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アンストラクチャーなテーマに軸をはる

2007年7月26日 by 創設者 河合 拓   

創設者 河合 拓

アンストラクチャーなテーマに軸をはる時、私は、まず、「動かしがたい前提」から考えることにしている。私が、なぜ、それを思いついたかというと、いわゆる「新モデル」を作ろうとしたとき、面白い傾向を発見したからだ。「頭のいい人」ほど「突拍子もないこと」を言い始めるという傾向だ。我々の場合は「こいつ口ばかりで使えない」と思われたら、一発で首になる。だから、なんとか、この「突拍子もない発想」を抑えられないか、と考えた。

先週、後輩と飲みに行った。私が、営業なんて外でさぼってばかりいるし、会議だって、ほとんど無目的な話題を延々としゃべっているだけだよ、商社の子会社なんて、ほとんどが出向先で、親会社から在庫をもらってキャッチボールしているだけだ、と言ったら、後輩が驚いて「それはなんとかしないといけませんね」と。そこで、私は、「その気持ちは大事だけど、一つ注意してもらいたい。君の頭の中は、おそらく例外とノーマルケースの割合が逆転していないか?実業の世界に疎いと、そういう発想になるんだよ。そういうところ(世間知らず)で、クライアントは信頼を一気に失うぞ」と言った。


一方、実業上がりの人は、「小さくまとまる」が、これもまずい。「なんだよ。前と全然変わっていないじゃないか」と社長からまた怒られる。 この「突拍子もない」と「小さく」というのは、きわめて右脳的な評価だが、とにかく、両方の脳みそを使っている私には、「これはまずい」と「見え」てしまうのだ。


そこで、洞察を深め、自由に発想をする前に、「動かしがたい前提」を列挙して、スタートポイントをフィックスしてしまおう、と考えた。言い方を変えると、ここで、「落としどころ」を握るのだ。その「握った世界」から、ゼロベースで発想を深めれば、いいものができる(創れる)ということを最近発見したのだ。


その裏には二つの前提がありる。まず、人は「押し付けられたアイデア」では動かないということ。いくらアイデアが素晴らしく理にかなっていても、実行する人が腹落ちしないものは、決して実行されないという点だ。だから、その部分をかならず前提とする。もう一つは、とくに上場企業クラスになると、実は、「基本的な部分」での「メカニズムの壊れ」が大きな変革のトリガになっていることが多く、「当たり前のことを当たり前にすること」を徹底すれば、結構会社って立ち直るもんだ、という経験則がある。こういう部分が見えていると「割り切り」と「分析」で話を進めることができるのだ。


これは、ロジックの世界なんかじゃない。私は部下には「理屈で考えよ」と言い、クライアントには「理屈で考えるな」と言っている。以前、理屈の得意なチームに市場分析の仕事を任せていたら、膨大な作業資料が山のように増え始め、誰も自分が何をやっているのか分からなくなったという経験がある。むしろ、私が作り上げたシナリオを見て、「あなた達が長年やってきた経験からフィット感があるか」ということを徹底的に聞き、相手の目が「パッと開く瞬間」を確認しなければ、検討をもう一度振出しに戻すことにしている。


しかし、同時に「左脳で考えよ」とも言うのだ。これは、ともすれば、実業経験が多い人ほど、そして、成功体験が多い人ほど、オプションだ、評価だ、などというと、「そんな面倒くさいことやる必要ないでしょ!」と言ってショートカットをはじめ、大事な始点がボロボロ抜け落ちるからだ。


ここで面白いことが発生する。理屈っぽい人(演繹型の人)と経験派の人(帰納型の人)が喧嘩を始め、議論が前に進まない。とくに、理屈っぽい人は言葉尻がシャープで、相手の「感情」を無視して、どんどん相手を追い込む。消去法で相手を追い込むもんだから、周りから嫌われる。経験派の人は、結論が早いけど、根拠が希薄だから、宴会では人気者になるんだけど、仕事では信頼を失う、という感じになり、プロジェクトは破綻。。。これが典型的な失敗のケースだ。


さて、「不確実性」に関しては、右脳に期待しよう。私は頭が悪いので、一カ月先のガントチャートはタスクレベルまで引けるのだが、3カ月先までは分からない。特にテーマがアンストラクチャーになればなるほど、その傾向がでてくる。大きなビッグピクチャーは描くのだが、二ヶ月目以降はすべきことのみ書いておく。何をすべきかは、一ヶ月目で出てきたアウトプットの結果により埋めてゆくという仕事のやり方をやっている。何ヶ月か先のスケジュールを詳細なガントに落とす人がいるが、いつも尊敬していると同時に、本当か?と疑ってしまう


しかし、実際にプロジェクトが始まれば、いろんな情報が見えてくる。感覚的に言えば、「おそらくそうだろうな」と思っていたことが90%をしめ、意外だったことは10%ぐらい。一方、トップマネジメントに近いほど、この割合が逆転する。上と下の意識のズレだ。そういう部分のすり合わせをしながら作業をしていると、ある瞬間「パッと」ひらめくのだ。そこでで、すべて終息。。


私は、こういうスタイルでアイデアを練っているが、ときに「早すぎてついていけない」と人に言われてしまう。「走りながら考える」の中身を解説したつもりだが、次のチャレンジは、こうしたやり方をいかにして形式知化して、マニュアル化するか、だと思っている。


もっと読みたい方は→FRI Magazine: http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html

【著者】
河合 拓 (かわい たく)
経営コンサルタント 広く流通、小売業界に対して事業の立て直し、組織改革などを行っている。得意領域はマーケティング、事業戦略、生産性向上、営業改革、ナレッジマネジメント導入など。手がけた企業は国内外の大手上場企業。製造業、IT 企業、総合商社、流通企業など。赤字の上場企業を半年で黒字化させるなど、過去5社の立て直しを行いすべて成功裏に終わっている。
NPO法人FRIの設立者(現在はシニアアドバイザー) 自民党への政策提言、私立大学と大手商社と産学協同ブランド開発プロジェクト、大学生向け就職支援、中小企業向けコンサルティングなどを行っている。

ベンチャー事業会社経営顧問(社長付け経営戦略アドバイザー)グローバルに展開するアパレル企画会社の社長直属の戦略アドバイザーを務め、アジアに展開するブランド戦略に関する立案を支援している。また、公開企業のコンサルティング事業部、部長代行も勤める。

(講演、執筆)
繊研新聞 (全国紙)
「間違いらだけのQR」「ファッション業界は08年に起きる地殻変動に備えよ」連載
チェーンストアエイジ 「キャッシュフロー経営」
大手都銀向けビジネス雑誌寄稿
大手製造業向けビジネスマガジン寄稿
政策学校一新塾 (大前研一設立) 講師
「ロジカルシンキングと会議の設定」
「仮説構築と情報収集、分析の技術」
「プロジェクトマネジメント」
「モチベーションマネジメント」

 

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この記事へのコメント (2件)

すごく納得しました。いろんなテーマが盛りだくさんですね。

>相手の目が「パッと開く瞬間」を確認しなければ、検討をもう一度振出しに戻すことにしている。

ここ、非常に重要な示唆が含まれていると思います。プロジェクトの大小に関係なく、これが出来るかどうかで仕事の成否が決まってくるんだなと気づきました。

こんにちは。TOC (制約理論)というのは、戦略思考を比較的合理的にパターン化させることに成功したモデルだと思います。とくに、物事を考えていると、いつも、「ああ、これはスループットという考え方だ」と気づくことが多いです。なかなか一発で把握しにくい概念ですが、何度も思慮を重ねることでその本質が見えてきます。

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