるインパクトは計り知れないだろう。プレゼンテーションの技術といえば、なにかうさんくさい感じがし、「ようは口だけだろ」などとうそぶく人もいるが、不正確なコミュニケーションが引き起こす弊害は、組織を破壊することもあるということをよく覚えておくべきだろう。
* この文章は河合拓の個人ブログ 「事業再生コンサルタント河合拓の視点」の過去のものから抜粋しています
もっと読みたい方は→FRI Magazine: http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html
【著者】
河合 拓 (かわい たく)
経営コンサルタント 広く流通、小売業界に対して事業の立て直し、組織改革などを行っている。得意領域はマーケティング、事業戦略、生産性向上、営業改革、ナレッジマネジメント導入など。手がけた企業は国内外の大手上場企業。製造業、IT 企業、総合商社、流通企業など。赤字の上場企業を半年で黒字化させるなど、過去5社の立て直しを行いすべて成功裏に終わっている。
NPO法人FRIの設立者(現在はシニアアドバイザー) 自民党への政策提言、私立大学と大手商社と産学協同ブランド開発プロジェクト、大学生向け就職支援、中小企業向けコンサルティングなどを行っている。
ベンチャー事業会社経営顧問(社長付け経営戦略アドバイザー)グローバルに展開するアパレル企画会社の社長直属の戦略アドバイザーを務め、アジアに展開するブランド戦略に関する立案を支援している。また、公開企業のコンサルティング事業部、部長代行も勤める。
(講演、執筆)
繊研新聞 (全国紙)
「ザ・ターンアラウンド」アパレル業界の事業再生 2007年 9月より連載予定
「間違いらだけのQR」「ファッション業界は08年に起きる地殻変動に備えよ」連載
チェーンストアエイジ 「キャッシュフロー経営」
大手都銀向けビジネス雑誌寄稿
大手製造業向けビジネスマガジン寄稿
政策学校一新塾 (大前研一設立) 講師 経営戦略アドバイザ
「ロジカルシンキングと会議の設定」
「仮説構築と情報収集、分析の技術」
「プロジェクトマネジメント」
「モチベーションマネジメント」
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