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戦略的時間管理 Time Management

2007年7月21日 by 創設者 河合 拓   

創設者 河合 拓

「時間がない」という言葉をよく聞く。先週は毎日残業だった、今週は土日も出社した、私のまわりのサラリーマンは、こんなことを自慢げにしゃべっている人が多い。しかし、「では、その結果何ができたのですか」と聞くと、「いや、結果は..」とお茶を濁すのが典型的なパターンだ。私は、こういう意識の裏には「工業化社会時代の発想」 が根強く残っているのではないか、と思っている。つまり、朝会社に出社して、タイムカードを押して夜に家に帰る。今日は、3時間残業したから、10,000円残業代が儲かった、という発想だ。しかし、当たり前だが、かけた時間と、出てくるアウトプットの品質には何の関係もない。特に、昨今の仕事は、同じことをひたすら繰り返すオペレーショナルな仕事ではなく、創造性、洞察力、分析力が問われるクリエイティブな仕事が増えてきている。実際、オペレーショナルな仕事はどんどんITが取って代わり、それでも人間がやらなければならない仕事は、中国などにアウトソースされはじめている。私も都内で夜に居酒屋に行くのだが、店員の5割ぐらいは外国人だ。

 このような時代に、「時間をかけました」などという言葉は何の価値も持たなくなってきている。むしろ、出てきたアウトプットの価値が高ければ、かけた工数が1秒でも評価される時代がそこまで来ているのだ。


 私は、ビジネスマンの動向調査というものをやる時がある。そこから分かることは、多くのケースにおいて、何かしら成果を出している時間の、全体に占める割合というのはほとんどないということだ。おそらく、全体の時間の8割から9割は、段取りが悪いためにリカバリをしている、手順が悪いために関係のないことを莫大な時間をかけてやっている、とにかく不安でぶらぶら資料を読んだり、webを眺めている、無意味な会議を延々と続けている、という類のことが圧倒的な時間を占めているのだ。ゴールドラット博士のThe Goalによれば、工場の生産リードタイムの8割がアイドルタイムであるということだが、それはビジネスマンの仕事にも言えるというわけだ。


【戦略的な作業の進め方】
 例えば、ある重要な報告書を提出しなければならないとしよう。その報告は社運をかけたものであるため、あなたは不安になり、とにかく膨大な調査をしはじめる。机の上には30cmぐらいの書類の山で沢山になる。それぞれの調査は、それぞれなかなか良いことを言っているのだが、どうもまとまらない。何週間もかけて、いろいろな情報はインプットされるのだが、その倍ぐらいのスピードで頭から出て行く。あわてて、ポストイットで全体を網羅的にまとめると、それなりのストーリーができそうなので、3ポイントぐらいの(細かい)びっしりと字が敷き詰められた報告書を作成し、役員に提出するが、どうも反応が悪い。あなたは、こんな経験も持ったことがないだろうか。ハッキリ言って、こうやってできた報告書というものは、何が言いたいか分からないのだ。


 そんなとき、あなたは、自分を評価してくれない役員に対して、「これだけの時間をかけて、これだけの資料を作ったのに」 と、怒りに近い感情を抱くことになるが、その時点で、あなたは「オペレーション思考」に陥っていると言える。先にも述べたが、成果を出すためにかけた時間と、成果そのものの品質には何の関係もない。成果がクリエイティブであればあるほどその傾向は強くなる。しかし、人はオペレーションの時間が長くなればなるほど、そして、オペレーションが複雑化すればするほど、時間=成果という考えに縛られることになる。そうした罠を「オペレーション思考」というのだ。


 それに対して、戦略的な作業の進め方、というのは、常にアウトプットを先にイメージして作業段取りを決めていくやり方だ。


 こういうこともあった。私が、ある仕事を部下に頼んだときだった。彼は、納期ぎりぎりになって「やっていません」 と答えたのだ。私は、「どうするんだ」と問いただしたところ、「明日、客先まで走ります!」とひたすら繰り返すのだ。私はあきれてものが言えなくなった。「とにかく走る」とか「とにかく謝る」というのは、生活の知恵であるかもしれないが、本質的な解決案ではないのである。


 この事例を見て、「本当にそんなバカなことが起きているのか」と思う人がいたら、あなたは大きな勘違いをしている。現実の世界とはこんなものなのである。また、あなた自身も、気づかずにこのようなことを繰り返しているのではないか、と私は思っている。タイムマネジメントというと、工程表をつくったり、管理表を作ったりすることが大事だと考えている人が多いが、実は、最も大事なことは、作業の目的を、作業を始める前に確認する、という極めてシンプルなことなのだ。


【積み上げ式の思考の最後に答えはない】
 私はよく「オペレーション思考」(無目的な作業ばかりする癖)を持った人に「積み上げ式の思考の最後に答えはない」といつも言っている。「積み上げ式の思考」というのは、とにかく膨大な調査や、大量の時間を使っていれば、いつか答えが見つけ出せるだろう、という期待からくる思考である。人というものは、責任を与えられれば与えられるほど、責任感からの重圧に耐えられなくなり、作業に没頭するという癖がある。作業をしていれば、なにか安心し、「いつか成果が出せるだろう」という根拠のない安心感に駆られるのだ。嘘だと思うなら、明日会社に行って、隣の人の顔をじっと見てほしい。あなたの周りにいる人の何人が、作業の目的をしっかり認識して仕事をしているだろうか。そして、時間が過ぎ、夜、銀座で一杯やりながら、「今日もがんばったよな」と同僚と語れば給与が保証される、と考えてしまうのである。


【結論】
 結論を言えば、時間がかかる、というのは、「考えていない」というのと等しいということだ。私はこの結論に極めて信念に近い自信を持っている。


 今回は、あえて強気に言わせてもらうと、「時間がない」というのは、これからは一切通用しない時代がくる。最近、私の周りで、このような声が極端に多く聞こえてくるので、今回、書かせてもらった。


もっと読みたい方は→FRI Magazine: http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html

【著者】
河合 拓 (かわい たく)
経営コンサルタント 広く流通、小売業界に対して事業の立て直し、組織改革などを行っている。得意領域はマーケティング、事業戦略、生産性向上、営業改革、ナレッジマネジメント導入など。手がけた企業は国内外の大手上場企業。製造業、IT 企業、総合商社、流通企業など。赤字の上場企業を半年で黒字化させるなど、過去5社の立て直しを行いすべて成功裏に終わっている。
NPO法人FRIの設立者(現在はシニアアドバイザー) 自民党への政策提言、私立大学と大手商社と産学協同ブランド開発プロジェクト、大学生向け就職支援、中小企業向けコンサルティングなどを行っている。
ベンチャー事業会社経営顧問(社長付け経営戦略アドバイザー)グローバルに展開するアパレル企画会社の社長直属の戦略アドバイザーを務め、アジアに展開するブランド戦略に関する立案を支援している。また、公開企業のコンサルティング事業部、部長代行も勤める。
(講演、執筆)
繊研新聞 (全国紙)
「間違いらだけのQR」「ファッション業界は08年に起きる地殻変動に備えよ」連載
チェーンストアエイジ 「キャッシュフロー経営」
大手都銀向けビジネス雑誌寄稿
大手製造業向けビジネスマガジン寄稿
政策学校一新塾 (大前研一設立) 講師
「ロジカルシンキングと会議の設定」
「仮説構築と情報収集、分析の技術」
「プロジェクトマネジメント」
「モチベーションマネジメント」

 

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